8話
ナターシャさん好きなんです、すみません。
明日明後日はストック作れないので、放出するばかり。
25日は全力で引き篭もります!!笑
マリーンによる講義が終わり、俺達は一旦各々の部屋に帰ることになった。
2時間程部屋で待機するよう言われて俺たちはメイドに連れられ部屋に戻って言った。
この時知ったのだが、この世界の時間は地球の時間同様60分刻みらしい。唯一違うのは1日は25時間あるらしい。
1時間など誤差のうちな気がする。
自分の部屋に戻り、俺はナターシャさんを呼んでいた。
「ナターシャさん、温かい飲み物が欲しいんだけど何かありますか?」
「温かいものですか、少々お待ちください。紅茶をお持ちいたします」
「この世界にも紅茶とかあったんだー! いいね、お願いします!」
「かしこまりました」
ナターシャさんはそう言って部屋から出ていった。
10秒ほど待ったあと、ノックの音が聞こえる。
「どうぞ!」
「失礼します。紅茶をお持ちしました」
部屋に入ってきたナターシャさんはポットとカップが乗った台車を押していた。
(早いなっ!?)
俺が温かいものが飲みたいという事が分かっていたかのような迅速さだった。
ナターシャさんが優秀なのか、この世界のメイドさんが優秀なのか。
慣れた手つきで紅茶を入れてくれるナターシャさん。どうせなら一緒に飲むのもいいかもしれないな。
「ナターシャさんも一緒にいかがですか?」
「いえ、メイドが仕えるべき主人と一緒にお茶をするなどできません」
「そうなんです。いいじゃないですか、これは主人からの命令ということで! ちょっとお話でもしながら飲みましょう!」
「命令、ですか。かしこまりました、カップを持ってきますのでお待ちください」
ナターシャさんが部屋を出てから10秒、扉をノックする音がする。
「どうぞ。」
「失礼します、お待たせいたしました」
10秒でも待たせた事になるのだろうか。
そのカップはいったいどこにあったのか、隣は確か違う男子の部屋だった気がするのだが。
そんな事を考えている内にナターシャさんは自分のカップに紅茶を入れ終わっており、ソファーの前に立っている。
「...…? 座らないんですか?」
「はい、このままで結構です。」
あぁ、あれか、またメイドと主人とかいうやつか。
「大丈夫ですよ、座ってください。立ったままでは話もしにくいですし!」
「ありがとうございます。では失礼します。」
と言いながら俺の隣に座るナターシャさん。しかも密着態勢。
「あ、あのー、ナターシャさん?なぜこんなに近くに?」
「?? 座っていいと言われましたので。」
確かに言ったけど。
しかし、ナターシャさんは無表情だが非常に美人だ。それになんかいい匂いもする。
俺も男だし健全な高校生だ。手を出す気はないが性欲だってあることにはあるのだ。
「正面に座って貰った方が話がしやすいなー…...なんて。」
「主人の正面に偉そうに座るなんて失礼なマネはできません」
この状態は失礼には入らないのだろうか?
この世界基準的なやつでは失礼ではないのか?わからない。
「わ、わかりました。ならこのまま話しましょうか」
「はい」
ナターシャさんは何故か譲る気が無さそうなので仕方がない。決して美人に密着されている状況が嬉しいからではない。
「え、えと、ナターシャさんはスキルとかには詳しい?」
「いえ、私も下級とはいえ貴族の端くれ、それなりの教育は受けておりますが魔法やスキルに関してはそれほど詳しくはございません。申し訳ありません」
「あ、そうなんですか、全然構いませんよ! 聞いてみただけなので!」
「ご主人様はどのようなスキルをお持ちなのですか?」
「え、えーと……剣術スキルと武術スキル……かな。」
「既にお二つもお持ちなのですね。普通に生きてきた人間ではスキルは1つもっていればいい方なのですが、ご主人様は元の世界では何かしていらっしゃったのですか?」
「剣道って、この世界にあるのかな? まぁ剣術みたいなものですよ!」
「元の世界でも剣術をされてたのですね。それでですか。今朝行っていた訓練での剣捌きは素人目ではありますが、美しいと思いました」
「美しい、ですか。そんな事は初めて言われましたね。なんか嬉しいですね、ありがとうございます!」
剣道もそうだが、剣術なんて突き詰めれば人殺しのための技だ。それを美しいと言われたのは初めてであり、純粋に嬉しかった。
「あの、関係の無い話であるのですが、1つよろしいでしょうか」
「はい、いいですよ?」
「私に敬語を使うのをやめていただけないでしょうか?呼び捨てにしてもらって構いません」
あー、それか。
こだわりなのか?それともそういう決まりでもあるのだろうか?
「んー、何となく敬語になっちゃうんですよねー。何か理由でもあるんですか?」
「はっきりとした理由がある訳では無いのですが。何か距離があるような気がして」
こんなにも密着しているというのに距離などあるのか?
「物理的な距離ではありませんよ?」
心が読めるのか!?
「心が読めるわけではありません。そう考えているのだろうなと思っただけですよ。」
2回も俺の心と会話のキャッチボールをこなしたナターシャさんはそう言った。
「距離、ですか。んー、わかりました。いや、わかった! これからは出来るだけ敬語はなくしていくよ!」
「わがままを言って申し訳ありません。ありがとうございます」
「いやいや、これくらいならワガママとも思わないし、全然構わないよ!」
ワガママというなら詩織の方がもっと凄い。
こんなものはワガママの内にははいらないだろう。
「んじゃ、改めてよろしくな、ナターシャさ...…ナターシャっ!」
俺は呼び捨てが何となく恥ずかしくなり誤魔化すようにニカッと笑いながら挨拶をする。
「はい、よろしくお願いしたします、ご主人様」
いつも無表情なのであまり感情が分からないが、その時のナターシャは少し嬉しそうにしているような気がした。
俺とナターシャがお互いに一歩歩み寄っていた頃。
「マリーンさん、勇者様達はいかがでしたか?」
「はい、王女様。皆様素晴らしいスキルをお持ちでした。数名報告になかったスキルを持っている者もおりましたが、1人スキルの開示をしていなかったもののスキルも把握しました」
「おぉ、そうですか!! どのようなスキルを持っていたんですか?」
「はい、それが実は。私も今まで1度も見たことも無いスキルなのですが、どうやらユニークスキルのようで、「魔王」と書かれておりました...…」
「なっ!? 魔王ですって!? で、では、あの者が新たな魔王ということですか?」
「いえ、おそらくは違うかと思われます。私どもが召喚の儀を執り行う前から魔王はこの世界に誕生していたはずですので...…ですが、もしかすると魔王に近しいもの、もしくは邪神から送られた手先かも知れません」
「邪神の手先。そうですか、ご苦労でしたね。今後も警戒して観察していてください。なにか変化があればすぐに報告を!」
「かしこまりました」
それだけいうとマリーンはサッとその場を後にした。
その部屋に1人残った王女は独り言を呟く。
「邪神の手先、魔王に近しい者。どちらにしても危険ですね。早急に排除するか、もしくはこの国から追放するべきかもしれませんね」
話がちょっと進展した!!
気がする。
足りない辻褄は合わせていくスタイル。