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うっかり王子に転生していた!  作者: 御重スミヲ
1/10

1、うっかり転生


 なんかラノベみたいだなと思ったのがきっかけで前世を思い出した。

 しがない中小企業勤め(サラリーマン)で冬の早朝凍った外階段でこけて転生するようなうっかり者だが、人生たかだか十三年真綿に包まれるようにして育ったバカ者よりは分別があるつもりだ。


 私……うん、私と言うのがしっくりくるな。

 なにせなんとびっくり第二王子サマだ。

 幼少期に結ばれた婚約者を散々ないがしろにして、学院の入学式で遅れて入ってきたピンク色の髪の少女にうつつを抜かそうとしているチョロい奴だ。


 あぶない、あぶない。

 壇上で新入生代表挨拶を遮られたにもかかわらず腹を立てるどころか、なんて可憐な少女だ!とか胸をときめかせかけた自分にゲロを吐きそうだ。


 まず講堂の重厚な扉を自力でバーンッと開けられる少女が可憐か?

 バタン、バタン、バン、バン……扉が跳ね返りさらに跳ね返るほどの怪力だぞ。

「すみません! 遅れてしまって! 私の席はどこですか!?」

 ミュージカル女優の如く両手を胸の前で組んで一心に私を見上げてくる。

 ピンポイントこえぇ~!


 確かこの学院では平等に教育の機会を与えることを謳ってはいるが、身分を無視していいとは言ってない。

 なんの許可もなく私に話しかけられるのは両親と兄上だけだ。

 しかし只今から教師は除外しようと思う。

 教えていただく立場でありながら、ついさっきまで私はずいぶんと思い上がっていたようだ。


 その一点に限ってはイカレタ頭の少女に感謝しよう。

 私はすかさず側近が用意した挨拶文を頭の中で書き換える。

「……先生方におかれましては私も含め生徒の身分に関係なくお声掛けいただきたく、ご指導ご鞭撻のほどをどうぞよろしくお願いいたします。新入生代表ロビンソン・ドミニク・フィン・ハートランド」

 生徒はもちろん教師陣も面食らった様子で、割れるような拍手とはいかなかったがこんなものだろう。


 私がまるっと無視した女生徒は、慌てて駆け寄った教師によってすでに所定の席へと着かされている。

 すごい不満そうだ! 案内してくれた教師に礼を言った様子もない!

 徹頭徹尾いけずうずうしいとはこのことだ。


 無事入学式を終えて各教室に移動中、側近のおしゃべりに私は頭を掻きむしりたくなった。

「可愛い少女でしたね、殿下」

「フンッ、相変わらず粗野な男だ。あのような風情の者は可憐というのだ」

 やべぇ~。

 私の側近も頭がイカレテル。


 だいたい人参色ならまだしも不良のシャツみたいな真っ赤な髪だし、もう一方に至っては青だぞ青! しかもよりによってスカイブルー寄りの派手な青色だ。

 蜜のようなと形容されることの多い私の金髪はつまり黄色で、三人揃ってお笑い芸人かよ。


 周りの女子がキャーキャー言うのもいじめの一種なんだ、きっと。

「あっ、ごめんなさい!」

 ひでぶっ。

「だ、大丈夫か?」

「怪我でもしていたら大変だ、保健室へ行こう」


 オイッ! 赤! 青! お前ら私の側近だろうが。

 特に赤、近衛騎士団長の息子であることを売りに私の学友になったんだから、王子が体当たりされる前に体を張って止めろよ。

 そして青、何が保健室だ。鼻の下を伸ばしやがって。息も荒いしムッツリか?


 しかし、異常なくらいでかい目をさらにうるうるさせてるピンク頭を連れ去ってくれるなら否はない。

「私は先に行く」

「あ、殿下っ」

「それでは取り急ぎ彼の御令嬢を送り届けてから合流いたします」

 宰相の息子だからって、言い方さえ賢そうならいいわけじゃないぞ。


 まあ、こんな奴らならずっと戻ってこなくて結構だ。

 ただ顔か身分か、まあその両方だろうな。

 私がロックオンされてるうちは虫除けくらいにはなるか。それで向こうに関心が移ればなおよい。

 よし、当分はそれでいこう。


 私は大急ぎで教室に向かい、婚約者の姿を探す。

「マーガレット!」

「まあ……殿下。おひさしぶりでごさいます」


 なぜか制服がブレザーなんだよな。

 でもマーガレット・スピア・フィン・ノードレックは生粋のお嬢様だからそれは正しくカーテシーをする。

 うん、蛙だな。


 私も格下相手に本当ならあり得ないけど正式な立礼をした。うん、ピエロだな。

 しかし、王族としての最高の敬意を表す方法がこれしかないのだ。

「まあ、殿下」

 さっきの殿下呼びより少し熱がこもってるように感じるのは私の希望的観測か?


「マーガレット。これまで本当にすまなかった。どうか愚かな私を許してほしい。そしてできるならばもう一度、私と共に歩むことを考えてみてはくれまいか」

 軽く俯いてきれいに重ねられた彼女の手を見る。

 内心くっさい台詞に悶えてたのも、お願いしますとばかりに片手を差し出してたのも前世の記憶の仕業だ。


 それでも私は真剣も真剣。

 女性に対して悪いことをしたら、人前では恥ずかしいから後でこっそりなんて考える間もなく、できるだけ早くごめんと言うべし。

 これはきっとどこの世界でも変わらないはずだ。


「まあ、殿下。そのように王族たる方が頭を下げてはなりませんわ。私の方こそ至らぬところばかりで、殿下のお心に沿うことができず申し訳のしようもございません。ぐすっ。わ、私が共に歩む方は、殿下しかおりませんのに……もちろん、これからも、ううっ」

 気が強いとばかり思っていた婚約者が泣いている。

 差し出した手にそっと手を添えてくれている。


 よし、私も男だ!

 手をぎゅっと握り引き寄せハグだぁ~!

「マーガレット! どうかこれからはロビンソンいや、ロビンと呼んでくれ」

「は、はい、ロビン殿下」

 殿下はいらんけど、まあそれはおいおい。


 わーっと居合わせた生徒達から拍手が起こって、あ、いつの間にか来ていた教師が主導してるのか。

 さすがは貴族学校に勤めてるだけあって機を見るに敏だな。雇われってつらいよな。

「うむ、ありがとう」

 皆ありがとう! 私たち幸せになります。

 ちょい照れ臭いが、第一関門は突破したぞ。



お読みいただきありがとうございますm(_ _"m)

相変わらず勢いのままに書いてますので、あまり深く考えずに気楽に楽しんでいただけたらうれしいです(*^▽^*)

ブクマや評価などで応援いただけますと、なおのことうれしいですヾ(*´∀`*)ノ

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