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ヴォールーニ大公国公女、オールフェン王弟妃のアエリアは帝国に向かうためにオールフェン王国を立ったのだが、馬車の向かう先はヴォールーニ大公国の端にある街。

街は、国と国を行き来する要所として栄えているため、街の住人でなくても怪しまれることも好機の目で見られることもない街。


その街にある一軒のレストランの裏手に馬車が止まる。

そのレストランは大衆的な店で女性やデートに来ている人達でにぎわっており、その二階は全て個室になっており予約しなければ利用できない。

馬車から降り、店の中へ入ると五十代くらいの店主が待っていた。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。お待ち合わせの方はもうお見えです」


そして、すぐ奥にある二階への階段から登り、一番奥の個室に案内され中に入ると、一人のアエリラと同年代の男性が椅子から立ち上がり頭を下げる。


「お久しぶりねギボン」

「お久しぶりでございますアエリア様」

「まぁ仰々しい、ここはプライベートですよギボン伯爵」

「それでは、久しぶりアリエア」

「お兄様が亡くなった時以来だからそんなに時間は立っていないけれど」

「あの時は、挨拶もまともにできなかったからね」

「そうだったわね」

「それより、お腹すいてないかい?何か食べよう」

「えぇ、そうね」


二人は食事をしながら話しをすることに。


「久しぶりに食べるけれど、美味しいわね」

「そうだね。今日はてっきり王弟陛下も来るものとばかり思っていたのだけれど?」

「そうね、あの人は屋敷で相当落ち込んでいるわ」

「そう、憔悴している姿が頭に浮かぶよ」

「はぁ・・・本当にそうなの」

「相変わらず仲がいいね」

「おかげ様で仲はいいわよ」

「まさか君が王弟陛下と本当に結婚するとはね、あの時は皆が驚いたよ」

「長くは続かないと言う人もいたわね」

「正反対の二人に見えたからね」


アエリアは礼儀正しく美人で話しも面白いいわゆる社交的な人物、王弟陛下は少しふっくらとした体形でどちらかと言うと内向的な方。この二人が政略結婚ではなく恋愛結婚と言う事で、当時貴族のでは話題になったくらいの出来事だったのだ。


昔話しを楽しみながら食事を済ませる二人。


「本題なのだけれど、カッティラの側近のままなのでしょう?」

「まだそうだよ。移動にはなったけどね」

「今はどんな事をしているの!?」

「ひたすら事務作業かな」

「まぁ!そんな・・・」

「仕方ないさ、今周りを固めているのは大公陛下のご機嫌をとる無能な者達だ。陛下と歳も変わらない位で経験もない、雑務もまともにできないような者達だよ」

「学友だった人達かしら?昔からカッティラは友達は表面だけを見て選ぶような所があったから」


ギボンは呆れながら言うと、アエリアはその事に納得するように頷いた。


「だから、エリシュカ王女を相手に選んだの?」

「えぇ、彼女はしっかりしていて自分と言うものを持っているから」

「なるほど、君と前大公がこの結婚に積極的だった意味が解ったよ」

「こんな事になってしまい、彼女には申し訳ない事をしてしまったわ。あの結婚の証の名前はどう細工をしたの?」


アエリアにとっての一番の疑問だった事を聞いてみた。


「羊皮紙に書かれた文字がどうやって書き換えられたのか?それが、よくわからないんだ」

「わからない?あなたでも調べられなかったの?」

「そうなんだ。正確には、はっきりとはわからなかった、かな」

「では、解った事は?」

「今、大公が皆に結婚相手を変えると言い出して、どうすればいいのかと聞いた数日後に今の第一秘書が知恵を出したらしい。それが奇妙な話しで、街の路上に敷物を敷いただけの店に時間が経つと文字が消えてしまうインクが売られていたそうなんだ」

「そんな物が本当にあるの?」

「実際には見てないし、その店の存在すら確認出来なかった」

「では、残りのインクは?」

「所在不明。インクも消えてなくなったらしい」

「そう。そんな物が存在するのなら、’K’の文字だけをそれで書いたのね」

「そういう事になる。本人が嘘をついていなければね」


ギボンすら半信半疑の話しをアエリアに話した。

話しを聞いたアエリアも半信半疑なのだが、信頼できるギボンが調べた結果辻褄が合わなくても、この話しが一番納得の行く答えだったのだろう、と思いこれ以上の事は口に出さなかった。


「アエリア、オールフェン王はお怒りだろう?」

「お怒りだとは思うのだけれど、全く行動しようとなさらないの」

「エリシュカ王女が人質だから?」

「それもあるとは思うわ。けれどどこか違うのよ、王妃様も落ち着いているし、特に何もしない様な気がするわ」

「何も!?一歩間違えば王女は笑いものになるのに?」


アエリアの言葉を聞いたギボンは驚きを隠せなかった。自分の娘がそんな惨めな目にあっているのに、ましてやそれが王女ならば国や王家が笑われている様なもの、それを抗議の一つもしないなんて事は考えられない。


「一つは、エリシュカがアッティラの事を気に入ったのもあると思うわ」

「王女様が?」

「えぇ」

「それは、どうやって・・・つまりは王女様と話したのか?城周辺には密偵が何人も見張っていて外からの接触は難しい、どうやって?」

「まぁ!それじゃまるで牢屋じゃないの!ワタクシの姪になんてことを!!」

「まぁまぁ、抑えて」

「そんな!」

「大人しくしていれば危害は加えられることはないはずだよ。それより、どうやって連絡を?」

「オールフェン王族の力よ。鳥に伝言を託したの」

「ほう、話しには聞いた事があるよ」

「ワタクシも過去に一度ほど見た事があるくらいよ」

「そうか。アエリアには怒られるかもしれないが、アッティラ殿が長男だったらなら、と思うよ」

「そんな事、別に怒ったりはしないわよ。特にこうなってはカッティラは愚かとしか言いようがないわ。似ても似つかない双子。でも、アッティラの方が優秀だったから卑屈に育ったにしても、加護できないわ!」


それから、婚約破棄にしたかったのかなどこの結婚に関わる話しをお互い色々と話した。


アエリアは、紙とペンを取り出し何かを書き始めそれを封筒に入れる。


「ギボン、これお願いできるかしら?」


この数日後、エリシュカ宛に手紙が届けられた。









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