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うっかり王子に転生していた!  作者: 御重スミヲ
7/10

7、じわじわ挽回


 呪いを引き受けた特典として、私は一般にはまだ非公開の魔女の書を見ることができるのだが、さっぱりわからん。

 やはり餅は餅屋ってことだな。

 もし魔法陣のようなもので生活魔法のようなものが使えるようになったら教えてくれと、宮廷魔法師長に頼んでおく。


 いや~極上のカバーがされてはいるが、やっぱり便座は温かくしたい。

 当然、温水洗浄機能も付けたい。

 あとはマーガレットの美しい髪のためにドライヤーかな。


「余裕があったら考えてみてくれ」

 どの道自分が作れるわけがないことに気付いて、簡単に仕様を書いて宮廷魔法師長に渡したらえらく感心された。

 すまん、すべて前世チートだ。しかも思いっ切り他人任せだ。


「どうぞお任せを」

 王族だからってなんでもかんでも言うこと聞かせられるわけじゃないが、こうやってチャンネルが合えばそこそこな。

 ……やばい。丸投げ、癖になりそうだ。


 ちなみに私は、訓練するべき時にさぼりまくったせいでろくな魔法が使えない。

 父上が言っていたように、この国の魔法自体まだまだ原始的なんだけどさ。

 それでも魔法のない世界を知ってる身からすると、かなり気分が上がる。


   目くらましの 《 閃光( フラッシュ)

   こけおどしの 《 破裂音(プロセブ)


 ええ、しょぼいですが何か?

 でもこれ、組み合わせるとかなり使えるんじゃ……いわゆるスタングレネードじゃん。

 魔法名はまんま 《フラッシュバン》 でいいか。


 とにかく新魔法、フォーッ!

 いつになくやる気になり魔力操作の訓練を毎日くり返せば、微妙にだが威力も上がってくる。

 実際、学院でも魔法の授業はあるし、まだまだ手遅れではない!と思いたい。


 室内訓練場で苦笑いする近衛兵たちに使ったら、全員しばらく使いものにならず……確かに耳栓して、しっかり目をつぶった私でも結構きつかったからな。

 騎士団長にこんこんと使う場所と相手を間違えないよう諭されたのち、褒められた。


 レッドフォードの親が脳筋じゃない、だとぅ!?

 いや知ってたけどな。でければ王の近衛など務まるはずもない。

 それでもあらためて驚くというか、感心するというか、呆れるというか。


 耳栓の改良とか、ゴーグルの開発などは誰にさせればよいのか。

 とりあえず日頃から耳栓を愛用してるという女官の伝手をたどることから始めよう。

 などと考えていたら……


 いつの間にか魔物討伐に同行することになっていて、まあ接待ゴルフみたいなものだから危険はほとんどないのはわかっているが、心の中では泣いてた私。

 だって魔物、怖ぇ~!


 ん、剣? 振れることは振れるぞ。

 でもせっかくの業物も私が使うとなまくらになると言えばわかるだろう。

 だがまあ、私は王子だ。

 側近もいれば、護衛もいる。


 近頃のレッドフォードとブルームは、少しはお互いを認め合うようになった……のか?

「そんなことで殿下をお守りできるのか?」

「そういうお前こそ、その体を張る以外のことで殿下のお役に立てるのか?」


 少しずつだが側近らしさも増して、私に対して懲りずに突撃をくり返すおかしな生き物を魔女の呪いが発動する前に押し止めたり、それがどういう家の者でその家がどんな状況にあるか、通り一遍のこととはいえ調べられるようになった。


 まあ、一々私がそうするように命じてるわけだが。

 少なくともマーガレットが私とセットでいることには慣れて、最低限失礼な言動はしなくなった。

 いや、高位貴族の令息としてはそれが当たり前なんだけどなっ。


 一方で小動物似を自称する破天荒な同級生にかんしては、一部男子はどうしても惹かれてしまうようだ。

 情けないことに私の側近もそっち側で、毎朝言い聞かせるのが私の日課だ。……まあ、前世の記憶が甦らなければ私もそうだったわけで。


「仮にも貴族の令嬢が、許可なく王族たる私に声を掛けるなどあってはならない。まして体当たりしてくるなど、真っ先に暗殺を疑わなければならない案件だ。レッドフォードは我が盾となり、あのような者を一歩たりとも私や我が愛する婚約者に近付かせてはならぬ。ブルームは引き続きその者や類似の者、またその家族や一族、交友関係について調べ、その動向に目を光らせること!」


 はじめのうちはあきらかに不満そうだったが根は単純というか、頭に棚が一つしない奴らだ。

 わかりやすい課題を一つ与えておけば一生懸命取り組む。

 もちろん褒めることも忘れない。


「レッドフォード、お前のおかげで私は安心して勉学に励める。これからも頼む」

「任せろ! じゃなくて、お任せください」

「ブルーム、お前の情報収集能力はすばらしいな。頼りにしている」

「過分なお言葉、恐れ入ります」


 喫緊の課題は、彼らが自分の婚約者を蔑ろにしてることだな。

「明日の昼食会にはそれぞれの婚約者を伴うように」

 もちろんマーガレットに相談した結果だから、向こう様はすでに承知のことだ。

 いかにも渋々な側近たちの尻を叩き、過去について謝罪させる。


「婚約者を崇め、奉るのだ。私のように!」

 日に一度は言い聞かせること数週間。どこかの世界ではこれを洗脳と言う。


 折にふれて花を贈らせ、菓子を贈らせ、デートに誘わせ、ドレスや宝飾品を贈らせる。

 こんなに側近の面倒を見る王子が世の中にどれだけいるか。

 おかしくないか?と思わなくもないが、マーガレットが「おやさしい」って褒めてくれるので良いことにしようではないか!



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