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*****


「王女殿食事の後話しがあるのですが、お時間よろしいですか?」

「はい」


”お食事中に初めて話しかけられるなんて珍しいですわね”



「お時間を取らせてしまい申し訳ありません」

「とんでもございませんわ」

「昨日王宮から連絡が来ました。大公殿下と帝国の皇女の婚姻があり、次の日戴冠の儀、その次の日、結婚及び新しい大公の祝いの舞踏会が開かれるそうです。

それで、私と王女殿に戴冠の儀と舞踏会への出席の招待が来ました」

「そうですか。わかりました」

「えっ?」


エリシュカが少しは動揺するのかと思っていたが、全くそんな様子はなく淡々としていたことに対し思わず驚きの声がでてしまった。


「なにか?」


エリシュカが首をかしげる。


「相手は元婚約者、しかも、大公妃の席には別の人間が座る所に出席しろという事ですよ!」


”しかも、行けばその二人に挨拶をしなければならない。そんな屈辱的な事をさせられるのに平気なのか?”


「そうですわね。けれど、その様な事欠席の理由にはならないと思いますわ」

「それはそうですが」

「それとも、アッティラ様はわたくしがご一緒ではお嫌ですか?」

「そんな事はありません、ですが・・・」

「それでは何の問題も無いはずですわ」

「・・・」


”なぜ平気な顔をしていられるんだ?”


「王女殿はオールフェン王夫妻が来られるのでお会いしたいから無理をして行きたいと言う事ですか?それならば、無理をして行かずとも会える様になんとか」

「もちろん父上や母上には会いたいですわ。けれどアッティラ様、わたくし無理などしておりません。オールフェンの出席がなくとも参ります。

それに、大公と大公妃に悪態をついたり、儀式や舞踏会を無茶苦茶にしようなどとは思っておりません」

「王女殿・・・」

「わたくしは、アッティラ大公子の妻なのですから行くのは当然ではありませんか」


*****


「妻だから当然。よかったな!」

「さっの話しの中によかった要素がどこに入ってたんだ?」


昨日のエリシュカとの話しをルーアに話すと、明後日の方向の答えが返ってきたので溜息を大きくつく。


「少なくとも、エリシュカ王女は結婚に同意している、と言う事だろう?おめでとう!アッティラもいい相手に巡り合えてよかったな」

「何度も言っているが、何の財産もない相手と結婚しても幸せになれるはずないだろう。しかも、もうすぐこの土地からは離れないといけないんだ。その後は、この隊すらどうなるか」

「そうだな。今までは前陛下がここに閉じ込めていてくれたからな」

「そんな時に結婚なんてしてる場合じゃない。自分自身がどうなるのかさえ分からない状況なんだ・・・」

「結婚をしたくない、と言うよりもエリシュカ王女に迷惑がかかるから別れたい、と聞こえるよ」

「ちがっ、そんな事は無い!」


ルーアが冗談っぽく言ってみると、アッティラは慌てて否定しルーアに怒った。


「はいはい」

「ルーア」

「ん?」

「オールフェンには他に王女はいるのか?」

「いきなりだな。分家にはいるが、直径の王女はエリシュカ王女だけだと思うが。どうかしたのか?」

「いや」


”やはり、いないよな・・・昨日のは、分家の王女の話しだったのか?”



昨日 夕食後の話しの時。


「王女殿、落とされましたよ」


エリシュカが椅子に座る時にポケットから銀に金の模様の入った懐中時計が床に落ち、拾いあげようとした時一瞬アッティラの手が止まるが、何事もなかった様に手に取るとエリシュカに返す。


「ありがとうございます」

「いいえ」

「・・・」

「・・・」

「今、見ましたわよね?」

「・・・見たのではなく、見えてしまっただけです!」

「クスッ、ごめんなさい。別に責めている訳ではありませんわ、それにわざと見たなんて思ってもいませんし」

「いや、こちらこそ大声を出してしまい申し訳ない」


エリシュカはアッティラの慌てぶりに驚いたとともに初めて見た姿になぜか笑ってしまった。


「どうぞ」


エリシュカの懐中時計は二重底になっており、落ちた時その底が開いてしまったためアッティラの目に底に書かれた一人の女性の絵が見えてしまったのだった。

エリシュカは、その絵が見えるように開きアッティラに渡す。


「この女性は?」

「アッティラと結婚していたかもしれない相手ですわ」

「それはどういう事ですか?」

「言葉の通りですわよ。もしこの女性が嫁いできていたらどうしました?正直に答えてください」

「どうでしょう?この絵だけで言えることは、笑顔が素敵だとは思いますが、人物像までは・・・ですが、王女殿と変わりませんよ」

「そうですか」


エリシュカは、小さくだが嬉しそうに微笑んだ。



「どうかしたのか?」

「いや、何でもない」

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