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ファレンスは、立ち上がりアエリアに頭を下げた。
「陛下!?」
”この方とこんなやり取りなど時間の無駄だ。こっちが精神的にも持たない。であれば、潔く・・・”
予想外の行動にアエリアは驚き、思わず後ずさる。
「この度の事、アエリア様や王家の方々のお怒りはごもっともです。ですが、なにとぞお許しいただけないでしょうか?」
”いきなり自ら頭を下げるなんて!”
「とりあえず、頭を上げてお座りください、ファレンス殿」
「はい」
ファレンスは顔を上げソファに座った。
「もう少し、このやり取りを楽しみたかったですわ」
「御冗談を言われては・・・」
アエリアのからかう様な感じに戸惑いと警戒をするファレンス。
「冗談ではありませんわよ。ご自分の立場をもう少し自覚なされるべきですわ」
「それはどういう意味ですか?」
「このような事をするのであれば、もっとやりようがあったでしょう?それに、こうやってすぐに頭を下げる事は潔いのと同時にご自身の立場としてはどうなのでしょう」
「・・・そうですね」
なぜか説教をされてしまい、戸惑うが言われた事はもっともな事なので納得してしまう。
「ファレンス殿」
「はい」
「では、全て話してもらえますか?」
「はいーーー」
ファレンスはアエリアに包み隠さず話をした。
「そう・・・」
”こちらの集めた情報と同じ、彼の言っていることは信用に値するということね”
「アエリア様、こちらからも聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「答えられることなら」
「なぜこの状況で祝おうと思われたのですか?」
カッティラ大公とエリシュカ王女の結婚は、アエリア様と前大公であるアエリア様の兄と決めた事、それを相談もなく破断にされたら怒るのは当然、アエリア個人的にでも抗議の一つがあってもおかしくはないのだ。
「ワタクシの甥のお祝いですから」
「そうですか・・・」
「釈然としませんか?」
「いえ・・・」
「いいでしょう。文句どころか抗議文でも送ろうかと思いましたし、今でも気に入りませんのよ!」
「・・・」
「けれど、今の所はその様な事をする予定はありませんのよ」
「・・・」
「ファレンス殿」
「なんでしょうか?」
「今ワタクシが願っていることは、あの二人の幸せですのよ」
”どうなってるんだ?アッティラ殿と王女の邪魔をするな、と?二人の結婚を賛成している??”
ファレンスは、話しをすればするほど解せない。
「あの二人が穏やかに過ごせるとよいと思いません事?」
「そうですね」
「ファレンス殿もそう思いになりますか?」
「は、はい」
「そう、幸せの邪魔などする者がいればどこの誰であっても許すことはできません。エリシシュカの家族も同じ気持ちでしょうね」
”つまり、この先ホノリアがエリシュカ王女とカッティラ大公子に手を出させるな、という事を言っているのか・・・ずっと監視でもしろと言いたい訳か。ホノリアを大人しくさせるのは至難のわざだぞ、全く無茶を言う・・・”
「ホノリアとエリシュカ王女が仲良く出来ると良いと思います」
「ワタクシもそう思いますわ」
「・・・」
「・・・」
「お互いが気まずくならない様に周りが気を付けなければ」
「そうですね」
「・・・」
「・・・」
”はぁ、どうしてもはっきりと言わせたいのか・・・”
「ホノリアには、慣れない土地で困らない様に、生活が滞りない様に、それなりのメイドと、執事を付ける予定でいます」
「そうですか。それならば安心ですわね」
アエリアは、ようやく安心した表情を見せた。
「あの、大変言いにくいのですが」
「何ですか?」
「あの・・・」
「他に何か問題があるのですか?」
「はい、それが、ホノリアが結婚をしたくないと言っておりまして・・・」
「なんですって!!!」