千百八十八話 崩せない
「あいつらを、殺せッッッ!!!!!!」
「「「「「「「うぉおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」
両国の本部隊が衝突し始めて数十分。
初日の交戦で、ゴリディア帝国はまず……誰を狙わなければならないのか決めていた。
それは……やはり、二頭のユニコーン。
初日は金に目が眩んだおバカ冒険者たちが突っ込み、無残に殺されていった。
とはいえ、おバカ冒険者たちは戦闘力が威勢だけのものではなく、実力は有望なDランク冒険者。
確かな実力を有する者や、一撃の攻撃力だけならBランクに届きうるCランク冒険者たちもいた。
だが、そんな冒険者たちやあまり騎士らしくない騎士などが襲いかかり……全員が返り討ちにされた。
前線で戦う者たちも……嫌でも解らせられた。
ユニコーンは珍しく、逃げ足が速いだけの存在ではないと。
「フンッ!!!!」
「ぅおりゃッ!!!!!」
「ちぇりゃ!!!!!!」
「「…………」」
渾身の大斬が、連続で繰り出される高速の斬撃波が、氷の鉄拳がユニコーンの親子に迫る。
(意識が変わった、といったところですね)
(気合が、入ってる?」
親子も、迫りくる者たちの気迫、視線が先日と異なると感じ取っていた。
だが……彼らにとっては、だからどうしたというもの。
冷静に地を駆け、雷を落し、蹄で蹴り潰し、雷を宿す角で切り裂く。
「…………」
「っ、この距離で、躱すのか」
当然、ユニコーンたちは前線の冒険者や兵士、騎士たちだけではなく後方にいる弓使い、魔法使いたちからも狙われていた。
威力よりも速さを重視し、少しでもユニコーンの体勢を崩して前衛の者たちに繋げる。
それが前線で戦う者たちの間で決めた作戦。
ユニコーンというモンスターが、聖獣が逃げ足だけの存在ではないことは十分理解した。
だからこそ……四足歩行、形態が馬型という弱点を狙う。
人間であれば、体勢を崩されたとしても、慣れている者……そういった流れを想定している者であれば、器用に体勢を立て直して対応してみせる。
そこまで出来ない者であっても、倒れればとりあえず直ぐに転がってでも逃げるという選択肢を取れる。
だが……ユニコーンである彼らは、それが出来ない。
だからこそ、高火力の狙撃で討伐するのではなく、高速の狙撃で少しでも体勢を立て直し、繋げる。
決まれば、本当に二体を窮地に追い込む。
そう……当たれば、形勢を崩す切っ掛けとなる。
しかし、当たらなければ切っ掛けもクソもない。
「うそ、でしょ」
「っっっ!!! どれだけ、離れてると思っているんだ」
狙撃部隊には、冒険者基準でCランクレベルだけではなく、Bランククラスの者たちもいる。
本来であれば、もう少し万遍なく最前線で戦う者たちを援護しなければならない。
その援護を削ってでも、ユニコーンを仕留める為に動いていた。
しかし、当たらない。
(どれほどの感知力を、有しているというのだっっっ!!!!!)
存在、攻撃を感知する。
それは、ユニコーンにとって十八番も十八番の力。
そんなユニコーンたちの中でも、比較的戦闘を重ねた個体たちは、自身に迫る攻撃が命の危機に繋がるか否か……そういった部分まで感知、判別出来るようになる。
アラッドとクロに助けられてから子ユニコーンだけではなく、子の要望に応えるように親ユニコーンもモンスターと戦いを繰り返した。
そんな彼らだからこそ判別力が上がり、二頭共に戦うこともあり、近場の自分たち……敵対者たちの位置把握力だけではなく、感知できる範囲も高まる。
結果、優れた腕を持つ弓使いや魔術師であったとしても、二体の体勢すら崩すことが出来ない。
「っ!!!???」
「チッ!! またか!!!!!」
そして、悲劇に見舞われるのは前線で戦う者たちだけではない。
二頭のユニコーンに向けて遠距離攻撃を行った者たちの直ぐ傍から、木や岩石の槍が飛び出し、体を貫こうとする。
(いったい、どこの誰が……くっ!!! 私たちを狙っているであろう戦意、殺意……魔力の揺らぎすら感じない!!!)
歴戦の後衛職からすれば、自分たちを狙う者たちの感情や意思を感じ、対応出来る。
更に自分を狙っている相手が解れば、魔法を発動する際の魔力の起こりによって、事前に何かしらの魔法が発動されることを把握出来るが……意思も、起こりも感じられない。
(ふむ…………先程の砲撃を放ってきた者たちかは解らないが、やはり優れた弓使い、魔術師がいるようだな)
彼らに木槍、岩槍を放っていたのはユニコーン親子の比較的近くにいた人の姿をした木竜。
現在両国の戦闘者たちが戦っている場所は森。
戦争によってどんどん荒されていくが、それでも木竜という存在にとっては……雪山や氷の上、火山地帯などでなければ、庭であることに変わりはない。
ユニコーン親子に迫る遠距離攻撃。
その飛来場所から即座にある程度の場所、存在を把握。
大地を通し、彼らの近くから木槍や岩槍を生やして攻撃。
一撃で仕留められることはなく、槍程度の攻撃であればなんとか対処し続けられる実力者たちもいる。
それでも、いちいち狙撃する場所を変えなければならない。
狙われていると解れば、その攻撃がいつ来るか……そちらにも意識を割かなければならなくなる。
「っっっ!!!!!」
結果、速さはそのままでも精密さが掛け、味方の動きを妨害することに繋がってしまう。
まず、狙わなければならない存在は解っている。
だが……まだ、把握出来ていない脅威が、ゴリディア帝国の戦闘者たちを襲い続ける。




