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「それはどういう事ですか!」


”なぜ帰ったのだ?こんな目に遭わされてはこの国に居たくないのはわかるが、一言何か、文句でもなんでもいいから・・・”


「止めはしたのよ。けれど本人が帰る、と聞かなくて・・・」

「オールフェンに帰ったのは間違いないんですよね?」

「えぇ・・・」


それを聞くとすぐに追いかけようと一歩踏み出した所で王妃がアッティラを止める。


「もう間に合わないわ」

「なぜですか?」


申し訳なさそうに言う王妃の言葉にアッティラは振り返り王妃に尋ねる。


「ここを立ったのが数時間前なの」


”数時間前!?”


アッティラの背中を嫌な汗が流れ、顔が強張る。


「なぜ教えてくれなかったのですか?」

「本人の希望で」

「帰った理由を教えてください」

「それが、聞いたのだけれどよくわからないの」

「どういう事ですか?」

「」それが・・・

「何と言ったのですか?」

「黒だった。と」


”黒だった?・・・”


「っ!?」


”まさか!”


瞬間、アッティラは走って部屋を飛び出していった。



警備で馬に乗っていた兵士の馬を借り、一人でエリシュカの乗った馬車を追いかける。


”追いつけばいいが・・・”


エリシュカが国境を超える前に追いつこうと必死に馬を飛ばしオールフェン王国へ続く道を走り抜けるアッティラ。



オールフェン王国へと帰る馬車の中。


「お嬢様、本当によろしいのですか?」

「いいの」


キンガが心配し尋ねるが、エリシュカは俯きながら小さく答える。


「せめてアッティラ様に一言申されても」

「いいの」

「ですが」

「わたくしが帰る理由は、兄上の結婚のためとしてもらっているから、ヴォールーニの方々には迷惑をかけませんわ」

「そうですが・・・」


”事情をきちんとお尋ねになられた方がよろしいと思うのですが・・・”


エリシュカの兄であるベーラは今婚約中、そして結婚間近のため今回のヴォールーニ王戴冠に出席したほとんどの人間がその結婚の儀に参列する事になっている。

もちろん、妹であるエリシュカも出席するためそのまま里帰りを兼ねて国に帰ったとしても誰も疑う事がないという打って付けの理由だったりする。


「もうすぐ国境です」

「!?」

「今なら引き返す事が出来ます」

「いいの。父上も母上もいいとおっしゃって下さったわ」

「・・・」


”そうですが、あんなに涙を流しながら懇願なされば、お許しにならない訳には行きませんよお嬢様”


キンガはエリシュカの今にも泣きそうな悲しそうな顔を見ると、これ以上何も言う言葉が見つからなかった。



全速力で馬を走らせていたアッティラは、太陽が昇り始め明るくなり始めたくらいに国境にたどり着く。

そしてヴォールーニ王国、国境警備隊の所に息を切らせながら駆け寄りる。


「オールフェン王国の馬車は通ったか?」

「アッ、アッティラ殿下!」


突然アッティラが現れたことに驚く警備隊。

警備隊にとっては遠くから姿を見た事のない人物で、感情を表に出さず話しかけずらいと有名な人物がいきなり息を切らせて一人で現れたのだ。アッティラの質問など耳に入らず、ただ驚き声に詰まる。


「ここをオールフェンの馬車が通ったか、と聞いたのだ!」

「は、はい。少し前に一台通りました」

「・・・そうか」


”間に合わなかったか”


兵士の言葉を聞いて目をぎゅっと閉じ唇を噛み締め俯き落胆する。


「私はこのままオールフェンへ行く」


ヴォールーニ王国とオールフェン王国の国境は百メートルほどの川により分かれており、橋を挟みお互いの兵士が警備を行っている。


「はい」


アッティラは、また馬に乗ると橋を渡りオールフェンの国境まで到達すると馬から降り入国するため窓口に向かう。


「オールフェンに入国したい」

「通行手形をお持ちですか?」

「いや・・・」


”しまった。そこまでは想定してなかった”


今では、正式な訪問であればそんな物必要としなかったし、出かける時は誰かが用意していたためそんな事頭に無かった。


「私は、オールフェン王女の夫でオールフェン王の娘婿だ」

「娘婿?お名前と証明できる何かをお持ちですか?」

「アッティラ・ヴォールーニ」


証明する物が身に着けている王族の紋や勲章しかなかったためそれを見せる。

それを見た兵士は気を張り姿勢を正して一礼。

その行動を見たアッティラは、通してもらえるものだと思いほっと肩をなで下す。


「通してもらえるか」

「申し訳ございません。お通しする事は出来かねます」

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