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当たり一面真っ暗で嵐の前触れかと思うような強い風共に木々が重なって揺れる音がする。
何か出るんでじゃないかと不安でテオの手を握りたいくらい怖いが、姉としてのプライドもあって握れない。
でも足元を見るとノア兄の魔法で明るく照らされてるのでなんだかとっても温かいし不思議と落ち着く。
森の存在は知ってたし、見えていたが入るのはテオも私も初めてだった。
「もうすぐ着くよ。この先の湖の畔がいちお転移先になってる」
ノア兄が先頭切って進んでいく。
何分くらい歩いただろう。足場もそんなに良くないし暗いし怖いし体感では1時間くらい歩いた気がするけど、きっと10分そこらだと思う。
「!!!!」
「キャッ!!!」
「っ!!?」
とその時木々が強くザァーと揺らめく音がしたかと思えば強い突風が3人を襲う。
瞬時に拳を前に出して顔をかがめ、体勢を整えようと足で踏ん張るが風の威力がすごすぎて立ってられない。
強い強い風に押され目も開けることができない。やはり立ってられない。飛ばされる!瞬時にそう思い身構えて、私は記憶を失った。
重たい瞼をあけると白い小さな花がたくさん咲き乱れているところに寝転んでいる。
少し先には小川が流れ、水の流れる音が不安を書き消してくれた。真っ暗な森のはずが明るい優しい日が差していてここ辺りは晴れ渡っている。
先ほどのような重たい空気とは一変、ここは空気が澄んでいて気持ちが落ち着く。
あれ?そういえば私風に飛ばされたような、、、。上半身を起こしてみる。やっぱり痛い。全身痛い。大きな怪我は恐らくないみたいだけど、背中も腰も頭も痛い。
はっとして、辺りを見渡すが、綺麗な景色だけでノア兄もテオもいない。
傍に立っている木にしがみついて立ち上がってみるが、どうやら歩けそうだ。
とにかく二人を探さないと!
とりあえず小川のほうに歩きだしてみると、川の傍に倒れてる人のを見つける。
遠目から見てもノア兄でもテオでもない。
サイズ感的にはテオかと思ったが、瞬時に違うと判断できたのは綺麗な暁のオレンジ色の髪をしていたからだ。隣国に嫁ぐことを知らされた日に涙ながらにみた暁の色を思い出した。
服は破れまくってボロボロで所々手も足も血の色に染まってる。
「大丈夫ですかっ!?」
急いで駆け寄って揺さぶってみるが返事はない。
顔を近づけてみる。
微かだけど息をしてるような、、、!
自分よりも大きいな土や汚れのついた真っ黒な手を握り温かいことを確かめる。
それから、手首で脈をみてみる。よくわからんないけど、動いてる!うん、この人生きてる!!
でも、私になにができる!?
こんな時魔法が使えれば!!!
小さな魔力だが、ルイーズ様になにか習っていたら役にたったかもしれない。小さな魔力だからなにもできないと諦めていた自分を殴ってやりたい。
でも今さら後悔しても遅い。目の前で今にも命の灯火が消えそうな人がいる。助けなくては。私はみんなに甘やかされて育ってるし、もうすぐ隣国に嫁ぐからこの国の人間じゃなくなるけど、でも。でもこの国の王女だ。国民一人さえ守れないのは嫌だ。絶対死なせない。死なせない!!
ドレスの裾を思いっきり破って川で洗い傷口をふく。
王女だけど、テオが剣術を習ってるのが羨ましくて私も習わせてもらっていた。みんな大反対だったけど、それを押し切って習ってた。その時何度か怪我をして、お父様やお母様、兄達、その側近達や侍女長、テオなんて顔真っ赤にしてたっけ。いろんな人達に怒られたものの怪我しててよかったと少し思った。こんな経験役に立つなんて。
見よう見まねではあるがドレスの端切れをきつく縛って止血する。どんだけ経ったのかわからないが、私はとりあえず必死だった。
「うっ、、ぐっ、、」
いきなりの声にはっ!と顔を見るとどうやら意識が戻ったらしい。
足の傷が一番ひどかったので、止血したあとは自分も血まみれだったがそんなのはどうでもよかった。
「大丈夫ですかっ!?」
無理やり起き上がろうとしたので、横からさっと腕を支える。
顔もいちお拭いてみたものの所々切り傷があって痛々しい。
「うっ、、、」
やはり右足が痛むらしい。右足を弱々しい手でぐっと抑えている。
かなり痛そうだ。
なにかできないものか。
薬草とか詳しくないし、止血以外思い付かない。
どうしよう。王女なのに。
目の前に死にかけている人がいるのに何もできないなんて。
どうしたらいいの。何か何かできることは、、、、!
そう思っていると自分の胸元がぐっと熱くなるのを感じた。