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シャレ家の屋敷に到着。
屋敷の前で出迎えたのは、ルーアの両親、父親は現シャレ家当主、ルーアの妹。
「ようこそ、おいでくださりました」
「ご無沙汰しておりました」
「初めまして、エリシュカ・ヴォールーニです」
エリシュカが自己紹介をするのに実家の苗字ではなく嫁ぎ先の苗字を言うと、アッティラは少々気恥ずかしい感じがして、少しだけ顔を下に向け表情を変えない様に抑える。
「大公子妃様、ルアス・シャレでございます。妻のルギア、娘のルエです」
ルアスは、隣りとその隣りに立つ家族を紹介。
三人の見た目は、ルアンはエリシュカの父親より少し上、ルギアはエリシュカと親子くらい、ルエは、エリシュカと同じくらいの年齢に見える。
「ルギア・シャレでございます」
「ルエ・シャレでございます」
「お疲れでしょうし中へ」
*
部屋に案内され、シャレ家の4人とアッティラ、エリシュカが座る。
「エリシュカ様においでいただけて光栄ですわ。以前オールフェン王国に参りました時にはご不在でお会い出来ませんでしたから」
「そうでしたか。いつ頃ですの?」
「三年ほど前でしたでしょうか。ご親戚の所におられるとおっしゃっておられました」
「三年前、その頃は親戚の所に一年ほど住んでおりました」
”あの時期ね・・・”
”留学とかではなく、一年も親戚の家にいた?”
何か事情がない限り、十代の王族が家族と離れて暮らすなどという事は珍しいのでアッティラは気になったがこの場で聞く訳にもいかず。
「大公子妃様」
「ルエ様、皆様もよろしければ、名前で呼んでください、」
「よろしいのですか?」
「はい。あまり堅苦しいのは苦手なのでその方が嬉しいですわ」
「それでは、エリシュカ様と呼ばせていただきます」
「はい」
「エリシュカ様は、ご親戚のお宅に一年もの間何をなさっていたのですか?」
”そこ、聞くのか!!!!”
心の中で全員が突っ込んだ!!!!
そう普通は聞かない。なぜなら、言いにくい事、世間には知られたくない事で引っ込んでいる事があるから。特にこの場合、格上の人物なのに機嫌でも損ねてしまってはよくないのだ。
だが、ルエはそんな事を気にすることなく普通に聞いてしまった。一瞬、周りの空気が変わった事を感じ聞いた事を後悔したが、それをフォローする言葉など見つけられなかった。
周りはもフォローの言葉が見つからないのと、聞きたいという気持ちが半々でエリシュカの反応を伺う。
「健康的な生活ですわ」
”へっ!!!!!”
予想外の答えに皆あっけにとられる。
「それは、つまり・・・」
「王宮にいますと皆が甘えさせてくれて、ですから健康的になろう!と思ったのですわ。その時に剣術や乗馬、掃除、洗濯、料理を覚えましたの。もちろん、身を守る程度の剣術や馬に乗る程度でしたら出来ていましたのよ。色々覚えながら健康的に体を動かす、王宮にいては続く気がいたしませんでしたから」
「そうでしたの」
王女が掃除、洗濯などと言う事には皆驚いたが、話しの内容が重いものなどではなく、エリシュカの機嫌も損ねていない様なので安心した。
「もしかして、その時に馬が好きになって馬を見たいという事だったのですか?」
「はい。その時からシャレの馬が気に入って、オールフェンではずっとシャレの馬を愛用しておりましたの。ですから、ここに来られるのが本当に楽しみでしたのよ」
「まぁ!それは光栄ですわ」
ルギアが嬉しそうに喜ぶ。
シャレ領は馬の産地で、王侯貴族にも人気が高い。