名乗り出たり、できない。
赤紫の光が一帯を照射する。人々の上気した顔が浮かび上がる。暗闇が戻ると同時に破裂音がなる。
強行で始まった、船上の花火大会。
闇で目が眩んだのは一瞬だけだ。すぐに目が慣れ談笑する紳士淑女の姿が視界に再登場した。たいていはグラスを持ち、時には肴をつまむ者、小皿から何かを口に運ぶ者あり。
カジュアルパーティーだから礼服やイブニングドレスは纏わずとも、皆スーツやドレスでめかしている。薄手のストールをはためかせている婦人や前髪を風に持って行かれしきりに手を生え際へ這わせる男性がいる。
時折吹き流す空気の束に小粒の水滴が混じる。
自分はもうどれくらい生きたのか。
いや、よく考えてみたら、人間の平均寿命分もまだ生きてないのか。
なのに、その間にもう三つの人生を歩んでる。
こんなにいらないよ。でもしょうがない。自分は魂を売った男なんだから。だからしょうがない、その時々の立ち位置に馴染み、受け入れていく。歴史の傍観者になるしかない、何も感じないで。
と、決めたのに。願ってる。いつの間にか願ってる。願うという欲が出てきてる。
暗い顔は見たくない、と。
悲しみは見たくない、と。
娘のそれも、息子のそれも。
そして、思う。
なんてバカなんだ、お前らは。
娘よ!息子よ!そうお前だ。
言えない。
言いたい。
歯がゆい。




