二百九十五話 怒りを活かせるのか?
試合が始まってから数分後……アラッドの予想通り、ドラングが他校の上級生を打ち負かし、無事に駒を進めた。
「勝者、ドラング・パーシブル!!!!」
審判がそう宣言すると、アラッドの時と同様に大きな歓声が沸き上がる。
「ふふ、ほらな」
「……アラッド、ちょっと焦ってた」
ヴェーラに図星を突かれ、ビクッと体が震えるアラッド。
それでも、ドラングはアラッドの宣言通り、上級生を打ち破った。
「否定出来ないな。とはいえ、お前たちから見ても、ドラングが成長したように思えるんじゃないか?」
アラッドの問いに、ヴェーラたち全員が同じ感想を持っていた。
「そうだね……一対一の勝負だと、ちょっと分が悪いかな」
「そうか? ベルならテクニックで上回ると思うけどな。でも、確かに強くなった気がするな」
「そうだね……強く、なってる」
ベルたち男性陣は、素直にドラングの成長を認めた。
三人ともドラングの弱点が薄くなったように感じ、一対一の勝負では勝率が下がったかもしれない……と、少なからず感じた。
「そうですね。以前よりもこう……荒々しさが薄くなり、反応速度が上がったように感じます」
「ようやくアラッドが自分よりも上だと認識し、ここ最近で追い込んできた……といったところかしら?」
「うむ、今のドラングなら楽しい試合が出来るかもしれない」
「……ちょっと、強くなってる」
女性陣も男性陣とドラングに対する評価は同じであり、以前と比べて実力が上がっていると、素直に認めた。
ドラングの勝利を宣言していたアラッドとしては、ドラングが対戦相手を打ち破ってくれた事には素直に感謝した。
決して楽な戦いではなかったが、マリアの言う通り荒々しさが薄くなったおかげで隙が薄くなり、反応速度も向上している。
ただ……自分と戦う時もこれなのか? という疑問が頭に残った。
(個人的には、今までのドラングらしくない戦い方……達人の域を目指す戦い方、か?)
数度、フールと模擬戦しており、家に仕えるハイレベルな騎士たちとも手合わせしているので、達人の戦い方というのがぼんやりと理解している。
(反応速度が速くなったというよりも……予測できるようになった? 加えて、判断に迷いがなくなったと言えば良いのか?)
ミスをすれば、手痛いダメージを食らってしまう。
ドラングはまだまだ戦い方が完璧ではない事もあり、数回少々手痛い斬り傷を負ってしまった。
(けど、ミスってしまった時の保険を掛けてある……まだまだ完成の域には程遠いと感じるけど、それでも見様見真似の動きでもない)
まさかドラングがあんな戦い方をするとは。
そんな驚きがありつつも……やはり、その戦い方で自分に挑むのか? と思ってしまう。
ドラングが自分に強い敵意を抱いていることは自覚している。
だが、ドラングがリングで行った戦い方は、その敵意を活かせる内容ではなかった。
(ん~~~……誰かがドラングに、先を見据えた戦い方を教えたか? 実戦に勝る経験はないとは言うが……まっ、勝ち上がってくるならなんでも良いか)
結局、どんな方向であってもドラングが成長していることに変わりはない。
そう思うと、アラッドはとりあえずドラングとリングの上で会うのが更に楽しみが増した。
因みに、貴族専用の観客席でアラッドとドラングの戦いぶりを観ていたフールは、審判が勝利宣言をした瞬間に……渾身のガッツポーズを決めていた。
普通なら、我に返って恥ずかしくなるかもしれないが、フールには自分の行動を一切恥じることはなかった。
そして午前中の間にタイマントーナメントの一回戦が全て終了し、休憩時間を挟む。
それが終わると……今度はタッグ戦のトーナメントが始まる。
ついに自分たちの出番が回ってきたベルたちの顔に、薄っすらと緊張が現れ始めた。




