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withマーメイド  作者: asanj
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自由な恋人たち

「やっぱ、ファンタジー要素に抵抗薄そうな子供から手懐ける?」

「手懐けるって、なんか人聞き悪くないか、ニェミ。おれらただのスパイだって」

「もう王子お人好しだね。スパイは立派に裏の職業だから、人聞きなんて気にしてられないの」


 おれたちは今、人魚だ。自由奔放に地球上の海から海へと泳ぎ回る……というわけにもなかなかいかないようで。

「あなたたち、まだ試行段階なんだから、一年間は近場にいなさい」

 魔女っ子にそう言われ、この辺の海に留まってる。

 そして更に言われた。

「こっそり遠泳しないように、私の手伝いしてもらうからね」

 それで、こうやってスパイまがいの活動してるわけ。


* 


 スパイっていうのはー、以前、私よりも前に魔女っ子が人間にしてあげた元人魚の人の追跡調査してるってこと。なんでも、人間になってからも定期的に状態を報告するって約束したのに全然来ないらしくて。

 その人、しょっちゅう浜遊びには来るんだけどなかなか一人にならなくて、声をかける隙がないの。今日は、小学校高学年くらいとおぼしきその人の子供らだけで浜辺を散歩してるのに出くわした。

「大人と連れ立ってる時に人魚が姿現すよりはいいでしょ?」 

「じゃ、軽くいってみる?」

 人魚と人間の架け橋になりたい、ていう私たちの気持ちとも合致してるこの活動。魔女っ子に強制されて始めたような感じだったけど、なんだかんだでやりがい感じちゃってるかも?

 そうそう、姉たちも遠くに行っちゃって暇だしねー、ていうのもあるよ。王子と過ごす時間とは違う女子タイム。それの喪失?


 あの日懐かしい虹色の鱗を取り戻した私は、魔女っ子に尋ねたのよ。姉たちは?彼女らの体調は?て。魔女っ子の答えはと言うと。

「ブラの貝殻を小さいサイズに取り替えた、てブウたれてたよ」

 痩せたってこと?それ魔女っ子流の『安心しろ』って意味なのかな。

「文句言う元気はある、ということね」

「消耗の峠は越した。髪も一週間もあれば肩に届くくらいになるだろう」

 私が、早く顔を見に行こう、てひとりごちたら、魔女っ子が止めたの。

「あの子たちはそれぞれ別々に遠くへ行ったよ。刑期が終わったら帰るだろうけど」

 なんと姉たちは島流しになったっていうじゃない!なんで?何をしたっていうの、姉たちが。

「勝手に人間の前に姿を現したろう。まだ人間だった王子の前に」

 人魚界では人間の前に現れることは御法度。それでも魔女っ子の口添えで刑が軽くなったのだという。端に追いやられてる魔族でも、法的な場なんかでは昔の発言力が残ってるみたい。

「助けたわけじゃないよ。先代と違って私は人間と人魚の友好推進派なんだよ。魔法の鍛錬してるのも、先代つまり母親への発言力強めて時代を変えていくためだし!」

「……へぇー。いろいろ考えてるんだ」

 私が感心の声を漏らすと魔女っ子は、喋りすぎたとばかりに気まずそうな咳払いをして姉の話に戻った。

「ここに残ることもできたんだけど。彼女らが遠くへ行くことを望んだ」

 え!自分から?

「残る条件が、鱗が灰色に変わるってものだったんだよ」

 ええ!それは究極の選択肢だわ。特に姉たちにとっては。

「で、みんなどこに行ったの?」

「北極と南極と、台風が発生する熱帯の海」

「大変そう……」

「あ、あのおとぼけた肌弱い子、三番目だっけ?は、日焼けに弱いから南極希望して通ったみたいよ。なんでも南極男子の間では金髪女子が大人気だとかで、それ狙いもあるらしい」

 そう、少しホッとした。ふふっ南極のカレでも連れて帰ってくるかな?

