閑話~ナターシャ~
またまたナターシャさん。
短めです( ̄ε ̄
私の名前はナターシャ・エルブラン。
下級貴族の一人娘だ。別に没落したとかではなく、元々下級貴族なのだ。
両親は出世欲はなく、今回私がメイドとして奉公に出されることになった時もかなり抗議していた様だ。
何せ勇者様のメイドとして奉公に出る理由は、勇者様との間に子を授かる為だ、というのだから。
ただ、私にも出世欲というものは基本的にはない。
両親のように、贅沢できるとは言わないが生活に困ることなく優しい家庭を築くことが出来ればいいな、などと考えている。
しかし、私も年頃の女の子なのだ。今年で18歳になる私も物語のような恋物語には憧れがある。
そこに来た勇者様のメイドとして働くという話に私は少し期待を持っていた。
その日私は、勇者様が召喚されるという事で城に呼び出されていた。
私と同じ理由で集められた下級貴族の少女が沢山いた。
部屋に集められ、そこに待機すること約1時間ほどで勇者様は召喚され、私たちは謁見の間へ移動する。
誰が誰にお仕えすることになるかは完全にランダムで入った時順番で割り当てられるらしい。
いざ謁見の間に入り、私がお仕えすることになる方の前に行く。
見た目からして私と同じ位か少し下くらいかな?
黒目黒髪で、身長は平均的。顔は悪くは無いが特別言い訳でもない。
しかし、私は武術や剣術などには精通していないが、体付きや雰囲気が、父が所有している騎士団の方達と少し似ているような気がした。
その方は私からステータスを見るための結晶を受け取ると、自分はステータスを確認せずに周りをずっと観察しているようだった。
結晶を渡すと私たちは謁見の間から出るよう指示されていたのでその後のことは分からないが、王女様のお話が終わったあと部屋へご案内することになった。
部屋の事や、ベルの事を伝え部屋を退出する。
すると、すぐにベルが鳴らされた。
初めての私の仕事となるので気合を入れて急いで部屋へ向かい、扉をノックした。
どうぞ、という声が聞こえたので部屋に入ったのだが、勇者様は少し驚いているような顔をされていた。
(どうしたのだろうか、私は驚かせるようなことをしたのだろうか? 失礼を働いたとかでなければ良いが)
どうやら特に用事はないが呼んでみただけ。そんな感じがした。
そんなこんなで1日目が終了した。
不満があるとすれば何故か勇者様は敬語で私と会話する、ということくらいだった。
明日からは敬語を無くさせるためにご主人様と呼ぶようにしよう。
2日目。
私がたまたまいつもより早い時間に目が覚めるとご主人様が部屋を出たらしい。
私は何か用があるのかと思い急いで支度して後を追う。
どうやらご主人様は毎朝剣の稽古をおこなっているようだ。
私と同じくらいの歳だと思うのにこんな時間に起きて毎朝やっているのだから純粋に凄いと思った。
そのあと私はその剣の稽古を見学していたのだが、
その稽古の動きには無駄がなく、誰かと対峙しているかのように動き回るご主人様は、美しいと感じた。
剣の稽古を終わらせたご主人様は私の名前を訪ねてきた。
(しまった、最初に名前を言っていなかった)
私は名前とさり気なく今回奉公させて頂くことになった理由を告げた。
ご主人様は大変驚かれた。
その驚いている姿はどこか可愛らしく思えた。
しかし、ご主人様にその気はないようだ。残念なようなどこか安心したような複雑な気持ちだ。
私には魅力はないのだろうか?
その日は、朝から訓練があり昼からは座学があるという事だったが、私たちはすることも無く非常に暇だった。
ただ、座学が終わった後、ご主人様にベルで呼ばれ部屋に向かうと少し話をしないかとお誘いを受けた。
これはご主人様と距離を縮めるためのチャンスだと思い、少し強引に横に座る。
ちょっと焦っているご主人様の姿が可愛いな、とまた思った。
メイドの間では有栖川様が人気だ。顔をかっこよく優しい。確かに王子様のような方のらしく、私も憧れないというと嘘になる。
しかし、私はこのご主人様も素晴らしいと思っている。顔がとかそういうことではない。
言葉にするのは難しいが、不器用ながらも所々に優しさがあったり、剣を握っている時の雰囲気がカッコよかったり。父と少し似ているのかもしれない。
まだ会って間もないが、私はご主人様ともっと仲良くなりたいと感じていた。
無理矢理横に座ってお話をさせて頂いたお陰なのか、ご主人様はとうとう私に敬語を使うのをやめた。
そして、なんと呼び捨てで呼ばれた。
呼ばれた時は嬉しい気持ちや、ドキッとした気持ちが少し表情に出ていた気がする。恥ずかしい。
それからの毎日は、たまにお部屋に呼んでいただき紅茶を飲みながらお話をしたりと、非常に充実していたと思う。
2ヶ月経った今でも私はご主人様に仕えている。
今も人気があるのは有栖川様ではあるが、私はそれでいいと思っていた。
ご主人様の良さを知っているのは私だけであり、私はこれからもご主人様のために仕え続ける。
この城に奉公することになった時考えていた物語のような恋物語は無いかもしれない。
でも、それでも今のご主人様との毎日は、私にとって刺激的であり楽しいものだ。
これが恋へと発展していくのかと言われるとわからないが、もう少しご主人様と一緒にいたいと私は思っている。
ちょっと更新がおくれました。
明日は普通の本編!!