超短編 春風は吹かない
冬の名残り風は、冷えきった指先みたく、温もりを探している。
甲高い鳥の声、伸びゆく雑草。春はこんなにも胎動しているのに、僕のところへ風は吹かない。
春はみんなに平等に来るはずだろう。冬は僕を、春から遠ざけようとしている。ふっ、と引き摺り込まれたくなって、僕は無理矢理前を向く。融けかけの泥雪より、五分咲きでいい、桜を見たい。
玄関扉を振り返っても、そこには何も無い。いってきます、そんな言葉ももう必要ない。
冬の名残り風は、冷えきった指先みたく、温もりを探している。
甲高い鳥の声、伸びゆく雑草。春はこんなにも胎動しているのに、僕のところへ風は吹かない。
春はみんなに平等に来るはずだろう。冬は僕を、春から遠ざけようとしている。ふっ、と引き摺り込まれたくなって、僕は無理矢理前を向く。融けかけの泥雪より、五分咲きでいい、桜を見たい。
玄関扉を振り返っても、そこには何も無い。いってきます、そんな言葉ももう必要ない。
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。