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自覚ゼロの公爵令息、なぜか周囲が勝手に勘違いして最強扱いされている件  作者: クロネコ


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転生

目を覚ましたとき、最初に思ったことは『やけに天井が高い』だった。


白を基調とした装飾、天蓋付きのベッド、重厚なカーテン。

どう見ても病室でも、ましてや自分の部屋でもない。


「・・・ああ、これ転生か」


驚きより先に、妙な納得が来た。


前世の記憶は断片的だ。


日本で生まれ、普通に学校へ行き、普通に働いて、気づけば過労で倒れた。

ここまでは、よくある話だと思う。


問題は、その後だった。気がついたら、知らない場所にいて、知らない自分になっていた。


そして、この世界には魔法があった。

剣があり、魔物がいて、貴族が支配する典型的なファンタジー世界だった。


そして、アルヴィス公爵家はいわゆる名門中の名門だった。


父は戦争英雄。

母は元王宮魔導師。

兄は剣聖。

姉は宮廷魔導師長。


・・・あれ?ちょっと、基準おかしくない?


幼い頃の俺は、周囲の大人たちの会話を聞きながら、ずっとそう思っていた。

五歳で剣を握れば兄は笑いながら言う。


「まだ遅いくらいだな」


六歳で魔法を使えば姉は首を傾げる。


「詠唱が長いわね」


母に至っては「失敗しないだけ偉いわ」と、にこやかに言うだけだった。


え、これ普通じゃないの?


そう思いながら育った結果、俺は自分が特別だという発想そのものを持たずに成長した。



そんなことがあった幼少期は、あっという間に過ぎさり、気づけば十五歳になっていた。

貴族の子弟が通う王立学園への入学が決まった。


正直、気が重い。


兄姉ほどの才能もない自分が、名門公爵家の名を背負って行くのは気後れするし、目立つのは嫌だった。


「普通に過ごして、普通に卒業できればいい」


本気でそう思っていた。

そのために、力を隠そうという発想すら、なかった。


ーーーーーーーーーーー


それまでの人生は、平穏・・・ではなかったが、平凡ではあった。


魔法の練習をすれば、なぜか庭が更地になる。

剣の素振りをすれば、騎士が距離を取る。

領地の視察に同行すれば、問題点がいくつも目につく。


「ここ、水路が無駄に曲がってません?」


何気なく言った一言で、大規模な治水工事が始まり、なぜか税収が増加した。


まぁ、これは運が良かっただけだよな


全部、偶然だと思っていた。



学園入学の前日。

父が珍しく俺を呼び止めた。


「レオン」


「はい」


「学園では、無理に目立つ必要はない」


その言葉に、心底ほっとする。


「はい。僕もそのつもりです」


父は一瞬だけ、何か言いたそうな顔をしたが、結局は頷いた。


「・・・そうか。ならいい」


母はそのやり取りを微笑みながら見ていて、兄と姉は意味深な視線を向けてきた。

なんだろう?分からないまま、その日は終わった。



そして迎えた、学園入学の日。

王都にそびえ立つ王立学園は、想像以上に大きく、豪華だった。


「うわぁ、人多いな」


馬車を降りると、色とりどりの制服を着た貴族子弟たちが集まっている。

視線が、ちらちらとこちらに向く。


「・・・公爵家?」


「三男らしいぞ」


「兄が剣聖の……」


ああ、もう嫌な予感しかしない。

できるだけ存在感を消そうと、端を歩く。


そのときだった。


「ーーちょっと、そこの方!」


振り返ると、困った顔をした少女が立っていた。

どうやら書類を落としたらしく、少女は書類をこちらへ手渡した。


「あ、これ……」


「ありがとうございます」


それだけの、何でもないやり取り。

だがその瞬間、周囲がざわついた。


「今の、アルヴィス家の・・・?」


「普通に話したぞ・・・」


ん?なんだ?


理由は分からないが、注目を浴びている気がする。


――嫌な予感が、確信に変わった。


こうして俺、レオン=アルヴィスの無自覚な学園生活が、静かに――いや、盛大に始まろうとしていた。


頼むから、普通に過ごさせてくれ

そんな願いとは裏腹に、物語はすでに動き出していることを、俺だけが知らなかった。

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