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二百話 ちょっと可哀そうだが……笑ってしまう

「え、あの「二度も言わせるな。邪魔をしないでほしい」……」


あまりにも……あまりにも、綺麗にバッサリと断られた。


(多分、こうなるのは分かってたけど……なんというか、ここまでバッサリと断られる様子を見ると、少し可哀そうに思えるな……笑える状況ではあるけど)


さすがに爆笑して良い場面ではないと解っているので、アラッドは必死で声を出して笑いたい思いを抑える。


それはネーガルの護衛をしている騎士二人も同じだった。

おそらく断られるだろうとは思っていたが、見事に華麗に断られて絶句する主人の令息。


かける言葉が見つからないとはこの状況。

そろそろ自分たちが何とかすべき……と思いつつも、口を開けば目の前で行われた光景を思い出し、笑いそうになる。


そのため、中々動けずにいた。


「……そちらの騎士さんたち。あまりレイ嬢の邪魔をすれば、グラストさんやバイアード様から鉄拳制裁を食らうかもしれませんよ。あっ、騎士なので鉄剣制裁かもしれませんね」


優しい口調で伝えたアラッドだが、騎士という称号を持つ彼らにとって……先輩たちからの制裁は非常におそろしい。


「レイ嬢、いきましょうか」


「あぁ、そうだな」


方向転換してネーガルがいる方向とは反対の方向に脚を向ける。


レイ嬢への誘いが断られたのだと、十数秒経って気付いたネーガルは慌ててもう一度レイ嬢に声を掛けようとしたが、さすがにそこは騎士二人が頭をフル回転させながら説得を始めた。


「はぁ~~~~、全く。困ったものだ」


「ま、まぁ……そうかもしれませんね」


「かもではない。常識的に考えて、明らかにマナー違反だ」


せっかくアラッドとのペアルック指輪を手に入れ、上機嫌だったところを邪魔され、レイ嬢は非常に機嫌が悪くなっていた。


機嫌が悪くなったからといって、アラッドに当たり散らすことはない。

だが、気分がモヤモヤしたまま……それはアラッドの目から見ても十分解る。


(デート? 中の男女に声を掛けるのは……いや、声を掛けるだけならまだ良いとは思うが……そこに割って入ろうとするのはレイ嬢の言う通り、確かにマナー違反だな)


マナー違反を犯してでも、レイ嬢と接する時間をつくりたいという強い思いがあったのかもしれない。


(割って入ろうとする度胸は凄いと思うが……そこは勇猛果敢ではなく、ただの蛮勇だ。というか、俺……さらっとかなり見下されてたよな。そりゃ社交界には全然参加してないけど、それでも侯爵家の三男だから決して立場は低くないと思うんだけどな……)


レンバルト家は子爵家。


例え次男であったとしても、侯爵家の令息であるアラッドに上から目線で話すのは、非常によろしくない。

その考えは決して間違ってはいないが……アラッドがいないところで、色々とその辺りは事実と変えられている部分がある。


…………主にドラングによって。


(さて……行先は決まっていないが、レイ嬢の機嫌をなんとかしないとな)


アラッドのミスでこうなってしまったのではないが、それでも立場上……アラッドがレイ嬢をエスコートするのが必然。


何か良い店はないかと周囲を見渡し……一軒の店がアラッドの目に留まった。


「レイ嬢、あちらで少し休憩しませんか」


「む……そうだな」


アラッドが示した店は、主に女性客がメイン層である……スイーツ店。

レイ嬢もまだまだ子供ということもあり、スイーツは大好物。


早速店の中に入り、子供二人だけの入店だが……店員は二人の服装を見て、事情をお察し。

何も尋ねることなく二人席に通した。


「レイ嬢、ここは自分が奢るので好きなだけ食べましょう」


「そ、そうか……それでは、甘えさせてもらおう」


「はい。自分もがっつり食べるんで、遠慮しないで食べてください」


外見には似合わぬ太っ腹さに、周囲の女性客はアラッドにとんでもない甲斐性を感じた。

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