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二百二十九話 無意識に手に入れ、発動

「はぁ、はぁ、はぁ……ちょっと休むか」


あのパーティーから数年が経ち……アラッドは十二歳となった。

身長は百六十を超え、同年代の中ではそれなりに大きい。

これからまだまだ大きくなるであろうが、だからといって鍛錬をサボる様子は一切ない。


今日も今日とて厳しい鍛錬を積み重ねていた。


「お疲れ様です、アラッド様」


「おう、ありがとな。シーリア……ところで、エリナは子供たちを相手に何を話してるんだ?」


アラッドは八歳からの四年間を使い……広い広い庭の一部をフールに土地代を払ってもらい、そこに孤児院を移した。

それだけではなく、街中で親がおらず子供たちだけで生きているグループや、親の暴力などから逃げた者など……そういった者たちを全て孤児院に受け入れた。


その度に孤児院はどんどん増築され……今では敷地内にはもう一つ屋敷がある状態。

ただ、アラッドも間抜けではないので相手の嘘や正体を見抜く、超高ランクマジックアイテムのメガネを手に入れ、受け入れる前に全員を視ている。


そして奴隷を扱っている店から子供たちの世話係、子供たちに料理や裁縫……孤児院を出てから職に就く為に技術を教えられる者たち。

加えて、万が一侵入者が来ても退治できる戦闘者も購入。


そのお陰でアラッドはそれなりに懐に貯まっていた大金を放出することに成功した。


「えっと……多分、アラッド様の武勇伝をお話ししているかと」


「え、マジ?」


「マジです。先程チラッと耳にしましたが、今はアラッド様がトロルの亜種に立ち向かった時の話をされています」


「あぁ~~~、あの時の戦いか」


アラッドが十歳の時、いつも通り兵士二人と魔法使い一人。

それとエリナとガルシアと一緒に森の中を探索し、モンスターを狩っていた。


そこでアラッドたちは運悪く、トロルの亜種に遭遇してしまった。

トロルはランクBらのモンスターであり、亜種であってもそのランクは変動しない。


ただ……一瞬でアラッドを攻撃から庇ったクロを瀕死に追い込んだ。

魔眼で視た結果、ランクBであることに変わりはないが、それでも当時のアラッドからすればAランクモンスター並みの力を持っている様に感じた。


当然、そんなモンスターと遭遇してしまっては、ガルシアとエリナの二人はいつもの様に何かあれば、直ぐ手を出せるように……なんて悠長な考えを取っ払い、前に出る。


しかし、それを主人であるアラッドが止めた。


「手を出すな。俺一人でやる」


当たり前だが、主人の身を案じる奴隷として、そんなことは許容出来ない。

護衛である兵士や魔法使いたちも同じ考えだった。


だが、ガルシアは直ぐにアラッドの異変に気付いた。

今まで感じたことがない、尋常ではない程の迸る怒りに……ではなく、雰囲気そのものがアラッドのものではないと、一瞬感じてしまった。


「絶対に殺す」


その一言だけ残し、エリナの制止を振り切って突っ込んだ。


しかしエリナも直ぐに今までのアラッドとは何かが違うと感じ取った。


そう……アラッドはクロが半殺しにされたことがトリガーとなり、狂化のスキルを手に入れ……無意識に発動していた。

使えば通常の強化系スキルよりも高い強化効果を発揮し、スキルレベルが上がれば次の段階が開かれる。


ただ、当然リスクもある。

一定時間を越えれば反動で体が動きづらく……最悪の場合、動けなくなる可能性がある。

そしてメンタルが完全に崩れてしまうと、敵味方関係無しに攻撃を行い始める。


「ッ!!??」


自分一人で、全員を殲滅できる。

そう思っていたトロル亜種はその油断を突かれ、一撃……渾身の鉄拳を食らってしまった。


そして直ぐに認識を撤回し、目の前の子供一人を殺すことだけに意識を集中させた。


後ろの連中が何をしてこようが関係無い。

目の前の……いきなり雰囲気がガラっと変わった子供を潰すことだけに力を全て費やす。


だが、その思いは対峙するアラッドも同じだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] クロはまだ進化してないのかな? [一言] 一気に時間とんだな、孤児院とかなんか大それたことまで始めてるし、狂化とか言う明らかやばいスキルまで手に入れてるし
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