第7屋 接触
道に迷った。
路地裏を抜けようと思ったらどっちに行けばいいのかわからなくなった。
どっちを向いてもビルしか見えない。
仕方なくスマートフォンの地図アプリを起動する。
「えっ、」
思わず声が漏れた。
地図がおかしいのだ。
ありえない方向に道が出ていたり。
訳のわからない文字で街が記されていた。
漠然とした恐怖が襲ってくる。
(怖い)
「はっ!」
目が覚めた、どうやら夢だったらしい。
窓から朝日が、差し込んでいる。
サッサッと身支度をして下へ降りる。
「おはよう〜」
カウンター席に座っている、リナが言う。
「おはよう」
と言いながら隣に座る。
アキさんが目の前にカップを置いた。
コーヒーの匂いが漂う。
「今日は、目玉焼きです〜」
朝食を並べるアキさん。
テレビから朝のニュースが聞こえる。
「そう言えば、明日花火大会ですね!」リナが言う。
「そうなんだ」
「もちろん行くよね?」
「うーん、考えとく」
「アキさんは?」
「僕も考えとくよ。」
「秀仁君は?」
リナが、キョロキョロする。
「まだ、上にいるんじゃないかな?僕から後で伝えとくよ。」
アキさんと秀仁に行ってきますと言いリナと大学へ向かう。
バス停でバスを待っているとリナが突然変なことを言い出した。
「春、あれ何?」
リナが正面のビルの屋上を指差す。
「何のこと?」
屋上には、特に何かある訳ではなかった。
「あれだよ、あれ、あんなギリギリに立ってたら落ちちゃうよ!」
話からしてどうやら人がいるらしい。
「ほんとに見えないの?」
リナが真剣な顔で聞いてくる。
「うん。」
「もしかして、私魔法に目覚めたのかも!!」
目を輝かせる。
「もしかしたら、魔法使いじゃないと見えないのかも!」
そんなことが或るのと思っていると。
全身が強張った。
その瞬間、夢で見た路地裏にいた。
しかし、一つだけ夢と違うところがあった。
目の前に人が居る。
背の高い黒い服を着た人だ。
「お前の四……」
(パチン)
言葉を遮るように指が鳴った。
「危ない、危ない」
アキさんが目の前に現れる。
「アキさん!」
「クロ、春に手だすなよ。まだ、時間じゃないだろう。」
少しの沈黙の後、目の前が暗くなり、バス停に戻って来た。
「明日……」
「春?どうしたの?」リナが心配そうに顔を覗き込む?
「ちょっと、今日、休む。」
リナを置いて店に戻った。