2
霞色の髪をした女の子の事を思い出していた
何故だろう、あの夢を見てからというもの、片時もそれを忘れる事が出来なかった
僕はその時に感じたフィーリングにずっと囚われていた、
何度も何度もそれを思い返した
いつか必ずまた会える、
今僕が出来ることは、幽体離脱であの世を旅して君に会いに行くこと
そんな根拠の無い不確かなことでも、不思議と自信に満ちていた
そして今日の僕はダンゴムシになった
これはただの例えだが体験したことを一番正しく伝えたい
僕はダンゴムシになった
今日も幽体離脱を試みた
トイレで用を済ませた後、部屋の鍵を締めてカーテンを閉じた
深呼吸して、僧侶が瞑想するように心を落ち着けようとした
ベッドに仰向けになり、目を閉じた
瞼の裏に浮かんでくる模様を眺めていた
まるで風景を写した写真のネガフィルムの様に、何かがくっきりと見えそうになった
これは透視という能力なのだろうか
眠くなるに連れてこういう第六感というか、
超能力めいた感覚が目覚めてくる気がした
そして気がつくと僕はうずくまっていた
仰向けに寝ていたはずだが、何時しか額を地面にこすりつけて、
土下座のような格好をしていた
真っ暗で何も見えなかった
平衡感覚もおかしくて、アルコールを飲み過ぎてふらふらしている様な感じだった
何とか状態を起こそうとしたが、上手く体が動かなかった
うつ伏せになっていたので、僕は呼吸が苦しいと思った
苦しいと思った瞬間、本当に呼吸し辛くなった
窒息したくないので、何とかしようと焦って踠いていたら目が覚めた
あのまま窒息していたら現実の僕も死んでしまったのだろうかと、
ぼんやりとベッドの上で思い返していた
数日が経った
あれからというもの僕は毎日日課として幽体離脱を試みたが、
全く成果と呼べるものが得られずにいた
某サイトも何度か読み返したお蔭で知識としてはしっかり身についていた
継続してみてわかったこと
まず、1つ目の問題
僕はどうもリラックスしすぎて寝落ちしてしまうらしい
これを克服するにはいったいどうしたらいいのだろう
そこで僕は実践中に音楽を、ある程度の音量で流しながらやってみることにした
イヤホンやヘッドホンはあまり好きではなかったので、頭の上方にコンポを置いて音楽を流した
すると実践を始めておかしなことに気がついた
ある一定の眠気に達すると必ず、
あのイルカのような「キュイン」という音が聞こえてきて目がさめるのだ
僕はその一回のトライで意識喪失と「キュイン」を繰り返して60回位寝落ちからカムバックした
毎回聞こえる「キュイン」という音は何だかまるで
脳みそは電化製品で、脳みその電源を入れ直したときに「キュイン」とノイズが聞こえるのではないかと、
そんなことを考えたりした
次に2つ目の問題は1つ目とは逆にリラックスできない時がある
運動不足、というか無理に仰向けになって体を静止させているせいで
体がムズムズする、動かしたくて仕方がない
この問いに対する答えは簡単だ、そう運動すればいい
でもウォーキングやらわざわざ体を動かしに外出したりするのは億劫だ
ということで、入念にストレッチをすることにした
深呼吸とストレッチを一緒にやれば効率的だと考えた
それはすぐに効果が現れた
その日は二度目のトライだったのであまり成果は期待してなかったのだが
僕は音楽を流して、体の隅々までストレッチをした
とてもリラックスして呼吸出来ていることに気がついてすぐにベッドに仰向けになった
しばらくして体の感覚が薄くなってきた
手や足の感覚がなくなって、自分は今どんな体制で寝ているのか曖昧になってきた
僕は自分が金縛りにあっていることに気がついた
金縛りにあっているときに特有の何か、電気的なもので体を縛られているような感じがした
僕は某サイトに出会ったお蔭でこれには予備知識があった
金縛りは幽体離脱の前段階で、
ここで焦って興奮してしまうと目が覚めてすべてが台無しになってしまう
僕は金縛りになって次の段階に行けたとうことで少し興奮してしまったが、
何とかリラックス状態を取り戻すことに成功した
だがこの後不運にも、金縛り中に僕の体は震度4程の揺れを観測した
こんな時に地震なんてまずいと思い、また踠いて覚醒しようとした
金縛りを無理やり破るのはかなり苦しい
手足の指先から段々と可動範囲が広がり、やっとの事で金縛りから抜け出ることが出来た
後々気がついたのだが、この時起きた地震はあくまで夢の中だったということだ
ニュースでも全く報道していなかったし、
金縛りの次の段階で起こる現象だったのだ