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アッティラは部屋に戻ると、服を脱ぎお風呂場で体を流す。
”一体どこに行ったのだ?私がもっと早く自分の気持ちを早く伝えられていれば、会場に早く行っていれば一人にならずに、こんな事にはならなかったのかもしれない”
一人になると、色々考えてしまい悪い方に考えてしまい、そんな妄想を打ち消そうと頭を横に思いきり振り大きく深呼吸。
「はぁ・・・」
アッティラは、濡れてしまった服から別の礼服に着替える。
こんな時でも、何もないような格好をし平常心で来客の対応をしなければならない自分に呆れながらも、それを出来てしまう自分が情けなく思う。
”一体どこにいるのだ?”
*
アッティラ自身主役ではないが、この国の王子としては会場に顔を出さない訳には行かないため一度会場に顔を出した。
エリシュカの事を聞かれれば、部屋で休んでいる、と言う事にして笑顔を振りまき、ダンスの相手を求められれば断るような失礼な態度はとれないため一曲踊る。
「陛下」
カッティラが一人でいる所にアッティラが近づき話しかける。
「アッティラ!どうだ?」
「まだ」
「そうか」
「今、ベーラ殿にお任せしています。陛下の許可も取らずに申し訳ありません」
「話しは聞いている。そんな事くらい気にしなくていい」
「ありがとうございます」
「それより、一体どこに?」
「・・・」
「アッティラとエリシュカ王女には本当に悪い事をした。こんな事になったのは私の責任だ」
カッティラは、アッティラとエリシュカを結婚させてた時と同じ人物とは思えないくらい毒気が抜けてしまっていた。
「いいえ、自分にとっては王女と結婚出来た事には感謝しています」
「そうか」
アッティラの顔を見て、その言葉が本心である事を知るとカッティラ自身も嬉しくなりつられて笑顔になる。
そんな二人を遠目にみてた人達は、楽しく話しをする兄弟に見えてほっこりとつられて笑顔になった。
*
「見つかりましたか?」
会場から移動したアッティラは、部屋に入るなりベーラに聞くが、ベーラは首を横に振る。
アッティラが場を離れている間に、ファレンスが国から連れてきた護衛やホノリア付きメイドなどを呼び話しを聞いたが、誰も知る者はおらず居なくなったのは一人のメイドだけであった事が確認されたことなどアッティラがいない間の情報を伝える。
「そうですか・・・」
「アッティラ殿」
アッティラが探しに行こうとした所、ベーラがそれを止めるように声をかける。
「外はほぼ探し終えて今は庭や森の捜索をしているし雨もひどくなって来から、探すなら屋敷内にしてもらえるかな」
「はい」
小さく返事をし頷くと、すぐに部屋を出て行った。
「朝まで待つしかないのかしら?」
「叔母上、それはどうでしょう?」
「どういう事?」
「これだけの人間が動いていればエリシュカを連れ去った者も気づくでしょう。もしエリシュカが朝になり開放されたらエリシュカからの情報で捕まる可能性が高い。しかも、ホノリアがあの状態では報酬を受け取るのは絶望的です。
朝まで見つからなければ、犯人はそのまま逃げる事しか助かる道はない。そうなれば、エリシュカは邪魔な存在でしかないのです」
「それなら、今この状況を犯人が知れば・・・」
「邪魔なエリシュカを放り出して逃げるか、口封じ・・・」
「!?」
ベーラがしゃべっている途中、アルビアが声にならない小さな悲鳴を自分の手を口に当てながら叫んだ。
「あくまで最悪な事になれば、の話しですよ」
相変わらず穏やかな言い方だが、顔は全く笑っていないベーラ。