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Web拍手小噺「春です/紅丸と白旺」

連載中にweb拍手に置いていた小噺です。



~春です~



 それを見つけた時、

 あるいは、それが見つかった時。

 部屋にはなんともいえぬ空気が漂った。



「お絲、それは別に――」

「別にいいのよ!」

「――俺が、え?」

「旦那だって男の方だし、長屋の男連中がみんなしてこそこそやっているのは、私だって知っているものっ」

「お、お絲?」

「だからいいのよ、別に。旦那がどんなものを所持していようと、だって私には関係がないのだもの」

「いや待て、お絲。それは俺のものというわけではなく、皆に頼まれて置いておいただけであってだな」

「みんなですって?」

「女房殿の見えぬところにと考えた結果が、俺の部屋というわけで」

「だったら、もっと隠すべきだわ! こんな、紅丸の目につくようなところに置いておかないでよ!」

「それは、たしかに、悪かったとは、思うが」

「思っているのなら、きちんとするべきなのよ! 旦那のばか!」


 手にしていたそれを、えいと投げつけるように放ると、絲が部屋を出て行った。

 ひらりひらりと、舞い落ちる花びらのように、一枚の春画が空を漂い、地へ落ちた。



**********

ブツを佐田彦に提供したのは、直太郎です。

長屋の男たちからじゃないんかーい。




*----------*


~紅丸と白旺~


挿絵(By みてみん)



「にゃーにゃー」

「にゃーではない、白旺さまである」

「あくおーさま」

「誰が悪か、小僧め」

「こぞーじゃなくて、べにまるなの」

「紅丸だと? はっ、小豆洗いの分際で偉そうに。貴様なぞ、小豆丸で十分だ」

「あずき、おいしいよ」

「こやつ、やはりただの阿呆ではないか」


 尾を垂らして呆れる白旺に、絲は声をかける。


「ごめんね、白旺。紅丸ったら嬉しいみたいで」

「俺様という尊敬にたる存在が出来たことが、そんなに嬉しいか」

「私も嬉しいよ」

「はーっはっはっは。隠しきれぬこの気高さが恨めしいのう」


「猫、飼ってみたかったんだよねぇ」


 高笑いを続ける雷獣の耳に、絲の呟きは聞こえていなかった。



参加した企画が、冬から春へと移りゆく季節を描くものだったのに、ちっとも「春」っぽくない。

ということで、作中には入れる場所のなかった小ネタをweb拍手に上げておりました。


紅丸と白旺もまた、作中に入れられなかったエピソードです。

このコンビが互いをどう呼ぶのか。

本筋では、いきなり小豆丸と呼んでいるのですが、前段にこんなやり取りがあったのですよ、と。

そんなおはなしでした。

かわいいは正義。


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