8
「私に魔力があることはわかりました。ルイーズ様から魔法の知識などは教えてもらってはいましたがそれでも実践したことありません。なぜ彼を助けられたのでしょうか。私には杖もなかったし、、何がどうなったかさっぱり、、、」
オレンジの青年を見つめるとティーカップを持って紅茶をすすっていた。お茶を飲む姿も綺麗でやっぱり神々しい。
「実践はないけど、ミアの助けたいっていう気持ちが通じたんだろうね。憶測だけど。使い方もよくわからなくてでも魔法を使おうとして、だから魔力が暴走して魔力切れを起こしたんだ。結果として彼は治癒したけど、無茶はしないでほしい。ミアが倒れたら、ここの王族は血の気がかわる。めんどくさい。」
ルイーズ様はとても楽しそうだ。私も思わず笑ってしまった。
「それは、ご迷惑をおかけしました。」
「今後はしっかり魔法の使い方を教えるから心配しないで。」
「ふぇ?」
呆気にとられる。
魔法の使い方を教えてもらえる?ルイーズ様に!!?
「私の魔法ではもうミアの魔力を抑えられない。羅針盤持たせたら針は狂ったように回って止まらなくなるだろう。それくらい強い。それだったら自分で魔力の使い方も抑え方も学び覚えた方がいい。ノアという前例もあるんだ。きっとミアも魔法使いとして生きていけるさ。」
私は飛び上がるように喜んだ。
こんなに嬉しいことはここ最近ずっとなかった。
これからないとも思ってた。
でも!でも!このあたしが魔法使いとして生きていけるさなんて!!!
なんて!!!なんて!!素敵なのっ!!!
「る、ルイーズ、様、」
涙が出るくらい嬉しかった。
こんなに恋い焦がれた魔法を。私が。
「王妃は私が説得しよう。というか、もうわかっているとは思うけどね。ミアも落ち着いたら話してみるといい。」
私が魔法を好きになるきっかけをくれたのはお母様だった。
お母様は魔法使いだって隠して生きてきたみたいだけど、幼い私にはこっそり見せてくれた。
二人きりの時、魔法で優しく髪を結ってくれて髪にいっぱい花飾りをつけてくれたのだ。
それが嬉しくて嬉しくて。
でも、みんなにはバレちゃいけないと言って普通に生活していたのだ。王妃としていろいろ大変だろうのに、お母様はいつもしゃんとして、そして、優しく、いつも国民ことを考えていた。
幼いながらにもお母様のことをずっと尊敬していた。
そんなお母様が私のことを思って使わない魔法をずっと使ってくれていた。それだけで胸がぎゅっとなるくらい嬉しい。今お母様と喋りたくてしょうがない。早く会いたい。
「それで、魔法のことはもちろん私も教えるが何せ仕事が多くてね。手が回らないのが現状さ。そこでこの拾い物さっ。」
ルイーズ様はオレンジの青年を見つめる。
「名を。」
すると、椅子から立ち上がって軽く礼をした
「先ほどは助けていただき感謝致します。あなたの助けなくば死んでいたでしょう、ミア王女様。私は、リュカ=ベルトランと申します。」
挨拶も礼もしっかりしている。明らかに平民の感じがしない。どこかの貴族か。でもベルトラン家なんてこの国で聞いたことないし、オレンジの髪もみたことがない。
「隣国サバナルから拾ってきたのさ。」
ルイーズ様は意地悪に笑っている。
え!!?サバナル!??
拾ってきた!!??この人を!??
話聞いた感じ死にもの狂いで逃げてきた感じしましたけど!????
「ルイーズ様、任務、、、スパイってさ、サバナルですかっ!」
まさかあの私が嫁ぐ国だとは!
ルイーズ様がスパイで出向くとか戦争絡みだと思っていたんですけど、一体どういうこと。
「スパイなんて人聞き悪いね。どうせノアだろ。散歩しに行っただけだよ、散歩」
ルイーズ様、楽しそう。
いやいや、散歩に隣国まで行かんよ。
というかちゃんと関所通って手続きしないと隣国へは簡単に行けないし。もちろん許可とかとってなさそう。
どういうこと。ノア兄、どういうこと。
「散歩して、人を拐ってきたんですかっ!??バ、バレたら相当やばい気がするんですが、、、」
リュカに目をやるが無表情でどういう気持ちか全く読めない。この人はどうしてルイーズ様についてきたんだろうか。
「人拐いも人聞き悪いね。あんたたち兄妹は。」
ルイーズ様は爆笑している。
いや、笑っている場合ではないような。
そもそも私がリュカを見つけた時死にかけだった。
だとするとかなりの追っ手だったのではないだろうか。
「バレたらというかもうバレバレだね。一部には。でも問題ないさ。もともと戦争を起こす予定だったし」
「せ、戦争っ!??」
舌を噛みそうになった。
「ミアを見初めて自分の妻にしようなどあの馬鹿王子には一万年早いんだよって誰もが思っているさ。ただ、相手は大国でナリターヌも無下にできる相手じゃないからね。平和にいくためにはミアを嫁がせるしかない。国王もイーサンもノアも表面上はそうしてるが、実際は違う。」
「あんたの親子はサバナルと戦争するつもりさ。ミアを守るため。」
すごい立ちくらみがした。
私のせいで戦争になる?国民を巻き込む?
私はこの国の王女として、宿命として、隣国に嫁ぐことを決めたのだ。
本音を言うと大好きなこの国から出たくないし、あの王子もすきじゃないし、隣国に行くことに不安しかないけど、でも自分が行って外交がうまくいくのであればそれがいいと思っているし、それが私の務めだと思っていた。覚悟もした。何度も泣いて悩んで決めたんだ。
なのに。なのに。
何故。どうして。
お父様も。兄達も。
ルイーズ様だってすでに危険な目にあってる。
なんで。なんで。
戦争なんかするんだ!