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三十章 女神の加護

 

 紋章堕ちは笑った。愉快だった。

 また綺麗なものを見れた。

 とっても綺麗だった。

 そして嬉しいことはさらに続いた。

 もう動かないと思った小鬼の旦那がまた動き出したのだ。

 嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。


 「可愛い可愛い醜い醜悪な小鬼の旦那ぁ、また遊びやしょ――」


 「誰が小鬼ゴブリンだ、このブサイク野郎がああああっ!!」


 「――――ぐおうあっ!?」

 

 紋章堕ちは自分が打撃されたとこに気づいた。


                  ○


 ルゥは見ていた。イケテルがツッコミと同時にあの紋章堕ちを殴り飛ばしたのを。

 棍棒を持つその手は、前に彼が言っていた通り光、輝いている。

 

 「アレは、女神の紋章の加護が発動してるんですか!」


 何故いまさらとルゥは思わず声に出した。

 これまで発動しなかったのは条件が合わなかったのか。


 だが、これなら勝機があるかもしれない。

 女神の紋章の加護、その効果はこの世界の根源たる女神セイブルが作りし物と同じになる、つまり。


 「あの棍棒はイケテルさんにとっての唯一無二の絶対の武器、絶対に壊れない棍棒ですね」


 自分で言っててなんだが、絶対に壊れない棍棒とはつまり凄い固いただの鈍器ということだろう。

 だが、あの紋章堕ち相手にはむしろいいはずだ。

 斬撃も通じない固さに対しては打撃のが効果はあるはず。

 それに、


 「イケテルさんは素人で馬鹿力ですから、下手な剣より確実に殴りつけるほうが相性いいですよね」


                  ○


 イケテルはひたすら殴り続けていた。

 紋章堕ちが右のストレートを放って来ればそれを棍棒で殴って弾いた。

 蹴りを入れて来ればそれも、打って逸らした。

 両手で捕まえようとしてくれば、下がった頭に跳び上がって叩きつけた。

 とにかく、目に入った個所を殴っていく。


 「うおおおっ! 死ね、ボケええっ!!」

 

 紋章堕ちの左からの一撃を弾いて、イケテルは空いた懐に入る。

 両手で棍棒を持ち、横スイングで棍棒を叩きつけた。

 巨体だけあって重いが、このゴブオの形見の棍棒は、何故か手に馴染むしまったく壊れる気配がない。ゆえに振りぬける。

 紋章堕ちの巨体が広場を超えて向かいの通りの家に突っ込んだ。

 そのままイケテルは走って追撃を掛ける。


                  ○


 ルゥはイケテルが紋章堕ちを吹っ飛ばしたのを見た。

 

 「やりたい放題ですね」


 彼は滅茶苦茶だった。

 紋章堕ちの攻撃を避けずに全部あの棍棒で叩き返していた。

 戦闘経験もない彼にできるのはただ殴るだけとは言え、あまりに雑だ。

 それでも押せているのは女神の加護を宿した棍棒のおかげか、ブサイクと引き換えに得た身体能力の高さか。


 今は押している。だが、


 「長くは持ちませんよね」


 このまま戦い続ければ先に力尽きるのは彼の方だ。

 先ほど一度疲労で倒れかけている、少し休んだぐらいでは回復しきれないだろう。

 

 それに彼は自分の体はステMAXと言っていたが、その身体能力でも紋章堕ちのが単純に強い。

 特に体格の差が大きい、あの長い腕はリーチもあり距離取られだすと厳しい状況になるのでないか。


 そして一番の問題はあの赤い紋章が走る体。ダメージは入っているようだが、あれは再生能力を持っている。

 もちろん単純な力の差で戦いは決まらない。あらゆる要因が戦いの流れを決める、けれど。

 

 「今のままじゃ決定打がない、ジリ貧です」


 イケテルに勝機がない、ならば、


 「それを導くのは私の仕事ですね」

 

 ルゥは考える。

 人体の急所への攻撃は通じなかった。雷の紋章も効果がない。

 何故通らないのか、あれはあの肥大化した鎧とも言える体のせいだろう。

 あれが使ったのは生長の紋章、大地に属する紋章で効果は動植物への生長を促す力。

 本来の用途としては、一時的に地脈から力を与える、栄養剤のようなものだ。だが、あの穢れた紋章は暴走して常に栄養を補給し続けている、それゆえ傷を負っても再生する。

 つまり、

 

 「供給源の破壊、起点となった紋章をどうにかすれば」


 供給源なくなればあの身体を保つこともできないはずだ。アレが動いてるのも本人の力ではなく紋章の力があってこそのはず。

 今の彼には棍棒がある。あれならダメージを与えられる、紋章に傷をつければ動作不良起こして止められるはずだ。

 

 (問題はどこにあるか、ですか)


 ルゥはその個所の見当を付けようと、紋章堕ちが吹き飛んだ方向へ目を向けるとイケテルが宙を舞っていた。


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