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withマーメイド  作者: asanj
9/31

王室ニュースで婚約肯定!?

「しないよ、皇女と結婚なんて!」

 王子のはっきりした否定の言葉を聞いて少し不安は和らいだ。私に向けられたまっすぐな目は、嘘なんてついてないって分かる。でもじゃあこの記事は一体何?

 私は森番のリビングで立ち尽くしてた。パソコンの画面と王子の顔を交互に見る。字の読めない私でも、王子とよく分かんない女の人がハート型で囲まれた画像からは不穏な匂いを感じる。


 工房を出た後山小屋に来た私たちは、森番のもてなしを受けてた。美味しかった、森番の手製パンケーキのアイスのせのハチミツがけ。満足した私は手洗いに立って部屋に戻ろうとしたら、ドアの外まで王子と森番の声が聞こえたの。

『なにこれ!なにこのニュース記事』

 王子は慌てた声で森番に尋ねてた。その後に森番の落ち着いた声が続いた。

『へえ王子、遂に久留米里亜の皇女と婚約ですか。それはおめでとうございます。外交の大きな一歩でもありますね。株価も上がり……』

 それを遮って王子は疑問をまくし立てる。

『なんでなんでこんな記事が出てんの、これ王室庁長官のインタビューとかあるじゃん、なに肯定してんの長官!おれの知らないとこで何が進んでるの』

『いや、私も初めて知りました。いつも森にいてネットも毎日は見ないので、何も……』

 今度は私が遮ったよ。

 なんの話?て問うように、音を立ててドアを開けた。


 そうして、王子は否定した。

 ほんと?

 うん、本当に王子の知らない間に運ばれたことみたいだ。でもこんな記事出されちゃって、この後どうするの。

 不意に王子が前屈みになりながら立ち上がる。 

「腹いたっ」

 そのまま扉の向こうに消えて行った。トイレかな。その姿を見送りながら、私は背中から力が抜けるのを感じた。そのままソファに座った。座ったっていうか、落ちたって感じ。森番が控えめに気遣う様子を見せた。

「どうぞ」

 そして、元々用意してた所だったのか、さっとお茶を出してくれた。

 なんか寂しい気分だな。王子の身内に対しても、身分がどうのっていうので一線を引かれる、それでいて臣下……森番にも、王子の連れってので距離を置かれる。

 ああ耳鳴りがしてくる。根拠はないけど、海に潜れば治るって気がした。泳ぎたい。遠征したい。姉たちと。

「いい香りでしょう。熱いうちに」

 我に返った私は、森番の勧めるお茶をすすった。ホントだいい匂い。なんかのハーブ?おいしいよ。少しほぐれた心で私は森番にお辞儀をした。いろいろなお礼を込めて。

 王子が静かにドアを開けて部屋に入ってきた。少し休みますか、と森番に尋ねられて、首を振る。

「ありがと。でも平気だよ。おれ腹弱いくせに肉とかアイスとか好きだから、いつものこと」

 私はクスっと笑ってしまった。ホントだよね、て思って。

 笑ってる場合じゃない?そうだよね。

 王子は、宮殿に帰ろう、て言った。一刻も早く誤解を説かなくちゃ、て。

「善は急げだよ」

 外に出ると日はけっこう傾いてきてた。帰り道には昼間よりオレンジっぽくなった木漏れ日が差してて、景色は日差しと影で縞々になってた。

 王子の顔も、縞々だよ。

 私はすごく、たまらなく、そんなどうでもいい事を王子に伝えたくなった。

 突然、私の方を見た王子が張り詰めてた顔を崩した。

「イレミ、縞々。あ、おれもか?」

 やっぱり王子最高ね。ふふ。

 ん?なんか私さっきニェミって呼ばれたような。山小屋で、青ざめてた時に。

『ニェミさんお茶どうぞ』

って。

 え、なんで森番、私のホントの名前知ってるの。

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