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二百七話 もっと上手く殺るには

(……もっと、殺し方を上手くならないと駄目だな)


バイアードとの模擬戦を終え、それからは日が落ちるまでモンスターを狩り続け、レイ嬢との最後の夕食を食べ……アラッドは部屋の中でちょっと物騒なことを考えていた。


いつもと変わらずポーションを造りながらそんなことを考えているので、かなりヤバい人に思われるかもしれないが……糸を使って大したダメージを与えられなかったアラッドとしては重要問題だった。


「アラッド様、随分と悩ましい顔になっておりますが……大丈夫ですか」


「ん? そんな顔になってたか」


「はい、そうですね。付け加えるなら、ちょっと殺気が漏れていました」


「おっと、それはすまん」


「いえいえ、大丈夫です」


体から零れていた殺気は誰かに向けたものではない。


ただ、いきなりアラッドから殺気が零れ、ガルシアたちは一瞬ビクッと体が震えた。


「何か悩みごとがあるなら、相談に乗りますよ」


「わ、私も……お役に立てるかは分かりませんが」


「ありがとな、ガルシア。シーリア……別に悩んでるって訳じゃないけど、もうちょっと上手く殺せる方法というか……殺し方を上手くならないとなって思ったんだ」


「「「「えっ」」」」


アラッドの口から出たまさかのセリフに、全員が固まった。


どう考えても、自分たちが相談に乗れる内容ではない……のだが、なんだかんだで一番冷静なダリアがアラッドの言葉を一番先に理解した。


「えっと、もっと糸の使い方を上手くなりたいってことっすか?」


「あぁ、そういうことだ」


正しい内容を聞くことが出来、他三人はホッと胸をなでおろした。


「今回の模擬戦ではうっかりがあったらいけないから、全力は出しても……糸は使わないようにって考えてた」


普段モンスターと戦っている時も、武器や魔法を使って倒す……もしくは糸で倒す。


その三通りで倒すことが多い。

まず……三つの力を全て同時に使って倒すことはない。


だが、バイアードとの戦いでは武器と魔法だけではどうやっても有効打を与えられない……それどころか、内容だけ見れば良い勝負ですらない。


そう思い……糸をフルに使うために意識的に振り切り、本気の全力で挑んだ。


「でも、それじゃバイアード様には良い攻撃を一つも当てられないと思った。だから……大丈夫だろうという思いもあって、糸を使ったんだ。結局ボロ負けだったけどな」


「いや、アラッド様。そんなことないっすよ。バイアード様も言ってたっすけど、新人の騎士ならあそこまで戦えないっすからね」


「魔法専門ですが、ダリアと同意見です。そもそも、新人の騎士と国に仕え始めたばかりの魔法使いが組んだとしても、あそこまでバイアード様と戦えません。アラッド様の力があるからこそ、あそこまで激しい戦いになったのだと思います」


「……褒めてくれるのは嬉しいが、それでも負けは負けだ。本気で殺すつもりで戦って……結局は掠り傷をいくつか与えられただけ。ボロ負けと変わらない」


モニカからすれば、ロングソードを使いながら適所適所で攻撃魔法や妨害魔法を使い、更には糸まで操っていた。


モニカも最近は武器の方も頑張ろうと特訓しているが、武器と魔法を同時に使う。

その難しさが頑張れば頑張るほど身に染みて解る。


それはダリアも同じであり、そこに糸という第三の武器まで加えて……脳が焼き切れないのか心配になる。


「やっぱり糸で殺るには、それなりの動きがあると思うんだ。いや、もっと言えばタイミングも完璧じゃないよな。つっても…………いや、止めとこう」


現段階であれば、バイアードよりも実力が上であるフールに空いた時間に本気の自分と戦ってもらおうかと一瞬思ったが、自分にフールが訓練を付けているとバレると……どう考えてもドラングの怒りと嫉妬心が爆発する。


(……手探りで頑張ってくしかないか)


さすがに糸を使った暗殺の師はいないので、糸だけに関しては自分でなんとかするしかなかった。

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