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暁に高く翔べ  作者: 秋月真鳥
中学二年生

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5.私のお誕生日はパーティーで

 私のお誕生日、パパは育児休暇が終わったばかりで有休が少なかったけれど、休みを取ってくれた。

 私はパパとママにお願いしていた。


「千草ちゃんと香織ちゃんとお誕生日パーティーをしたいの。お願い!」


 私のお願いにパパとママは考え込んでいた。


「千草ちゃんの一家をお招きして、香織ちゃんの一家もお招きするのはいいけど、千草ちゃんのママは体調は大丈夫だろうか」

「千枝ちゃん、千草ちゃんのときも悪阻が酷かったからね」

「千草ちゃんと香織ちゃんだけをお招きする?」

「どうせなら一家でお招きしたいわ」


 千草ちゃんのママとは仲良くしているが、まだ千草ちゃんの新しいパパと私のパパとママは挨拶をしていない。ピアノ教室で挨拶をしたことはあるのだが、千草ちゃんのパパになってから正式に会ったことはなかった。

 会って話をしたいとパパとママも思っているようだから、一家で招きたいのだろう。


 香織ちゃんの方は、ママ友がいなくなってつらい思いをしていたようだから、もっと親しくなるために家に呼びたい。


 パパとママの考えに私も賛成だった。


 電話で千草ちゃんのママと香織ちゃんのママに連絡すると、快い了承が返ってくる。私のお誕生日は賑やかになりそうだ。


「うっ! おっ!」


 旭くんは七か月が近くなって、ずり這いを始めた。最初は前に進まなくて後ろに進んでしまって苦悩していたのだが、今は前に進むようになっている。

 よく食べてよく飲んで大きくなっている旭くんは成長が少し早いようだ。

 お座りができるのも早かった。


 あまりに欲しがるのでママは旭くんの離乳食を六か月の終わりから二回に切り替えていた。二回の離乳食でも足りずに、離乳食が食べて減ってしまうと泣いてしまう旭くん。

 食いしん坊は間違いなく私に似ていた。


 旭くんはずり這いでセントバーナードさんを追い駆けていた。セントバーナードさんは旭くんに捕まらないように逃げていくけれど、旭くんが泣くと戻ってきて、結局尻尾やお手手を舐められている。

 旭くんは見えるだけでなく触れるようなのだ。

 旭くんに舐められるのが嫌で子犬さんは絶対に近寄らないが、ママのパピヨンさんやパパのパンダさんは近寄って旭くんと遊んでいることがある。


 旭くんにとっては守護獣がいる世界が普通のものなのだろう。


『可愛い小さな生命』

『ほんの少しだけ齧ってやろう』

『齧れば我らも昇天できるだろうか』


 旭くんに寄って来る黒い影は、セントバーナードさんがしっかりと祓ってくれている。噛み付いて散り散りバラバラにして、やっつけていた。

 守ってくれているのが分かるのか、黒い影が近寄ってくると、旭くんは泣きながらセントバーナードさんに近寄って逃げて行っていた。


 旭くんも順調に育っていて、私はとても幸せで、お誕生日のパーティーも開かれることになって嬉しい気持ちだった。


 お誕生日に一番近い日曜日に、お誕生日パーティーは開かれた。

 千草ちゃんは千草ちゃんのママと千草ちゃんの新しいパパと現れ、香織ちゃんは香織ちゃんのママと沙織ちゃんと一緒に現れる。


「こんな席で申し訳ないんですけど、ご相談があって」


 香織ちゃんのママは私のパパに話を聞いてもらっていた。

 夫が結婚してからも元の恋人と別れていなくて家庭を二つ持っていた件に関して、慰謝料の交渉をしたときには香織ちゃんのママは疲れ切っていて、妊娠中でとても強気に出られなかったが、それを後悔しているというのだ。


「事務所の方に相談に来て下さい。いつでもお待ちしています」

「ありがとうございます」


 話を聞いてから私のパパは香織ちゃんのママに名刺を渡していた。

 二つ家庭を盛った挙句、慰謝料まで値切っていたなんて許せない。

 私はパパが香織ちゃんのママの件を解決してくれるように願っていた。


 椅子が足りないので、テーブルの上に置いた料理を取って、ソファやテーブルの椅子でバラバラに食べることになったが、それはそれで楽しかった。


 クラッカーの上にモッツァレラチーズとトマト、海老とアボカドのディップ、明太子のディップを乗せたものをオードブルに、シーザーサラダがあって、ハンバーグがあって、ローストビーフもある。


