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乙女ゲームのエンディングを迎えたヒロインは、貴婦人になれない。

掲載日:2026/09/23

初投稿です。

ふわふわな設定なんで、ん?って思ってもスルーして頂けると嬉しいです。

私はリリス。乙女ゲームのヒロインとして伯爵家の令嬢に転生したのよ。

乙女ゲームの世界に転生した私はヒロインとして王国の貴族子息たちが通う学園にて攻略対象の一人である王太子様と恋に落ちて、見事ハッピーエンドを迎えることができたの。

悪役令嬢は転生者じゃなくて私の知る乙女ゲームのままのキャラだったし、攻略対象も周囲のモブキャラもみーんな転生者じゃなかったわ。だから前世で散々やりこんだ乙女ゲームだったのもあって攻略はとっても簡単だったわ。

無事悪役令嬢は断罪されたし、私は王太子様の新しい婚約者となれたのよ。うふふ。

さあこれからは未来の国母として王太子様とともに国を盛り上げて内政チートってやつをやってやろうじゃないの!と思っていたのだけれど…。


その前に私には大きな壁が立ちふさがっていたのよ。


「リリス王太子妃候補様?このお身体はあまりにも醜すぎます」

「リリス王太子妃候補様?なぜそんな歩き方をなさるのです?」

「リリス王太子妃候補様?貴女様は完璧でなくてはなりませんよ?」


未来の国母として今の私は王太子妃教育を受けているの。周りのメイドや侍女たちは酷いのよ。私のことを何もわかっていない甘ったれた令嬢だって責めてくるの。

仕方ないでしょう。だって今まではただの伯爵令嬢だったんだもの。一介の伯爵令嬢が王太子妃教育を完璧に熟せるわけないでしょうに。

それにね、王太子様と婚約してから王太子妃候補としてのドレスを着ることになったのよ。そこまではいいの。とっても綺麗で豪華なデザインのドレスは、あんな醜悪な悪役令嬢じゃなくて私みたいなヒロインが着るべきだと常々思っていたんだから。

でもいざ着てみるとドレスが私の身体に合ってなかったのよ。デザインが私の雰囲気に合っていないという意味じゃないの。ドレスのサイズが私に合ってなかったのよ!


初めて王太子妃候補のドレスを着た時には周囲のお針子やメイドたちに溜息を吐かれたわ。


「リリス王太子妃候補様?失礼ですが、王室伝統のドレスを美しく身に纏えてらっしゃいませんね。これでは王太子妃候補様の候補の文字がとれるまで何年かかるか分かりませんよ」


はああ?なんなのこのメイドたち。私に対して失礼すぎじゃない?


そう思っていたら一度ドレスを脱がされてコルセットを宛てがわれたのよ。


「リリス王太子妃候補様?失礼ながら貴女様は王室に嫁ぐに相応しいお美しいお身体をお持ちでいらっしゃらないようですので、本日よりドレスを美しく着られるまでお身体をお直しいたします」


そう言われてコルセットを思いっきり締め上げられたのよ!伝統のドレスを美しく着るために身体をドレスに合わせるなんて馬鹿じゃないの?ドレスは身体に合わせて仕立てるべきなのよ!


「リリス王太子妃候補様?伝統のドレスを美しく身に纏うことはこの国の王族の勤めでございます。まさか、ドレスのサイズを誤魔化すといった『不正』を行おうと思ってらっしゃいませんよね?貴女様は王太子殿下と共に、前王太子妃候補様に『正義』の鉄槌を下したお方ですもの。そんなことはなさいませんよね?」


そんなことを言われて、私の言葉は封殺されたのよ。

コルセットで締められながらドレスを着たら先程よりはマシな姿になっていたけどそれでも綺麗に着こなせてなかったのよ。


「ではリリス王太子妃候補様?ドレスの着付けも終わりましたので王太子妃候補様の執務室にご移動をお願いいたします」


その言葉によって似合わないドレス姿のままお城を歩くことになったのよ。教育係だというオバサンたちが複数人で私を囲いながら執務室まで歩かせたのよ。


「リリス王太子妃候補様?歩くときは背筋を真っ直ぐに」

「リリス王太子妃候補様?口を開けて歩かないように」

「リリス王太子妃候補様?何時如何なる時も笑顔でいるのです」


口々にダメ出ししてきたのよ!うるっさいわね!オバサンたちは黙ってなさいよ!これでも必死に歩いてるのよ!


コルセットで締められながら歩かされていると、まるで水中で息継ぎなしで無理矢理泳がされているかのような息苦しさを感じるのよ。それにドレスも無駄に貴金属を使った豪華仕様だからとても重いのよ。そして将来貴婦人たちの頂点に立つから履かされた靴のヒールもとっても高いの。周りの支えがないと歩くことすらままならないのよ!


「国の頂点に立つことはそれだけ不便を受け入れないといけません。不便だからこそ周囲には常に大勢の使用人に傅かれる存在であるのが王族というものです」って言うのよ!


