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百十話 魔法使いが目指す形

「まぁ、こんなもんか」


昼過ぎ頃、襲い掛かってきた一体のオークと対峙し、アラッドは掠り傷すら負うことなく勝利を得た。


「本当にアラッド様の糸は凄いですね」


「だろ。オークみたいなパワータイプが本気になれば引き千切られるんだろうけど、数秒程度なら問題無く止められる」


「アラッド様の場合、その数秒があれば倒すのに十分っすよね」


糸を使えば簡単に戦いが終わってしまう。

しかし実戦も良い訓練になるので、糸を全く使わないというわけにはいかない。


「ただ、ちょっと物足りないって感じっすね」


「まぁ…………正直なところ、ちょっと物足りなかったな。オーガとか現れてくれたらなぁ~~って思うけど、それはそれで父さんや母さんが心配しそうだしな」


「アラッド様のレベルを考えると、そう思ってしまうのは仕方ありませんね」


魔法使いの女性が言う通り、アラッドのレベルが現在解体されているオークよりも上。

世の中、レベルだけで勝負が決まる訳ではないが、それでもレベルが上がるごとに身体能力や魔力の総量も上がる。


そしてアラッド本人が訓練を全く怠らない事もあり、Dランクのオークでは糸を使ってしまうと本当に十秒と経たず、戦いが終わってしまう。


「オーガっすか……確かに現れたらヤバいと思うっすけど、それでもアラッド様は本当に強いっすからね。それに自分たちだけじゃなくて、クロもいるっすから一体ぐらいは大丈夫じゃないっすか?」


「ワゥ!!!」


自分が頼りにされていると感じ取ったクロは機嫌よく吠えた。


「一体ぐらいなら問題無い、か……そうかもしれないな。けど、オークの肉が手に入れば丼が食える。それを考えれば、やっぱりこいつは良い獲物だよな」


別の大陸から米を取り寄せているので、パーシブル家では日常的にどんぶりが食べられている。

パーシブル家に仕える兵士たちもアラッドが狩ったモンスターの肉を料理人たちに調理してもらい、十日に数回は食べている。


「どんぶり本当に美味しいですよね……ただ、食べ過ぎて太らないかが心配です」


今回の仮に付いてきた女性魔法使いはアラッドや兵士二人から見ても、良いスタイルを持っている。

確かに食べ過ぎは太る原因の一つだが、アラッドや兵士二人に関しては毎日動いているので、あまりその怖さが分からない。


「あれだな。部屋に籠って魔法の勉強をするのも良いが、日常的に体を動かした方が良いってことだな。そうっすよね、アラッド様」


「そうだな。勉強に熱中するのが悪いとは思わないが、体を動かすのも大切だ」


「う~~~~……そうですよね」


女性魔法使いは全く動けない訳ではないが、やはり体を動かすのが得意ではないので、苦手意識がある。


「集団戦では後ろから仲間を援護したり、攻撃魔法で敵を倒すのが主な役割だろうけど、決して動かなくて良い訳じゃないからな。俺としては、魔法使いが目指す場所はやっぱり移動砲台だと思うな」


魔法を使う際には集中力が必要になる。

魔法の才がある者でも、最初から縦横無尽に移動しながら魔法を放つことは出来ない。


(い、移動砲台ですか……やはりよっぽどの大天才でなければそうですよね。ただ、それを七歳で出来てしまうアラッド様はやはり他の天才たちと比べても頭が三つか四つは抜けていますよね)


女性魔法使いも動きながら魔法を放つことは出来るが、アラッドほど全力で動き回りながら魔法を正確に当てることは出来ない。


アラッドは魔法専門の者と比べれば才は劣るが、戦う才能であれば負けてない。


「ランニングは毎日行った方が良いと思うぞ。慣れたら魔力操作を行いながらランニングだな」


「うっ、中々厳しそうですね」


そう言いながらも、女性魔法使いは帰ったらパーシブル家に仕える同僚たちにアラッドからの言葉を伝え、苦手な運動も頑張ろうと決めた。


「ッ!! アラッド様」


「あぁ、またお客さんが来たみたいだな」


オーク戦から十数分後……いつもより短いスパンで来客が訪れた。

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