第三話 初戦闘とポーション作成
視界には中世ヨーロッパの様な景色が広がっている。現代で言えばベネツィアと言ったところだろうか。
ドクターは周りを見渡そうとするが目の前にアイコンやウィンドウが出て来る。
ウンザリしながらも順番に見ていく。
(まず視界の右上にあるのがHPかな?それにHPの下にあるのはMPか。で、この画面がステータスかな?)
NAME:ドクター
職業:学者LV:1/20
10000マネー
HP(体力):20
MP(魔力):30
SP(持久力):10
STR(筋力):3(+1)
AGI(敏捷):15
DEX(器用):10(+4)
VIT(防御力):5(+3)
LUC(幸運):7
スキル:『薬学』『鑑定』『初級薬物作成』
装備
右:木の棒(STR+1)
左:無し
頭:無し
胴:見習い学者の白衣(DEX+4 VIT+1)
腰:初心者のズボン(VIT+1)
足:初心者の靴(VIT+1)
アクセサリー:無し
アクセサリー:無し
アクセサリー:無し
称号:無し
(ふむ・・・マネーというのはこのゲームの通貨単位かな?)
ドクターは考察しながら出ているメニューなどのウィンドウを閉じていく。
そして全部閉じ、周りを見回す。
どうやらここの町は『始まりの町、ルキバル』というらしい。
(これは・・・凄いわね・・・これがゲームなの・・・この場所のモデルはベネツィアかな?昔に家族旅行で行ったことがあったわね)
「さて、どうしたものかね・・・。薬物作成とあるし作りたいものね・・・」
ドクターは考えながらルギバルの中を進んで行く。
町の中はNPCと呼ばれるAIが搭載された人が歩いている。
「あら、これは・・・チュートリアルみたいな感じかしら?」
ドクターの目の前にチュートリアルと書かれたウィンドウが出て来る。
受ける、と選択すると宙に矢印が出て来てそれを追っていく。
「ここは・・・どこかしら?」
気が付くと目の前には「学者ギルド」と書かれた看板が立てかけられたお店の前に居る。
矢印もそこをさしている。
ドクターは中に入る。
「誰かいないの?」
声を上げると奥からのっそりとした動きで白衣を着たお婆さんが出て来る。
「おや?こんな寂れたギルドにも学者が来たのかね?」
「ここは学者ギルドであってるわよね?」
「そうさね。ここは学者ギルドさね」
「ここに来いってチュートリアルで出てたのだけど。どうするの?」
「ここは学者ギルド。学者がポーションを作るまでをサポートする場所さね」
AIのレベルが低いのか微妙に会話が繋がらない。
「じゃあ、そのポーションを作るにはどうするの?」
「町の外にあるヒトポ草とホーンラビットの角を持ってくれば教えるさね。さあ、行った行った」
そしてドクターは学者ギルドから追い出されてしまう。しかしドクターは気にもせず町の外に歩き始める。町の外に出ると視界いっぱいの草原が広がっていた。
プレイヤーもチラホラ見える。
「さて、ホーンラビットってのはどれかしらね」
ドクターはメニューのインベントリという欄から木の棒を取り出す。
「STRは3だけどどうせ序盤の敵だし楽勝よね」
そして二時間後。
「ぜぇぜぇ・・・やっと倒れた。疲れた・・・」
ドクターは滅茶苦茶疲れていた。
レベルが1上がったとアナウンスが鳴るが疲弊したドクターには聞こえていない。
「AGIが高いからホーンラビットに追いつけるけど全然倒せない・・・。まあそこは頑張りましょ。次は薬草ね」
ドクターは草原に隣接している森に入っていき、生えている草に『鑑定』スキルを掛けていく。
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ヒトポ草 状態:良
HPを回復するポーションを作成する為の薬草。
初心者から上級へと幅広く使われる。
ヒトポ草に似たドクポ草という毒草もある為、注意が必要。
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(毒草?もしかしてこれがあれば簡単にモンスターを倒せるのでは?)
そんなことを思いながらドクターは周辺の草を片っ端から集め、ルギバルの中へと戻っていった。
「さて、持って来たわよ。ポーションの作り方教えてくれるかしら?」
「おお、もう持って来たのか・・・!いいじゃろう、教えてやろう。こっちに来るがいい」
学者ギルドに戻ったドクターはお婆さんからあるものを貰う。
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ポーション作成キット 状態:最良
ポーションを作るためのキット。初級から上級まで幅広く使える。
必要な器具を思い浮かべれば出て来る不思議な箱。
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「これを使ってポーションを作るがよい。初級の回復ポーションは水に磨り潰した薬草とホーンラビットの角を入れて混ぜるがよい。」
ドクターは早速始める。
ポーション作成キットは箱型で中から必要な器具を思い浮かべるとなんでも出て来る便利仕様。
その中からすり鉢を取り出す。
そして薬草を適当に入れ、ゴリゴリと磨り潰す。
辺りにはまさに草を潰した、苦い匂いが漂う。
薬を磨り潰し終わったら薬草を別の底の深い受け皿に移し替え、学者ギルド内に有る水道ですり鉢を水洗いする。
お次はホーンラビットの角を投入し、磨り潰し始める。
しかしホーンラビットの角は硬質でSTRが低いドクターには重労働だった。
(こ、これは楽しいわね!研究所の時と違って大変だけど、自分で作ってる感が楽しいわ!)
そんなことを思い作業を開始して数分経た頃ドクターはやっとのことでホーンラビットの角も磨り潰し終わり、粉末状になったホーンラビットの角を磨り潰した薬草の受け皿に移して自分なりに混ぜて
水道の水をトクトク、と入れる。
そして学者ギルド内で無料で無限に配布しているガラス瓶の中に液体を入れる。
そしてドクターは『鑑定』スキルを発動した。
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初級回復ポーション 状態:悪
HPを回復するポーション。状態が悪く、確率で腹痛の状態異常が付く。
初級ポーションの為もの凄く苦い。
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「む~・・・」
ドクターは頬を膨らませ、思案する。
(なんで状態が悪なのかしら?もしかして手順を間違えた?でもそれだけなら悪にはならなそうだけど。いや、もしかしたらそもそもヒトポ草自体の状態が悪かったからかもしれないわね。取り敢えず、次から要検証という事で・・・ん?)
そこで、ドクターにはヒトポ草に類似したドクポ草が目に入る。
「これでやってみましょ」
そうしてドクポ草をヒトポ草と同じ手順でポーションにした。
それがこれだ。
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毒ポーション 状態:普通
毒草を使ったポーション。相手に服用、またはぶつけると相手は毒の状態異常になる。
毒は0.5%/1sの速さでHPが減少する。
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「出来たわ・・・!これで敵が簡単に倒せる!」
ドクターは本来の目的の回復ポーションのことを忘れ、ガラス瓶に入った紫色の毒ポーションをキラキラとした目で見つめていた。