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「どういうことだ!?さっきまでどこにいるか知らないと言っていただろう!!!」
静寂を破ったのはファレンスの怒鳴るような大きな声。
「うるさいですお兄様」
「だが・・・」
「どこにいるのかまでは知りませんもの」
ホノリアは、エリシュカの居場所を聞かれたので、正直に知らないと答えていたが、エリシュカを舞踏会から遠ざける事を指示したのはホノリア自身。そして、指示はしたが、それ以上の事は関与せず。
だが、さっきのベーラとの話しで自分の存在や地位を脅かす存在ではない事、それを自身で納得したためエリシュカの存在などどうでもでも良くなったため教えた、という事なのだ。
しかも、ホノリア自身悪い事をしたと言う認識がない。
”ある意味、大物だな・・・”
ベーラが呆れかえる。
「そんな屁理屈を」
「屁理屈ではありません。聞き方が悪いのですよお兄様」
「!?、それじゃ、その人間はどこにいるんだ?」
「エリシュカ王女と一緒にいるはずですわよ」
「エリシュカ王女と一緒って!?」
「息子の時もそうでしたわ・・・」
「アルビア・・・」
「忘れたわけではないでしょう?息子の時も連れ出した者と一緒にいたでしょう!本人は遊んでいて楽しかった様でしたけれど」
「・・・」
「ホノリア殿!王女、妻は無事なのですね!!」
今まで黙っていたアッティラが突然大きな声で、ホノリアに詰め寄る。
「危害を加える様には言っておりません。それに私は殿ではなく王妃ですよ!」
「もし何かあれば許しませんよ!」
「そんな命令していないので、もし傷つける者がいればその者に言ってくださいませ。それと、これから呼ぶときは王妃と呼んでくださいませ、王弟だから今回は許しますが」
”ホノリア殿にこれ以上聞いても無駄か・・・”
ホノリアと話し、他の人とのやり取りを聞いていてベーラがさらに呆れる。
「アッティラ殿どこへ?」
「探しに行きます」
「探しに行くのはもう少し待ってもらえますか?」
「ベーラ殿!なぜそんなに落ち着いているのですか!!」
「そう見えますか?」
「!?」
アッティラが¥はベーラが引き留めると、足を止めベーラの方を振り向き、手をグーに思いきり握り締め怒りを一生懸命に抑えたまま今までに見た事もない形相でベーラを睨みつけた。
アッティラを止めたベーラは、そんなアッティラ目を正面から見ながら問うと、その目をみたアッティラはその眼光に一瞬身動きが出来なくなり恐怖すら感じた。
「ホノリア王妃はお疲れの様ですね。当分の間部屋でお休みになられるそうなので、誰か連れて行って差し上げてください」
ベーラはいつもの穏やかな顔に戻ると、突然近くにいたメイドに言う。
「何をおっしゃっているの、私は疲れてなどいません」
「カッティラ殿もそう思われるでしょう?」
ドアの方に向かって言うと、カッティラが部屋に入って来る。
実は、少し前から外で話しを聞いていたのだが、入るタイミングが無く外で隠れるように聞いていたのだ。
「そうですね。王妃の疲れが取れるまで部屋で休む様に、健康になったかの判断は私がする。部屋の前に誰か衛兵を付けておけ」
「何を言っているのです!私は王妃なのよ!!」
「ホノリア王妃、ご存じ
とは思いますが、王妃より王の方が上ですよ。王が言っておられるのですから」
「それに、皇女なのよ!お兄様!?」
「・・・」
ファレンスは、自分の妹に対し助け船を出すでもなく、自業自得と言う言葉しか浮かばなかった。
「早く王妃を休ませろ」
カッティラが言うと、ホノリアが暴れる中抱えら他れるようにしてつれていかれていった。
「カッティラ殿、屋敷内と敷地内の捜索をお願い出来ますか?」
「えぇ、空いている者は全員捜索に回して必ずエリシュカ妃を見つけ出せ」
「はい」
従者は急いで部屋をでると、休みの者も動員しての捜索が開始された。