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周りを木々で囲まれ、中央に湖がある場所に銀色の鳥が戻ってくると、銀色の長い髪、髪と同じ色の瞳の色を持った人物の指に止まった。
「ごくろうさま。疲れただろう?ゆっくり休んで」
そう鳥に言うと、鳥は森の中へと飛んで行った。
「二度も手を貸すことになるとは思わなかったよ」
空を眺めながら、小さくつぶやいた。
***
帝国。
ホノリアは、表向きは体調不良という事で自室に籠っているため誰とも会わずにいる。
そんな娘にいら立ちながらも、体調不良という事を信じているカロサ。
結婚をしない、宣言をされ全く眠る事の出来なかったファレンス。
ホノリアの独身宣言をファレンスから聞かされ、同じく眠れなかった皇弟二人。
我関せずの皇后と皇弟妃達。
そして、自分の怒りとは裏腹に、どこの誰ともわからない人物によりカッティラとホノリアの結婚を成就させなければいけなくなってしまったアエリア。
「皆様お待たせしてしまいました」
「とんでもございません」
「まだ、お時間には早いくらいです」
皇后、皇弟妃達にお茶を誘われて皇后のプライベートな部屋にやってきたアエリア。
「ありがとうございます皇后陛下」
「プライベートでお呼びしたのですから、アルビアと名前でお呼びください」
「わかりました。では、アルビア様」
「こちらは、第一皇弟妃のエドギタ」
「はじめまして、エドギタと申します」
「こちらが、第二皇弟妃のエセル」
「はじめまして、エセルと申します」
「初めまして」
挨拶が済んだ所で早速お茶の時間が始まる。
「アエリア様、義妹のために遠い所来ていただいたのに未だにお会いできずに申し訳ありません」
「体調がすぐれないのでは仕方ありません。結婚前で色々とあるのでしょう」
アルビアがホノリアの事を謝ると、アエリアは怒っている素振りなどなくホノリアの事を気遣うフリをして答える。
だが、アルビアが義妹と口に出した瞬間、他の二人の顔から一瞬笑顔が消えた。そのアルビアは、笑顔で穏やかだったが、どこか緊張し探りを入れるようにアエリアの顔をじっと見ながら聞いた。
そんな三人の表情を見逃さすことなく平静に答えるアエリア。
「そうですわ、私アエリア様にお聞きしたいことがありましたの!」
「何ですかエセル様?」
「もし、お気に障りましたら申し訳ないのですが・・・」
「おっしゃってみてください」
「アエリア様は恋愛結婚とお聞きしました。そのお話しをお聞きしたいですわ」
「私も!今でもおしどり夫婦とお聞きしますし、ずっと仲の良い秘訣などありますか?」
「確かに・・・・・・」
*
「兄上どうするんですか!?」
皇帝の執務室に入って来るなり大声で皇帝である兄に怒りをぶつける弟。
「そう怒るな。こっちだって眠れなかったんだ」
「なぜ結婚しなくてもいい、なんて選択肢を与えたんですか?」
「いや、普通しないなんて事を言い出すとは思わないだろうと」
「常識的な子女あれば、とっくにどこかそれなりの人物と結婚してますよ」
「そうだな」
「そうだな、じゃないでしょ!この綱渡りのような状況で・・・それにしても、アエリア様の様子だとオールフェン王家は怒っていない様子だけど、どう思います?」
「そうだな・・・全くわからん。内密にで何か言われるのかと思ってたんだが、何もなしだ」
ガタッ
「兄上達」
ノックもせず入ってきたのは一番下の弟。
「女性陣は、アエリア様を誘って呑気にお茶してますよ」
「そうか」
「このままだと、この平穏が崩れ落ちるじゃないですか、本当になんで結婚しなくてもいいなんて事をいったんです?」
「本当にしない、と言うと思わなかったらしい」
「ホノリアだったら言い出しそうな事なのに」
「だろ」
「そんなに攻めるな!」
弟達に愚痴られ頭を抱え込むファレンス。
「それより、エリシュカ王女の事で情報が」
「なんだ?怒ってオールフェンに帰ったのか!?」
「違う。アッティラ大公子と共に戴冠の儀と舞踏会に出席するという情報が」
「そうか」
「それと、今の所オールフェン王家からカッティラ大公への苦情などもないという事です」
「オールフェン王家は何を考えているんだ?」
「この状況を受け入れ、納得しているようにしか思えん」