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第百三十九幕 ~キール要塞の攻防 その弐~

 「王国軍め。たかがこれしきの兵でキール要塞を落とそうとは笑止千万。ここが貴様らの墓場と知れ!」


 城壁からそう豪語するのは、ソドム大佐。天陽の騎士団の中でもかなりの荒くれ者として知られている。

 ソドムは弓を放つ紅の兵士たちに向かって怒鳴り声を上げた。


「動きが遅い!」


 手を止めた紅の兵士は不満げな表情で振り返る。その姿を見たソドムは手にしていた指揮棒をへし折った。


「誰が攻撃の手を止めろと言ったッ!」

「──失礼ながらここの持ち場は紅の騎士団に任されている。余計な口を挟まれては困りますな」


 そう口にするのはラムザス中佐。紅の騎士団に所属する老兵である。


「貴様、上官たる俺に意見するのか?」

「──恣意的に紅の騎士団を貶めるような発言をされれば、たとえ上官であったとしても止めざるを得ないでしょう」

「恣意的だと?」

「違いますか? 私からはそう見えたのですが?」

「貴様ッ!!」

「──そのへんで止めておけ」

「あ゛? こ、これはグラーデン元帥閣下!」


 慌てて敬礼するソドム。ラムザスも即座に敬礼を行った。紅の兵士の憤る様子からある程度の事情を察したグラーデンは溜息をこぼした。

 ソドムは勇猛ではあるがどうも紅の騎士団を敵対視するきらいがある。

 

「貴様も大佐なら下らん感情は捨てて目の前の戦いに邁進しろ」

「わ、私はただあまりにも奴らが腑抜けた戦いをしていたので…」


 ソドムは必死になって弁明を始めた。それに対してラムザスは反論することなく直立不動の姿勢を保っている。


「そうか。では同じことをローゼンマリー大将にも言うがいい。紅の騎士団が腑抜けた戦いをするとな」

「そ、それは…」

「どうした? ローゼンマリー大将もここにいる。俺が許すから意見具申に行ってくるがいい」


 ソドムの顔から次第に血の気が引いていくのがわかるくらいには動揺していた。そんなソドムをグラーデンは睨め付ける。


「以後同じことをするなら貴様の任を解く。わかったらさっさと持ち場に戻れ」

「はっ!」


 ソドムは慌てて持ち場に戻っていく。今のようなことはそれほど珍しいことでもなく、昔から紅と天陽の騎士団は互いにライバル視しているところがある。おのずと切磋琢磨するので大抵のことは放置しておくのだがさすがに今は戦争中である。そもそも大佐の身分で分別もつかないとは呆れるよりほかなかった。

 グラーデンは大きな息を吐くと、今も直立不動の姿勢を崩さないラムザスに目を向けた。


「すまなかったな」

「こちらこそ無用な醜態をお見せし、誠に申し訳ございません」


 ソドムが噛み付いたのが紅の騎士団の中でも温厚で知られるラムザスでなければ、ことが大きくなっていた可能性は否めない。これが血の気の多い紅の将校であれば最悪騒乱に発展していた可能性もあるだけに、


(今一度戒めておくか……)


そう思っていた矢先、ローゼンマリーがふらりと現れた。

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