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神界サーガ(仮)

十五夜

作者: 巫 夏希

 相も変わらず、俺は毎日を過ごしている。


「なあ、リト。今日は十五夜だよな?」


 神事警察副署長というまあまあ偉い立場にあるのにその性格が災いして碌に恋人も出来ない姉ちゃんがなんか言ってきた。


「余計なこと言い過ぎなんだよ。……で、今日は十五夜だよな?」

「ああ……。そうだったな。ススキを出しとかなきゃなあ」

「……十五夜はきちんとしなくてはいけません。古くで言う中秋の名月」


 めぐみさんがなんだか慎重な面持ちで言ってくるのとその隣で署長である恵梨香さんがうんうんと頷いていた。なんだお前ら、お笑いコンビか。


「……そうなんですかね?」

「そうだよ。十五夜は旧暦の八月十五日を指すんだけど、なんで中秋の名月って言われるか解る?」

「……なんででしょうね? だって八月ったら夏じゃないですか」

「違うのよ。昔は春を一~三月、夏を四~六月、秋を七~九月、冬を十~十二月として分けていたの。今とはひとつ時期がずれてる感じね。……それはさておき、秋の真ん中だから中秋の名月と呼ばれるようになったの。八月は秋の真ん中でなおかつその真ん中の日だからね。まあ、今は新暦でちょうど今時期になるんだけど」


 ははあ、……それで?


「それと中秋の名月を鑑賞するってのは日本が原点じゃないからね。そのへんが大分思いがちなんだけども。中秋の名月を鑑賞するってのは、昔の中国、ちょうど唐の時代からあって、これが遣唐使で平安時代の貴族に伝わっていったの。昔は歌を詠みながら中秋の名月を眺めた、とも言われてる」

「物知りですね」


 とりあえず俺は買っておいた月見団子とススキをスーパーの袋から取り出した。


「あれ、リトくんは買っちゃう派?」

「いや、最近はつくる方も少ないんじゃないですかね? 俺の家でも昔は作ってましたけど、ここ数年は確か買ってましたし」

「うぅん……。まあ、特に変わりはないからいいんだけどね……」


 めぐみさんはなんだか腑に落ちない表情をするんだが、俺はなんだか悪いことをしてしまったのだろうか?


「中秋の名月ってのはカミサマに収穫を感謝するために供物をするんですけど、最近それの意味がだーれも理解してないんですよ。今はとりあえず団子とススキを供える……っていうだけ伝わっちゃった感じで」

「まあ。そのへんは否めないですね」

「ははあ……」


 とりあえず何を言っているのかさっぱり分からないが、つまりは十五夜はカミサマも関係しているからあんまり杜撰にしちゃだめだってことかな?


「まあ、間違ってないよね」

「勝手に心読むなし」


 碧さんは何を勝手に……! 俺の心を読んで楽しいの?!


「だって、楽しいよ? 除霊した幽霊の身体をオカズにしてあんなことやこんなことをしてるんでしょう……」

「ほう、碧さん。何をしていたか私に詳しく聞かせてくれないかな」


 あっ、やばい人間が反応してしまった。


「おっけー。その代わり」

「ガリガリ君コーンポタージュ味」

「のった!」


 おいおいちょっと待てよ! あれって生産停止してなかったけか?! なんでそれを報酬に出来るの?!


「公務員なめんな」

「とてつもなく黒い発言が出た! ……じゃなくてそれを言うのはやめろ!!」

「だって、もう交渉成立したもん。あっ、それとも18禁のエロゲーの話でもしておく?」

「やめろ、やめてくれ……!」




「あー……なんだかなぁ……」

「まぁ、こんなのもいいんじゃない?」


 後に聞こえる喧騒を聞こえないふりして、私はめぐみとお茶を啜る。


「ちょっと署長さんなんとかしてよ!!」


 私を呼ぶ声が聞こえるけど、関わったら面倒なので無視する。だって今日は十五夜ですよ? 月くらい眺めてもいいじゃない。


「ああ……いい満月ねえ……」


 空を見上げると、きれいに円を描く満月が輝いていた。



おわり。






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