百十四話 一度に纏めて
「なるほど、そんなことがあったんだね」
「はい、途中でナイトアーマーが魔力切れになったんで、後味が悪い戦いでした」
「……うん、気にするところはそこじゃないと思うんだけど、まぁ良いか」
元盗賊団と思わしきスケルトンたちの情報をフールに伝えたところ、頭の片隅にそれらしい情報があった。
(多分アラッドが言う通り、元盗賊団のスケルトンだろうね。他と比べてレベルが高い大剣使いと魔法使いがトップ……最近冒険者が討伐した盗賊団の組織情報と合致してる)
死体は燃やすか地面に埋めなければ、スケルトンとして蘇る可能性がある。
元のレベルが高ければ、生きていた頃の意識を持ったまま霊系のモンスターとして復活する……そんな例も少なからず残っている。
「それなりに強かった、って感じかな」
「そうですね。強化系のスキルを使ってる状態は結構強かったです。ただ、魔力が切れた後は動きに慣れてたんでサクッと倒せました」
「流石アラッドだね」
先日盗賊団の討伐を行った冒険者たちは盗賊相手に大苦戦し、幸いにも死人は出なかったが大ダメージを負った。
回復手段もなかったため、盗賊の死体を燃やす……もしくは地面に埋めるという余裕がなかった。
(死体がスケルトンやリッチ、グールになる可能性はそこまで高くないけど、なるべくその辺りはしっかりしておいてほしいね……冒険者たちに喝を入れてもらうように、ギルドマスターに頼んでおかないと)
今回は超ぶっ飛んだ実力を持つアラッドが遭遇したからこそ、被害は全く起こらなかった。
しかし戦力的にDランクの冒険者であっても、全滅させれた可能性は高く、道に出れば商人や旅人を襲っていたかもしれない。
(被害者が出たかもしれない可能性を考えると、アラッドたちと一番最初に遭遇して良かったかもしれない……なんてことは親として考えたら駄目なんだよね)
平均的な戦闘職の実力と比べても見劣りしない戦力を持っているが、それでもまだまだ十歳にもなっていない子供。
モンスターと戦うことは本人が望んでいるので構わないが、それでも今回の一件は少々ヒヤッとした。
「もしかして、もうCランクのモンスター相手だと楽勝かい?」
「……どうでしょう? 今回、スケルトンウィザードに関しては三人に任せましたし、ナイトアーマーもクロと一緒に戦いました。自分一人だけと仮定すると、危なかったかもしれません」
謙虚に答えるアラッドだが、結局元盗賊のスケルトンたちとの戦いで強化系のスキルは使ったが、魔法は使わなかった。
Cランクモンスターと一対一で戦ったとしても、初見でアラッドの攻撃に対応するのは難しい。
それはフールも理解している。
「ふふ、そうか……さて、ちょっと話が変わるんだけど、アラッドに一度会ってほしい令嬢たちの話は覚えてるよね」
「あ、はい。勿論覚えてます」
同年代ぐらいの少女には全く興味ないが、侯爵家の令息としてそれなりに上手くクリアしなければならないミッション。
という内容でアラッドの頭にインプットされている。
「それなんだけど、いきなり女の子と二人で話したりするのはハードルが高いと思ったから、ちょっと形式を変えることにしたよ」
「…………つまりどういう感じの形式になるんですか?」
父が自分の為を思って頑張ってくれたのは解る。
だが、それが良い方向に転ぶのか悪い方向に転ぶのかは分からない。
「一度にこの家の令嬢だけはアラッドに会ってほしいと思ってる令嬢を全員集めて、アラッド以外の令息も呼んでお茶会形式にしようと思ってね」
「お茶会形式に……なるほど」
アラッドの頭になんとなくイメージが浮かんだ。
自分以外にも同じ貴族の令息がいる。
それはちょっと有難いと感じた。
「アラッドも面倒事は一度に終わらせたいでしょ」
「はい! 終わらせられるなら一度に終わらせたいです」
心の底からそう思っており、大きな声で正直に答えた。
そして一週間後、アラッドはフールからそのお茶会が二か月後に行われることを告げられた。