表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

求者

作者: 稀鬼

ああ、世の中ままならないものだ。ほんとにままならない。

「やあお前さん、件のややこのような少女は手に入ったのか?」

何だお前か。手に入っているのならこのような顔はしていない。病気のあの子のために病院にも連れて行った。愛情だって、物だって与えた。あの子のためにならなんだってできる!なのに、なのにあの子は手に入らない!ああ、手に入らないのならもういっそ奪ってしまおうか・・・。

「そんな事すればお前さん、神に目つけられるぞ?」

神?それがどうした?そんなものを怖がっていてはあの子は手に入らない。だいたい、お前も一応神に名を連ねる者であろう?なぁ、死神よ。

「まぁ、それはそうなんだけどね。でも、僕らは末端だからね。自由なんて無いもんさ。だから、君を止めるすべすら持っていない。」

なら、もう消えろ。私は神など恐れぬ。神などに従いなどせぬ。お前も煩いから消えてくれ。

「わかったよ、じゃあ、またね。君とはまた会いたい。」

戯言を。ああ、今から奪いに行くから待ってておくれ。私の子よ。






「ほんとに来ちゃったんだね。」

そこで何をしている死神!私の子から離れろ!

「無理だね。言っただろう?僕らは神の中でも末端だって。上からの命令さ。この子は奪わせない。無理やり奪おうものなら消滅させるって。それは嫌だろう?もう永遠に会えなくなるなんて。だから、頼むから諦めて帰ってくれ。僕はお前さんに消えて欲しくない。」

永遠に会えぬのも無期限で会えぬのも一緒の事よ。いや、この心が残る限り無期限のほうが辛い。だから、私は奪う。

「じゃあ、消すしかないんだね・・・。」

『待って!少しだけ、少しだけ話さして!』

「・・・彼女が奪おうとした時点で終わりだよ。できれば君に負担はかけたくなかったんだけどな。」

『ありがとう!』

私の子よ!私と一緒に行こう!いつまでもいつまでも一緒に!

『それはできないよ、お母さん(・・・・)。』

!何故!?

『だって、死んじゃったから。私とお母さんはもう違う世界の住人なんだよ。だから、ごめんね』

嫌だ!認めない!死んだなんて嘘だ!嫌だ嫌だ嫌だ!

「子供が、こんな子供でも理解して苦しみながらに受け入れたのに、何で親のお前が受け入れてやらないんだよ!そんなんだから僕は心配で成仏もできずに死神にまでなったのに・・・!そんなことしてたらこの子もお前も誰も幸せになんかなれないよ・・・?ねぇ、目を覚ましてよ・・・。」

・・・・・・。

『お母さん、私もお父さんもみんな違う世界の住人なっちゃった。でも、確かにあるものがあるでしょ?私はちゃんと持ってるよ。お母さんとの記憶。お母さんの生きてきた時間からしたらほんのちょっとの時間かもしれないけどそれでもすごく愛してくれた、大事にしてくれた。ちゃんと覚えてるよ。お母さんは忘れちゃった?』

忘れるわけない。とても短かったが私にとってかけがいのないもので、1番大切な記憶だ。

『じゃあ、大丈夫だよ。いなくなってもちゃんと残るよ。私とお母さんとお父さん、みんなとの大事な記憶。それは繋がりであり想いを生み出す。想いは世界を超えて届くよ。だから、安心して?お母さん。」

ああ、そんなに言われたら諦めるしかないじゃない。でも、独りは嫌。

「大丈夫、この子も言ってただろう?想いは世界を超えて届くんだって。大丈夫、僕達の想いはいつも君のそばにいるよ。君の幸せを願って。大丈夫、君は独りじゃない。」

もう、わかったわよ。私もちゃんと受け入れるわ。最愛の二人にこんなに言われてバカやり続けるなんて私には無理だわ。・・・二人共ありがとう。

「『どういたしまして』」








目が覚めた。私は病院のベットの上。家の玄関で倒れていたらしい。発見者は通りすがりの青年。栄養失調と睡眠不足で倒れたらしい。私は涙を流しながら娘と夫の名前を繰り返し呼んでたらしい。そして、病院に運ばれてからもまるで起きるのを拒むように一週間寝続けたらしい。そして、今日ようやく起きたらしい。夫が病死し、その後1年ほどで娘が交通事故に遭い帰らぬ人に。立て続けの不幸に私の精神は壊れかけてたらしい。その頃の記憶はきれいさっぱり消えてるが。何にせよ今は幾分スッキリしてる。どうやら壊れかけて眠り何か夢を見たようだ。記憶をなくしてしまっているし、根本的な原因は変わっていなくて覚えてるのに、これ以上悲観する気にはなれなかった。夢の内容はよく覚えてないが死んだ夫と娘に怒られた気がする。そして、これ以上悲しみ続けたらもっと怒られそうだ。春の風が窓から入り込み私の頬を優しく撫でる。それはまるで励ましのようで、私の気持ちを暖かくさせるものだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