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アエリアは帝国に滞在して五日。
その間、未だにホノリアに会えずにいた。
「そろそろ暇になってきたわね」
元々、この結婚についての苦情を気が済むまで言うつもりだったのが、どこの誰かに止められ、それによって冷静になってみれば、エリシシュカ本人はもちろん他の王家の人間の誰からも文句の一つ出ていない事に改めて気づき、結婚を容認するほか無くなってしまいなんとなく気が抜けてしまっていた。
”このままでは埒があかないわね”
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「陛下に取次ぎをお願いします」
アエリアは、ファレンスのいる部屋の前まで侍女と一緒にやってくると、部屋の前にいる侍従に侍女が取次ぎをお願いする。
侍従は、部屋の中に入ると、取次ぎをし戻ってくる。
「来ていただいたのに申し訳ありませんが、今は時間が取れないため午後でよろしければ、との事です」
「では、午後に」
*
午後
二人が向かい合うように座る。
”一体何が聞きたいんだ?今更文句でも言われるのか?”
ファレンスは、あの後何を言われるのかを考えるあまり午前中全く仕事にならなかった。
「お時間を取っていただきありがとうございます」
「とんでもありません。こちらの方こそホノリアの祝いに来ていただいたのにも関わらず、ホノリアの体調がすぐれないため申し訳ありません」
「体調がすぐれないのであれば仕方ありません」
”体調に問題ないのはわかっていますのよ”
「そう言っていただけると」
「それに、久しぶりにこちらに来られて、カロサや皇后様方にお茶のお誘いをいただきまして楽しい時間を過ごさせていただいております」
「妃達もアエリア様と話しが出来て喜んでおりました」
「まぁ、それはよかった」
「アエリア様、お話しと言うのはどの様なお話しでしょうか?」
”本題には入りたくない、が、ほんとーに嫌だが、こんな身のない話ししていても埒があかないからな”
「結婚祝いを渡したいのですよ」
アエリアは、満面の笑みで答える。
「えっ!?」
「そのために来たのですから。それに、そろそろ帰って式への出席の準備をしなければいけませんので、あまり長いをする訳には行きませんでしょ?」
「それはそうですが・・・」
”本当に祝っているのか?”
”疑っているのね、それも仕方なでしょうね。ワタクシがファレンス殿の立場なら疑いたくなるでしょうし”
「妹は、ホノリアは体調の方が・・・」
”このタイミングで会わせたら、アエリア様に何を言うか”
ファレンスは、アエリアの真意がわからず戸惑いながらも、ホノリアに会えば結婚に関すること全てを話しそうな気がして、言葉を濁す。
「けれど、食欲はおやつをいただくほどあるようですし」
”そんな事まで知って!”
笑顔を崩さないアエリアに対しファレンスの背中は冷や汗でシャツが濡れてきていた。
「そんなに食欲が戻ってキテいましたか」
「そのようですわ。お渡しして祝いの言葉程度にでも話しが出来ればと思っておりますの」
”だから、言葉を交わす事自体が不味いんだよ!”
「陛下?」
「失礼しました」
「それも無理なのでしょうか?」
「いえ、それは本人に確認してみなければなんとも・・・」
「そうですわね」
「えぇ・・・」
”何をどこまで知ってるんだこの人は・・・”
「そうですわ!今日のおやつの時間にお伺いいたしましょう」
「えっ?それは、今日は食べるのかどうなのかわかりませんし・・・」
「今日の菓子は、ワタクシが用意いたしましたのよ。オールフェンで人気なので届けさせましたの。ホノリア様も頂くとの話しでしたわよ」
「!?」
のらりくらりと交わしていたファレンスが思わず驚きの顔をしたまま、涼しい顔をしてお茶を口に含むアエリアの顔を見る。
”そこまで計算してここに来たのか?だとすれば、隠すだけ無駄という事なのか・・・?”
「アエリア様」
「何ですか?」
「この部屋には、個人的に来られたのですよね?」
”あら、もう少し粘るのかと思ったけれど意外とあっさりしていること”
「どういう意味でおっしゃられているのかによりますけれど?陛下」
”陛下、か・・・そういえば、さっきからそう呼ばれていたな”