第1話
趣味で書き始めた行き当たりバッタリな不定期更新のどうしようも無いものですが皆様の暇つぶしになれば良しと思います。
この世界[テルス]は魔物が跋扈し魔法が身近にあり人の命がやや軽い世界。
ある時、魔物を統べる者”魔王”が人類圏に戦いを仕掛ける。戦いは長く長く続く。幾度となく、何代も何代も人類は指導者を変えながらも戦いは続いた。
戦いが始まり約一千年が過ぎた時、人類に6人の英雄が現れる。6人の力は凄まじく遂には魔王を打倒し戦いに終止符をうった。
英雄達はそれぞれの道へ別れ1人は新たに国を興し皇帝に。1人はその皇帝の補佐に。1人は自らの国に戻り王に。1人は全てに中立のギルドの長に。そして6英雄最強と言われた1人は忽然と行方を消しそれを残った1人は探し世界を回る。
ー魔王討伐から3年、世界は再び動乱へ動き始めるー
☆アル
「はぁ、はぁ、はぁ、、、」
あたしの名はアル、聖ハミルトン王国の端にあるムジ村に住む猟師でムジは3年前に出来たダルク帝国との国境にほど近い位置する小さな村だ。
村の北には壮大な森が広がっていて名を”母なる森”と言われている。森の浅い位置は動物や食べれる植物が豊富で実りが多い。だが深く立ち入ると魔物や危険な植物が多く生きては帰れない。
そんな2面性を持つ森を人々は二つの意味で母なる森と呼ぶ。実りは解る、、、だがもう一つの意味が奥地から帰ってくる者がいないから母親からの抱擁のように離れられない者って意味とは猟師のあたしには笑えなかった。
勿論あたしはそんな奥地に行ったことは無いし行くつもりも今の今までなかった、こんな事になるまでは、、、。
つい先頃帝国が王国に戦線布告も無しに国境を越えて攻めて来たと国境警備の兵士がボロボロの状態で村に来たから知り得た話しで当然村は騒然となったが村長は慌てずあたし達に言ったんだ。
「何が有ったがは分からんがかの帝国も英雄の国、占領はされても反抗せねばさほど酷い目には合うまい。村娘は隠さにゃならんが無体にはせんじゃろう」
村長の願いははっきりと裏切られた、、、帝国の兵士達は直ぐにやって来てそのまま一気に村を蹂躙し始め村中に悲鳴が響き渡りあっという間に地獄と化した。
男はみんな殺されていき女子供は全て捕まった。あたしは父さんと村外れの猟師小屋にいたお陰で身構える時間があったけど既に周りは囲まれて逃げ道は無かった、、、。
父さんが命懸けであたしを逃してくれなきゃあたしも捕まってただろうけど唯一帝国の兵士が居なかったのが母なる森だけだったせいで今必死に森を走ってる。余りにも必死になり過ぎた所為でかなりの奥地に来たんだから馬鹿としか言いようがない。
「はぁ、はぁ、結局早いか遅いかの違いか、、、」
気づいた時には再び囲まれている、、、今度は兵士では無くオンネエイプに。あたしと同じ位の身長で灰色の猿魔物で何でも食べる悪食、しかも人間の女は犯されながら喰われるらしい。
「ギャウギャウ!」
一際大きなオンネエイプが群れの奥から出てくる。恐らく群れのボスなんだろうけど父さんに繋いでもらった命、タダではやれない。
あたしは背中に背負った短弓を手に取り腰の矢筒から矢を出す。弓を構えながら果たして通用するか考える、、、きっと致命傷にはならないかなっと冷静に思う。所詮この短弓は動物用で魔物用では無いしあたしの力では難しい。
「ギャフゥフゥ〜」
あたしを舐るように右に左にウロウロするボスエイプ、、、興奮しているのが分かる。これ以上睨み合いは我慢出来ない。
「気持ち悪いんだよ、変態猿!」
素早く狙いをつけて矢を放つ。矢は一直線に奴の目へ飛んでいく、、、が、奴は軽く腕を振るうと矢ははたき落とされていた。
「くっ!まだまだ!」
後ろにステップしながら連続で矢を放つけど全てあしらわれる、信じられない。
その一瞬呆然としたのがいけなかった。気付いたら後ろから別のエイプ2匹に肩を掴まれてしまった。
「は、はなせ!はなっ?!あぁぁ!」
凄まじい痛みが体をはしり同時にボキャっと鈍い音が耳に届く。掴まれた肩の骨を握り潰されたみたいで皮膚から血が吹いているのが見えた。そのままボスエイプの方に放り投げられたあたしを奴は思った以上に優しくキャッチする。
「ギャギャギャ〜」
あまりの痛みに力の入らないあたしは抵抗も出来ず奴はあたしの服を破り捨てる。悔しさで涙が溢れるが何も出来ない。
あたしは覚悟する。屈辱にまみれて死ぬなら自ら死を選んだ方がマシだ、舌を噛み切ろう。
その時急な衝撃と共に視界が変わる。ちょっとした浮遊感の後目の前には醜悪な猿の顔があったのが今は人間の顔がある。
珍しい黒髪に真紅の目、あたしより年下っぽい薄めな綺麗な顔した男の子。彼はゆっくりあたしを地面に降ろし”何処からか”シーツを出しかけてくれた。
「あんたみたいな人がなんでこの森に?」
「あぁ、、、」
不思議な安堵感からまともに声も出せずあたしの意識はそこで途切れた。