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”やっぱり先ほどの方がルエ様のお相手にたいですわね”
エリシュカは階段を下りながらルエの部屋でのことを思い出しながら一人笑う。
’「ルエ様先ほど外に、栗色の髪と瞳の男性が」
「えっ!?あ、あのその方は・・・」
「心配そうにしておられましたわ。それでは」
そして、部屋を出た。’
一階にある、アッティラの居る居間にもどると、先ほどの男性とアッティラが話しをしていた。
「失礼しました。お話し中でしたか」
「もう話しは終わったので」
エリシュカが部屋をで様とすると、アッティラが必要ない事を伝える。
「ルエ嬢の馬が見つかったとの報告を受けていただけですから」
「そうですか、馬が見つかりよかったですわ。ルエ様も大事を取り休んでおられますが、大丈夫のようですわ」
「そうですか」
「隊長、それでは失礼します」
報告に来た男性は、アッティラとエリシュカに一礼すると部屋を出て行った。
「アッティラ様、あの方はどの様な方なのですか?」
「私の部下ですが?」
「・・・そうですか」
”違う答えだったか?”
「正確にはルーアの直属の部下の一人で、彼の曾祖父が公爵、祖父がその次男、父親がその次男、その長男になります」
「そうですか」
”貴族の家系ではあるものの、爵位を継ぐ可能性はほぼなしと言うわけね。例え優れた才能を持っていたとしても普通に考えれば無理、ましてや武の方で功を立てるにしても戦なんて予定はないし(そんな事になっても困りますけれど)、かっこよく、真面目な好青年、と言うだけではこの国での結婚には障害がありすぎますわ。
それにしても、恋愛なんて羨ましい、わたくしなんて一度も・・・えっ、という事は、初恋の相手が、アッティラ様!子供の頃にするのが初恋ではなく、初めて恋をした時が初恋、つまりある意味初恋の相手と結婚した、と言えるのではないのかしら?”
そう思った瞬間、アッティラの顔を見るとアッティラもエリシュカを見ていたため目が合い、エリシュカのほうは思わず下を向き真っ赤になった顔を見られない様に体ごと後ろを向いてしまった。
アッティラの方は、エリシュカが何か考え事をして色々表情を変えて一人の世界に入っていたのを、特に何も考えず不思議そうに眺めていたら、エリシュカが突然自分を見ると次の瞬間、後ろを向かれてしまい、驚くと同時に余計に訳が分からなかなり動揺してしまう。
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「それで、恥ずかしくなってお部屋に戻っていらしたのですか?」
「・・・」
エリシュカがキンガに首を縦に振り、また顔を赤くする。
「まさか、こんなに恥ずかしいなんて思わなかったわ」
「それは恥ずかしい事ではありませんよ」
「そうなの?アッティラ様の顔を見るととても恥ずかしくて、今までも好きだったはずなのに恥ずかしくなんてなかったのに」
「お嬢様自身がご自分の意志で大公子様をお好きになられたという事でしょう。それは、ご自身で決めた相手ではない方に対してその様に想えるという事はとても幸運な事だと思います」
”政略結婚においては・・・”
「けれど、父上や母上も、兄上も恋愛結婚ではなく、決められた相手との結婚よ。わたくしとは少し違うけれど、恋愛結婚ではないわ」
「そうですね」
「・・・わたくしも父上、母上の様に笑って仲良く暮らせるかしら?」
「エリシュカ様はどう思いますか?」
「わたくしは、アッティラ様と笑って一緒にいたい」