 目を輝かせた沙織ちゃんの口から涎が垂れた。


「まま! まんま! まんま!」

「今取ってあげるからね。香織も遠慮なくいただきなさい」

「はい。いただきます」


 遠慮している香織ちゃんに声をかけると、少しずつ料理を取っている。

 私と千草ちゃんはこの家でご飯を食べることに慣れているので、遠慮なくお皿の上に好きなものを取っていた。

 私は山盛りになるのに、千草ちゃんは少しずつ綺麗に盛れるのが不思議だ。

 香織ちゃんと千草ちゃんとソファに座って三人で食べる。


 香織ちゃんのママは沙織ちゃんに食べさせていて、私のパパとママは千草ちゃんのママとパパと話していた。


「千枝さんのことはずっと気になっていて。千草ちゃんの担当になったときから、事情は聞いていましたからね」

「このひとが私に思い切って告白してくれてとても嬉しかったのよ」

「僕は初婚ですが、千枝さんのこともあったので、結婚式は控えたんですよ。その代わり、写真を家族で撮りに行きました。今度ぜひ見に来て下さい」


 千草ちゃんの新しいパパとも私のパパとママは話が弾んでいるようだった。


「千枝ちゃんは悪阻は大丈夫なの?」

「少し出てるけど、今は平気。これから酷くなるんじゃないかと思ってるけどね」

「千草ちゃんのときは生まれる直前まで悪阻があったものね」

「今回もそうなのかしら。ちょっと憂鬱だわ」


 まだ目立たないお腹を押さえながら千草ちゃんのママは口とは裏腹に幸せそうに微笑んでいた。


「暁ちゃん、また私を占ってくれない?」

「香織ちゃん、何か気になることがあるの?」

「そうじゃないんだけど……。兎さんがずっと私を見守ってくれていたことを知って、すごく嬉しかったの。お話がしてみたいなって思ったのよ」


 思い切って申し出てくれた香織ちゃんの気持ちを無駄にするわけにはいかない。

 私は部屋に行って、香織ちゃんと千草ちゃんを招いて机についた。


 机の上にタロットクロスを広げて、タロットカードをよく混ぜる。


 簡単なスリーカードというスプレッドで見るつもりだった。

 普段は一枚目から、過去、現在、未来で見るのだが、原因、現状、アドバイスで見る方法でやってみようと考えていた。


 三枚のカードをタロットクロスの上に並べる。

 一枚目はソードの三の正位置だった。

 意味は、痛み。

 知りたくなかった事実を受け入れて、一歩前に進む準備ができたことを示す。


 二枚目はペンタクルの九の正位置。

 意味は、達成。

 周囲の引き立てによって、成功することを暗示している。


 三枚目はワンドの三の正位置。

 意味は、模索。

 上のステージに進もうとしているが、あと一歩後押しを必要としている状態を表している。


『香織ちゃんは目を背けたかった事実を、周囲に信頼できるひとたちができたことによって受け入れようとしている。今は周囲に守られて、助けられて、成功する方向に向かっているよ。でも、まだ助けが必要な部分が多い。そこらへんは周囲の大人や暁ちゃんや千草ちゃんに頼るといいよ』


 兎さんの言葉を香織ちゃんに伝えると、頬を赤くして聞いている。

 その目が潤んでいるのは、感動でだろう。


「やっぱり、兎さんは私を見ていてくれる。私のための言葉をくれる。私にもそんな存在がいたんだわ。嬉しい」


 涙目の香織ちゃんに千草ちゃんがティッシュの箱を渡していた。


「これからもまだ遠慮しちゃうかもしれないけど、暁ちゃん、千草ちゃん、私のそばにいて、アドバイスを頂戴ね」


 私と千草ちゃんにお願いする香織ちゃんは心の底から私のことを信頼している様子だった。


「私、香織ちゃんに守護獣やタロットカードのことを話して、気味悪がられないか心配だったのよ」


 白状すると香織ちゃんは驚いている。


「最初は何を言っているのかと思ったけど、大好きな暁ちゃんの言うことだもの、信じたわ」

「ありがとう、香織ちゃん、私を否定しないでくれて」

「ううん、暁ちゃんこそ、大事な秘密を私に教えてくれてありがとう」


 香織ちゃんと話していると千草ちゃんが笑っている。


「暁ちゃんと香織ちゃんが仲がよくてちょっと妬けちゃう」

「どっちに妬けるの?」

「どっちともかな」


 千草ちゃんの言葉に、私も香織ちゃんも笑っていた。

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