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一緒に寝ようよ。

(沙霧はあんまり深く考えるなって言ってたけど、そう言われてもなぁ〜.......)


僕は湯船に浸かりながら、心の中で独り言を呟き、沙霧との出来事をどう父さんに伝えていくかを様々なパターンを想定しながら、考え出す。


沙霧からは二人で正直に説明すればいいんじゃん!太一のお父さんもそれで納得してくれると思うよ!と他人事かのような呑気なことを言っていたが、そんな簡単に事が運べば僕もこんなに苦労はしない。


僕の父さんは母さんが死んでから、僕がたった一人の家族になってしまったからか、普通なら娘に対する男への警戒のようなものを父さんは僕に抱いており、おそらく、沙霧が家に上がっているだけでも、どんな関係か?とかまさか彼女か??など、話がややこしい方向に拗れてしまうことは目に見えている。


父さんはおそらく今日は泊まりの仕事で、帰りは朝になるはずだから、父さんが今の状況を見て、聞いてくるであろうことを予測して、それに備えた答えを考え出すことは容易じゃないが、逃げ出すわけにもいかない。


僕はシャンプーや掃除をこなしていきながら、一つ一つの答えを導く作業も進め始めていくことにした。





「お?意外と早かったじゃん。おかえり〜」


「ん?ああ.......ただいま」


今まで、一人で過ごすことが多かったせいか、ただお風呂から出ただけで、他人.....しかも女の子からの反応があるという新鮮さが改めて感じられ、少し戸惑ったような返事になってしまう。


(ああ。それにもう23時近くになってるのか。今日は帰ってきてから怒涛の時間の過ぎ去りかただったもんな。)


いつもなら、遅くとも21時台には1日にやるべきことは終わらせられているはずが、今日というイレギュラーな出来事の発生で勉強や寝る時間帯もずれ遅れる事態となり、いつもとは違うことが起こり過ぎたがための疲れからか、早めの休息を体が欲している。


(今日は勉強は休んで、今日はもう寝るか......。あ。でも、沙霧の寝る場所のこと考えてやらなくちゃな。)


この家の寝る場所といえば、父さんはあまりベッドが好きではないという理由から常に布団を敷いて寝るという生活で、対して僕は昔母さんとよく寝ていたダブルサイズのベッドで今でも使っている。


(流石に布団に寝かせて、僕がいつも通りってわけにもいかないしな。しばらくは僕が父さんの布団を借りて寝るしかないか。)


「沙霧。僕はしばらく布団で寝るからさ。そっちはもう一つの僕のベッドの方使っておいて」


そうやって、沙霧には僕のベッドを一人で使うようにと提案し、早速父さんの部屋のクローゼットにある布団を取り出そうと父さんの部屋の扉に手をかけようとする。


「ねえ、太一。一つ聞きたいことがあるの」


「え?.......聞きたいこと?」


僕の服の袖を掴み、少し上目遣いのような格好でそう尋ねてくる沙霧に僕は少し動揺するが、冷静を装いながら、その内容を聞き出そうとする。


「あのさ。一緒に寝ようよ。なんか、別々で寝るって寂しくない?」


「いや.....そうはいってもな......」


「ダメなの?」


(その目はほんとにやめてくれよ.....断ろうにも断りきれなくなるから。)


「わかったよ。だけど、今日だけだから」


「ほんと!?さっすが太一!まあ、私は最初から太一が断るなんて思ってなかったけどね!」


そうやって、調子のいいことばかり言ってはしゃぐ沙霧を傍に僕はまた沙霧の仕草に心を動かしてしまい、次からは流されないように気をつけようと腹を括る。


「ささ!早くいこー!ほんとは太一も一緒に寝たかったんでしょ〜??さっき私にお願いされたらまた顔真っ赤にしてたし」


「違うってば!そんなんじゃない!」


「あはは!またまた〜。隠さなくていいのに」


顔が赤くなっていることを隠すための本音を伏せながら、僕は寝るということを建前に電気を消し、少し乱れている毛布をどかしながら、ベッドの奥の方へと向かい、横になる。


「はあ〜。ふかふかだねぇ〜。毛布もあったかいし、極楽極楽〜」


「寝る前からうるさいな。早く目瞑りなよ」


「もう〜。固いこという!ねえ、こっち向いて。そしたら眠れるからさ」


(なんだよそれ。一体今度は何するつもりだ?)


僕は嫌々ながらもスッと沙霧の寝ている方へと体の向きを変える。


(!?!?ち.....近い!!)


パッと見ると沙霧の顔がほんの数センチというほどの近い距離で目の前にあり、沙霧の波打ち際で輝く夕日のように綺麗な瞳が僕の瞳をガッチリと捉え、僕の鼓動は否応なく早さを増してしまう。


「えへへ。なんかいいな。こういう何気ない1日みたいなの」


目を閉じて、はにかむ姿は僕の心臓を一気に射止め、とても今から眠れる状態には持っていけないほどの高揚が襲う。


これが何気ない日常になってもらってはたまったものではないと思いながら、僕は外に漏れてしまうのではないかというほどの心の律動の音を抑えようとする。


「ねえ。太一」


「な.....なんだ。寝るなら早く寝ろよ」


「改めてよろしくね。えっと、家族として?それとも友達として?あ!いっそ恋人同士っていうのにしようか??」


「恋人は絶対にないから!!とりあえず友達として.....こっちこそよろしく.......とにかくさっさと寝るよ。僕の明日早いから」


僕は瞬時に反対側の壁の方と体をやり、ドキドキとする胸を落ち着かせようとするため、彼女を視界から外す。


(これ......このまま眠りにつけるのかな。)


未だに鳴り止まない心臓の高鳴りに不安になりながら、僕は明日に備えて残った夜を過ごすことにした。



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