第2屋 アバウト魔法使い
「おはよう御座います」
1階のお店にいるアキに挨拶をする。
アンティーク調の店内は、心が落ち着く。
「おはよう、春。」
何やら店の準備をしているアキを横目に
「じゃあ、大学行って来ます。」
そう言って扉を開く。
「そう言えば、明日から、バイトの子も来るから仲良くね」アキさんに呼び止められた。
「そうなんですね」
アキさんに返事する。
「行ってらっしゃい」
東京の暮らしは、目まぐるしい。
秒単位で動かないといけない。
バスに乗り込み、一息ついていると、耳を疑った。
何やらお年を召したマダムたちが話している。
「あら、季節屋さんに行ったの。」
「そうなのよ、あそこのアキさんハンサムな方ねぇ」
何やら、季節屋の話をしているらしい。
そんなに有名なのかと思いつつバスを降りた。
大学に着き席に座り講義の準備を終え一息ついていると、後ろから声をかけられた。
「ねぇ、これ知ってる?」
最近、仲良くなった。呉島リナに声をかけられ動画を見せられた。
「えっと、知らないなぁ…」
驚いた、あの日のシャボン玉事件の動画だった。
「この人、何者なんだろうねぇ〜」
魔法使いなのかな?なんて会話をしていると、教授が入ってきて、講義が、始まった。
講義が終わり、帰りの支度をしていると
「そう言えば、春ってどこに住んでんの?」
とうとう聞かれた、なんと誤魔化そうかと考えていると、
「そうだ今日、空いてるでしょ。連れてってよ!」
その勢いに押され、結局案内することとなった。
「季節屋?」
リナが首を傾げる。
店の前の看板の文字を読んだらしい。
「ここの2階なんだよね。」
扉を開くと真っ先にリナが声を上げた。
「あっ!シャボン玉男!!」
店のカウンターにいたアキを指差す。
「えぇ〜なんの話!!」
アキが驚きながら怯える。
「春、誰その子?ねぇ、誰?」
「えっと…大学の友達」
アキに紹介する。
「はじめまして、呉島リナと申します。」
と丁寧に挨拶するリナ。
「ヤバイ人?」
アキが耳打ちする。
「違います。」
キッパリと言う。
「いらっしゃい、アキと申します」
アキも改まって挨拶する。
「あの〜」
リナがアキにスマホを向けながら尋ねる。
「これ見たんですけどあなたですよねこれ?」
アキが一瞬固まったかと思うと、パッと顔を明るくして
「そのとお〜り」
とドヤ顔をした。
「じゃあ、魔法使いなんですか!?」
リナが乗り出す。
「もちろん」
アキが誇らしげな顔をする。
「良いんですか、そんなにホイホイ言っちゃって。」
私が心配する。するとアキが
「良いの良いの、どうせネットにも上がってるし、魔法使いを取り締まる法律も無いんだから。」
そうゆう問題なのかと思っているとリナがカウンターの後ろに貼られているバイト募集のチラシを指差し、
「バイト募集してるんですか!」
目を輝かせながら言う。
「前まではね。でももう一人決まってるから今はしてない。」
とアキが言う。
しかし、リナが
「私を雇ってください。」
そう言って、頭を下げた。
「だから、」
アキが言いかけると
「お願いします。」
リナがもう一度言う。
「私、小さい時から魔法使いに憧れてて」
必死に言うリナの圧に負けアキが
「仕方ない雇ってあげる。」
パッとリナの顔が明るくなる。
「ありがとう御座います。」
「明日また来てね」
こうして、明日からリナの新生活が始まる。
風が強く吹いている真っ暗な空の下ビルの屋上…
「やっと、見つけた」
と、スマホの画面を見ながら呟いた。