千二百十五話 限界突破
「そうはさせんよ」
何が何でも一瞬とはいえ悪夢といえる状況を生み出した青年を逃す訳にはいかず、闘争心を燃やす……というよりも、恐怖から無理矢理士気を高めるゴリディア帝国の者たちに対し、老人が一歩前に出る。
「あなた方の敵は私たちよ!!!!」
「わざわざ思い通りにさせるとでも」
「ここから先より後ろは通さん」
リエラ、ラディア、ライホルトの三人衆も立ち塞がる様に前へ出る。
活躍した誰かを守るために、戦う。
その状況……流れは、ゴリディア帝国の者たちとは別で、アルバース王国の戦闘者たちに良い意味で発破をかける流れとなった。
「っしゃ!!!!! やってやんぜ!!!!」
「明日へ続く希望を潰させはしない」
「あの子たちを殺りたきゃ、まずは俺達を越えてきな、ってな」
「戦る気が一杯なのは、こっちだって一緒よっ!!!!!!!」
あの二人が少しずつではあれど、それでも確実にゴリディア帝国の戦力を削っていたことは、知っていた。
先程……青年が暴走に近い状態になった光景には、正直恐怖を感じた。
それでも、あの青年は自分たちに刃を振るうことはなかった。
しっかりと、確実にゴリディア帝国の者たちだけに刃を振るっていた。
彼は、間違いなく自分たちの仲間だと……短時間ではあるけど、頑張った……間違いなく、戦果と言える戦果を叩きだした。
であれば、次は自分の番だと心の底から叫ばなければならない。
木竜たちと共に並び立つ彼らは、全員……笑みを浮かべていた。
普段通りの、戦る気に満ちた……普段はあまり笑みを浮かべない者も、この時ばかりは笑みを零していた。
まるで、示し合わせたかのように、その場に居るアルバース王国の戦闘者たち……全員が、それぞれ最高の笑みを零す。
その光景が、無理矢理士気を高めたゴリディア帝国の者たちを煽る。
ふざけんな、ぶっ殺してやる!!!!!! そんな声が零れる前に、丁度空いていた場所に複数人の人間が飛来。
「なっ!!!! て、てめぇは」
「初めまして。青嵐騎士団団長、ルメス・エウレニスです」
空から飛来した人物の一人が、礼儀正しく? 名を語った。
「この高鳴りに、高揚感を感じたい、参加したい……お飾りの大将ではいられない。理由はこんなところでしょうか」
「な、何を言ってんだ」
「この……闘争心の高まりに身を任せ、一つの炎となりたい…………さて、私の参戦理由は語りました。これ以上語るのであれば、己の刃で語りましょう」
何が起こったのか、解らん。
アルバース王国の者たちも、少し解らない部分があるも……自分たちの大将が、わざわざ最前線に飛び出してきた。
自分たちと共に戦いたいと、共に燃え上がりたいと口にした。
一度燃え上がった炎に、更に焚き木がくべられた。
もう……彼らの闘争心、心の炎は……完全に限界突破した。
「「「「「「「「「「「「「「「うおぉおおおおああああああああ!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
まだ、三日目の終戦には早く、両軍共に心の底から雄叫び上げ、己の武器を振り上げた。
「…………」
「アッシュ……」
アッシュ、シルフィーを背に乗せたユニコーン親子は後方に下がった。
具体的に言うと、先程までこの戦場の大将であったルメスがいた場所に来ていた。
今度こそ、絶対に自分たちが二人を守る……その気持ちに、嘘はない。
それでも限界がある。
そのため、強き者たちが集まる場所まで下がった。
「「「「「…………」」」」」
突然自分たちの元に現れた女性と青年、そして二体のユニコーンに対し、後方に残された者たちは……どう対応すれば良いのか悩んでいた。
ぶっちゃけた話、自分もし合前線に出て暴れたい。
ルメスの身に何かあってはならない!! だからこそ自分も前に!!!! と思いを持つ者など、胸中は様々。
ただ、彼らも最前線で起きたことは、おおよそ理解していた。
だからこそ、当たり前だが「何をしている!!! 直ぐに戦場に戻るんだ!!!!」などといった怒声を上げることはなかった。
そんな事をすれば、二人の身を案じるユニコーンたちと激突待ったなしである。
暴論を振りかざした結果、味方である聖獣と大喧嘩……ルメスの耳に入れば、冗談抜きでぶった斬られても仕方ない。
勿論、怒声を上げた方が、である。
「「「「「…………」」」」」
相変わらず高位騎士や宮廷魔術師、一部の高ランク冒険者や有名クランのトップなどは彼女たちに対しどう接すれば良いのか解らなかった。
特に……高位騎士、宮廷魔術師たちの頭には、ある疑問が浮かんでいた。
(今…………この女性冒険者、気を失った男性冒険者のことをアッシュ、と呼んだか?)
(私の聞き間違いじゃなければ、この子はさっきまで戦場で暴れてた子をアッシュって名前で呼んだわよね……それって)
そう……アッシュとは、もしやあのアッシュなのかと。