口うるさいオバサンたちに苛々しながら執務室にようやく辿り着いたら、今度は王太子妃に相応しい学力を身につけるための勉強だって言ってきたわ。


学力ならもう十分身に付いてるっつーの。これでも学園では王太子攻略のために勉強していたのよ?ドベだったら王太子様には見向きもされないって前世のゲームの攻略であったから必死に頑張って学年で10番目以内には入るようにしたわよ。


「リリス王太子妃候補様?それでは今からテストを始めます。現時点でどれだけの知識を持っているのかを確認させていただきます」


解かされたテストの問題は難しかったわ。学園では習ってない問題ばっかり出たのよ。

何よ、「◯◯地方と王国全体で収穫される小麦の収穫量の差はどれぐらいか?」なんて。そんなパッとしない田舎の地方の小麦の量なんてどうでもいいじゃない。

「××戦争時の軍事費と敗戦国から回収した賠償金の差額は?」なんて知らないわよ。そんなもの国が勝ったぐらいで終わる話じゃないの。お金の問題なんてこの場合騎士団の仕事じゃないの。


ほとんど答えられずに終わったテスト結果を見てオバサンたちは溜息を吐いたのよ。


「リリス王太子妃候補様?貴女様は未来の国母となるのです。知らない、分からないとおっしゃることは立場が許しません」


そう言って執務室の壁一面にある分厚い本の数々を見ながら全部覚えるように言ってきたのよ!無理に決まってるじゃない。こんな量覚えきれないわよ!


勉強をサボろうにも常に複数の教育係や使用人に見張られているからサボれないの。でも休憩なしで勉強なんてできやしないわ。だから私オバサンたちに言ってやったのよ。「休憩なしで勉強なんて非効率的だわ」って。そうしたらオバサンたちは目を吊り上げて怒ってきたのよ!更年期じゃないの、あの人たち!


「何をおっしゃっているのです。リリス王太子妃候補様には何もかもが足りていないのです。お美しいお身体も学力も立ち振る舞いも。他国にお披露目するには時間が足りないのです。」


そう言って引き続き勉強するように言ってきたわ。失礼ね!確かに足りてないことが多いのは理解したけど、それとこれとは別よ。これは効率のための休憩なのよ!


「リリス王太子妃候補様?他国には完璧なお姿をお見せしなければいけません。隙を見せるなど言語道断です」

「学園を卒業した貴族子息たちは、未熟者という目では見られません。成年貴族として見られるようになるのはご存知でしょう。それはリリス王太子妃候補様も同じことです。いつまでも未熟ではいられません」


わかってるわよ!そんなこと。でも仕方ないじゃない、私はまだ王太子妃候補になったばっかりなんだから!


口うるさいオバサンたちはそんなことも分からないの?


勉強を頑張った後は、夕食の時間。頭を使ったからお腹がぺこぺこだったのよ。ようやくご飯にありつけると思ったら、教育係たちは私の食事姿を注意していくのよ。食事ぐらい好きに食べさせてくれたっていいじゃない!


「リリス王太子妃候補様?食器の音を立ててはいけません」

「リリス王太子妃候補様?お皿の料理を全て食べてはいけません。はしたないですよ」


カチャカチャ鳴りやすい食器が悪いのよ!それに料理を残せだなんてそっちの方がダメだわ!美味しい料理は全部食べるのが基本でしょ。


鬱陶しいオバサンたちの文句を無視して食べ終わったら湯浴みの時間。脱衣所に案内されてようやく苦しいコルセットとおさらばできたのよ。


入浴中は快適だったわ。至れり尽くせりって感じで最高の気分でいられたの。マッサージをしてくれてちょうどいい湯加減の浴槽に浸かって。


でも入浴後にその気分は下がったのよ。


「リリス王太子妃候補様?この後はご就寝となっておりますが、お身体を作るためにも就寝中もコルセットを身につけていただきたく思います」


バッカじゃないの?コルセットで締められながら寝るなんて嫌よ!

そう思いながらも複数のメイドに囲まれて抵抗虚しく身につけさせられたのよ!


その後王太子妃候補の私室に案内されたわ。そこでやっと眠ることができたの。

でも明日も今日のように過ごすの?そう思ってしまったら嫌気がさしたの。もう嫌よ。逃げたいわ。


でも逃亡防止のためか部屋の前には常にメイドと護衛が控えているし窓は私の背じゃ届かない天井近くにあるの。それ以前にこの部屋にも教育係はついてきたのよ。私の寝姿を見届けるために。


王太子様を攻略したらこうなるって分かってたら攻略しなかったのに。


王太子様と結ばれて、国で1番豪華なドレスを着て、国で1番贅沢をして、国を内政チートで盛り上げて、幸せな日々を過ごす。


そう思っていたのに!全然違ったのよ。


膨大な量の勉強をして、苦しいドレスを着て、マナーを指摘され続ける。


こんなの、私の知っているハッピーエンドじゃないわ。


「リリス王太子妃候補様?まだお眠りになっていらっしゃらないようですね」


同じ部屋にいる教育係が話しかけてくるの。でも反応したら面倒臭いから無視してやるわ。

それでも構わずに鬱陶しく話しかけてくるの。


「リリス王太子妃候補様?王室の人間には国を支える者はいても国に支えられる者はいらないのですよ。リリス王太子妃候補様も、候補の2文字を取れるように一刻も早く国のための貴婦人となってくださいませ」


そんなの、乙女ゲームのヒロインのハッピーエンドじゃないわよ…。



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