第9屋 花火作戦
花火大会当日
「春〜まだ〜?」
リナが一階から呼ぶ。
「ちょっと待って」
荷物を持って部屋を出る。
階段を駆け下り、カウンターにいる、アキさんに声をかけた。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
春達がいなくなったあと、入れ替わるように鈴木さんが来た。
「アキさん、今日の7時からだ。」
花火大会のチラシを出す。
「そうだったね。そう言えば、秀仁はどうするって?」
「あ〜あ、それなんだが…」
「なんで濁すんだ?」
「実はな、秀仁達は帰ったんだ。」
「あ〜そういう事か…」
あっちの世界に帰ったという事はしばらくは帰ってこないだろう。
6時50分
「春〜、そろそろだね。」
「そうだね。」
花火が見やすそうな河川敷に来た。
沈黙を破るようにリナが口を開いた。
「あのさ…」
リナの方を向く。
「いや、何でもない…」
「リナは、アキさんの事どう思う?」
少し驚いたような顔をしたリナを少し面白く思う。
「どうって…」
「私はね、アキさんと出会えて良かったと思ってる。」
「そうなんだ。」
「リナや秀仁と会えても良かったと思ってる。」
恥ずかしくなって空を見上げる。
「私、すっごい田舎でお母さんと二人で暮らしてたから、騒がしい生活は楽しい。」
知らないことを知ること、魔法のある非日常、そのどれもが私は、楽しい。
「私、リナのこともっと知りたいと思ってるよ。」
夜風が二人の髪をなびかせた。
「アキさんの作戦はこうだ、」
手短に話すぞ。
鈴木さんが前置きをする。
「まず、クロの魔法は、現実魔法だ。だから、アキさんの非現実魔法を強化するため、花火の火薬にマナが詰めてある。」
「それで。」
「そしたら、アキさんの魔法は、フルパワーで使えるはずだ。そしたら、こっちの世界でも現実魔法には、負けないはずだ。」
「鈴木さんは、どうするの?」
「俺は、民間人の対応をする。流石に、魔法で死人はまずいからな。」
「頼んだよ。」
「四季秋凪。必ず連れ返す。我々には、お前が必要なのだ。」
今、魔法使いの戦いが幕を開ける。