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百十六話 今使えずとも

「アラッド様、三か月後にこの街でオークションが開催されますが……どういたしますか?」


「オークション?」


合コンで出会う同世代の令息や令嬢たちはいったいどんな子たちなのか。

そんなことを考えながら過ごしていたある日、鉱石を錬金術で弄っているアラッドに執事の一人が声を掛けた。


「そうです。オークションには珍しい品物が多く出品されますので、アラッド様が気に入る品物があるかもしれません」


この執事はアラッドが子供ながらに目玉が飛び出そうなほどの金額を有していることを知っている。

そんな大金を得ている割には、この大陸ではあまり手に入らない食料を手に入れるため。

他には最近復活した鉱山から採掘された鉱石を買う。


それぐらいにしか金を使っておらず、無駄遣いを勧めるわけではないが勿体ないのではと思っていた。


「オークション、か……でも、今の俺が扱えるような品物ではない物が出品されるんだろ。それを考えるとちょっとなぁ」


日頃から錬金術に精を出しているアラッドの腕は日々、着実に成長している。

確かにオークションなどに出品される品物は、まだアラッドの手には余る代物かもしれない。


だが、偶にアラッドが錬金術を行うところを見ている執事としては、将来的に扱える可能性は十分にあると思っていた。


「今はそうかもしれませんが、アラッド様が成人される頃にはそれらの素材を十全に扱えるようになっているかと」


「そ、そうか? そう言ってくれるのは嬉しいけど……でもなぁ」


「……アラッド様、良い素材というのは世に出れば直ぐ誰かの手に収まってしまいます。それだけ価値が高いのですから」


「だろうな。需要が半端じゃない代物は直ぐ買われてしまうだろうな」


それぐらいはアラッドも解っている。

ただ、執事の「アラッド様が成人されるころには十全に扱えるようになっている」という言葉を理解していない。


「先程申した通り、このままアラッド様が研鑽を続けていけばいずれ高価な代物を無駄にすることなく扱えるでしょう。そうなった時、希少な素材は欲しいと思ったタイミングで手に入らないかもしれません」


「ッ!!!! な、なるほど……確かにそれはそうだな」


オークションには錬金術に使える素材も出品される。

執事はオークションで出品される品々にきっとアラッドは満足すると断言出来る。


(最悪の場合、そういった品物が出品されずとも武器なども出品されるので、大いに満足されるでしょう)


決してオークションというイベントの利点を話したから、何か褒美になる物を寄こせなどと一ミリも思っていない。

純粋にアラッドほどの財産を持ちながらオークションに参加しないのは勿体ないと感じていた。


「鉱石であれば……もしかしたらオリハルコンやヒヒイロカネが出品される可能性もゼロではありません」


「ッ!!! それは……気になる品々だな」


前世から聞いたことがある鉱石の名を聞き、心が躍る。

オークションは三か月後なので、合コンの期間と全く被っていない。


開催されるのはフールが治める街ではないので少々移動時間があるが、それでも始まるまでには十分余裕をもって帰って来れる。


「……そうだな。とりあえず一回ぐらいは参加してみるか」


「その方がよろしいかと。アラッド様はロングソード以外の武器も扱えるので、良い武器があれば手に入れるのも悪くないかと」


「武器か……それこそ、オークションで出品されるような品はまだまだ俺に早いような気がするけど……まっ、そっちも気にしておくか」


自分にはまだまだ早いと言うアラッドだが、戦闘も出来る万能執事からすればロングソード以外の武器も平均レベル以上に扱えていると断言出来る。


そして特に何かイベントが起こることなく時が過ぎ、アラッドは父と一緒にグスタフ公爵領へと向かった。

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