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二百十三話 気付けぬ流れと刹那の

「アラッド、下がってなさい」


「……大丈夫です」


待から街へ移動していれば、当然モンスターだけではなく……盗賊に襲われることもある。


「俺も、戦えるので」


アラッドたちの馬車などを見て良い物を得られそうだと思った馬鹿な盗賊たちは、数の力を利用してアラッドたちを囲んだ。


「けっけっけ! 随分と勝気な坊ちゃんなことだぜ」


「あの顔だと……物好きなゲス野郎には売れるかもな」


盗賊たちは盗賊たちで早速品定め中。

そんなバカたちの様子に、護衛の騎士たちの怒りは増すに増す。


「アラッド……まだ早い」


「……最近の成果を試すには、もってこいの相手です」


フールは一度アラッドの表情を確認し……これ以上何かを言っても無駄だと思った。


「はぁ~~~~……スタートだ」


もう何も言わない。

それが自分に盗賊と戦うことを許可した合図。


そしてフールの言葉と共に、騎士たちが盗賊の殲滅を始める。

勿論、フールも騎士たちと一緒にアホ共を沈める。


(一人だけ、だな)


倒す前から分かっていた。

訓練、実戦の成果を試せるのは一人だけだと。


なので予め殺す相手を一人だけに絞り、身体強化と脚力強化を同時に使って猛ダッシュ。


「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」


確かに盗賊の数は多かったが、簡単に言ってしまえば……相手が悪かった。

奇襲を仕掛けたところで勝てる相手でもない。


自信満々で前に出て囲ってしまえば何とかなる。

そんなバカな考えを持って勝てるほど……パーシブル家の騎士や当主は甘くない。


そして……そんな中でも、例外中の例外である存在がほぼ全力で地を駆けた結果……盗賊はその子供の速さに対応出来なかった。


ギリギリ子供がとんでもない速さで自分のところに向かってきた。

それは分かった。

加えて、手に持っていた武器を思いっきり振った。


だが、当然そんな鈍い攻撃がアラッドに掠りもするはずなく……宙を飛んで躱し、頭部を通り過ぎる前に指先から生み出した切断性が高い糸を首周りに設置。


そして着地と同時にその首を刎ねた。


「……良い感じ、かな」


アラッドに首を切断された男は何事もなかったかのように自身の後ろに跳んだ子供を殺そうと動いたが、切断されてる首を無理に動かそうとすれば……当然、その首は落ちる。


「え?」


意識があるのに、視界が転がる……自分の体が見える。

だが、そっと……そっと、瞼が落ちていった。


「当然、もう終わってるよな」


アラッドがもしかしたらと思って周囲を見渡すが……本気になった騎士たちを相手に、己を鍛えもしない盗賊たちが十秒も……何秒も生き残れる筈がなかった。


(俺が…………やったんだな)


盗賊を……ゴミを、生きてれば関係ない人々を傷付けるだけのカスを殺しただけ。

それは解っている。


解っているが……その気持ち悪さが、言葉では言い表せない不快感が腹の底から膨れ上がってきた。


「ッ!!!」


すると当然、食べた物を戻してしまう。


「アラッド様、大丈夫ですか!!!!」


「……大丈夫、大丈夫だ。問題、ない。もう、いける」


多くの騎士がアラッドを心配して駆け寄ってきたが、アラッドは直ぐに元の表情に戻り、大丈夫だと答えた。


(今、この場で殺せて良かった。戦場で吐くとか、論外すぎるからな)


一応覚悟はしていた。

また初めてモンスターを殺した時と同じく、戻してしまうのだろうと。

覚悟はしていたが……言い表せない不快感に襲われ、防げなかった。


「全く、親としてはもう少し育ってから経験してほしかったんだけどね」


「……すいません」


「アラッドが無事ならそれで良いよ。内容は綺麗な圧勝だったわけだしね」


盗賊の強さを考えれば、万が一はないと思いつつもフールは敵を斬り裂く時に息子の方に目を向けていた。


目に移った光景は、無駄なく……攻撃されたことを気付かずにゴミを潰す……まさに子供離れした動きだった。

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