「それから北極に行ったのは、黒髪の派手な子。二番目だっけ」

 そう、あの子がそんな地味な所でやっていけるのかしら。

「なんか、決まった途端、どんな動物の毛皮を羽織るか一生懸命考えてたよ。私のツヤ髪と錦の鱗にマッチするのは何かしら、て」

 新たなファッションを開拓して持ち帰って広めたりしそうじゃない、いい感じね。

「で、一番上の子は熱帯ね。もう分かるでしょ」

「え、熱帯魚と遊泳、とか?」

「……熱帯魚を自分の足元に色別に整列するようしつける、とか言ってたな」

 なかなか高いハードル設定したね。でもある意味、曲がったことが嫌いな長姉らしいかも。帰ったら面白い悪戦苦闘談が聞けそうね。

 はあ、そうかあ。

 寂しいけど、私もそろそろ姉離れしなくちゃ、かもね?



 おれとニェミは、子供たちの視界に入るような浅瀬まで泳いだ。もちろん今回の人間への接近は魔女っ子の特別許可付き。

 お、やつらこっちを見てるよ。ニェミが浜に向かって手を振る。波打ち際まで走り寄った彼らは手を振り返してきた!いい感触。

 笑顔が見える。おーい、て言ってる。男女一人ずつ、多分きょうだい。

 白波の立つ辺りまでニェミとおれが近付くと、きょうだいは足を濡らして走り寄ってきた。

「ホントに?ホンモノ?」

「人魚!?」

「ばか、ちゃん付けなよ!ね、人魚ちゃん!」

「うわー、キレイ」

 子供たち、はしゃぐはしゃぐ。いえーい、おれら人気者。

「どうやって人魚になったの?おにーさん」

 お、鋭い質問だな!ふふふー、と笑うニェミに女の子が、貝のブラジャーどこで売ってるの?と聞いてた。

「あ、ニュースが来た」

 男の子がスマホを取り出した。それ懐かしいなあ、ておれが思ってると、男の子は画面を見てへえー、て感嘆した。何のニュース?と聞くと、

「王室ニュース!お父さんお母さんが王室ファンでさ、だから僕たちも女王様好きなの」

 それ、それ、うちのかあちゃん!て、喉まで出かけた言葉をおれは飲み込んだ。それで、見せて見せて、て言ってスマホを渡してもらった。

「え、女王が王制廃止宣言?」

 おれが叫ぶと女の子に貝ブラを触らせてたニェミがこっちを振り向いた。そして、あの女王が?と呟いた。おれはニュースを読み上げる。

「そして次の総理大臣に立候補!?」

「まあ、らしいって言えばらしいね」

 待てよ待てよニェミ、更にだよ……

「同時に15歳年下の一般男性と交際宣言!?」

「え?見せて」 

 ニェミががぶり寄ってきた。画面をスクロールして……二人とも仰天する。この相手の写真、

「森番じゃん!」

 そして、女王のコメント欄にはこう書かれていた。

『船の事故で行方不明になってる息子がどこかで生きている。そう信じることによってこれからも国の為に尽力しようというやる気が出た。それはこの人のおかげです。』

「生きてた……!」

 おれとニェミは同時に叫んだ。子供たちは不思議そうに見てる。

「生きてたね……」

 ニェミは嬉しそうだった。おれも、自分でもびっくりするくらいほっとしていた。親子らしい情の通い合いはあんまりなかったけど、更に正直重圧すら感じる存在だった女王だけど、やっぱり安否は気がかりだった。

「二回も船の事故で危ない目にあって二回とも助かるなんて、なんて強運の持ち主。わが母ながらさすがだね」

 おれは安堵を冗談で茶化した。

 それにしても、森番と女王っていうのが全然結びつかないな。でもよく考えたら森番の中身はニェミのお父さんだから、同年代で気が合ったのかな?

 

 

 私たちは、ありがとうと言って子供たちにスマホを返した。そして、次はいつ海に来るかを聞いて、またねと言って浜を離れる。

「今日は種まきとして、このくらいね」

「そうだね。めでたいニュースでおれちょっと動転してるし」

「ねえ、お祝いにこっそり遠泳しちゃおうよ」

「いいよー!」

 大きな青い海を沖へ沖へ向かって泳ぎ出す私たち。


 お父さん、なかなかやるね……

 ほんと、フリーラバーズ。


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