大事なことを忘れてた!!
晩御飯を食べ終わり、僕は皿やフォークなどの洗い物を済ませようとし、片や、沙霧の方は先にお風呂に入ることになり、覗かないでよ〜。などとまた揶揄いを入れながら、浴室へと向かっていった。
服はどうするのだろうかと思い、僕の持っているもので着れそうなパーカーなどを用意しようとしたが、彼女は大丈夫!!服は別にあるから!っと断りを入れていたが、別にその服を持っていった様子もなかった。
(まあ、多分さっきまで来てた黒い上着とスカートとかの着回すのかもしれないな。一緒にしばらく住むんなら、いつか服とか買ってあげないといけなくなるな。)
流石にずっと同じ服や僕の服の使い回しばかりじゃ彼女に悪い気がし、近いうちに彼女の服を買いに行こうかと密かに案が僕の中に浮かんでくる。
(それに、ちょっと今着てる服装以外の下りも見てみたいし.......って、何考えてるんだ。僕は!)
沙霧の私服姿をいくつか想像したが、それを振り払い、止まっていた洗い物をしていた手を動かして、頭上に浮かんだイメージたちを懸命に振り解こうとする。
(だけど、まさか1日でこんなに生活環境が激変するなんて、思いもしなかったな。ほんとに世の中何が起こるかわからないもんだな。)
洗い物をある程度終え、今日の1日を今思い返してみると、あの夢に出てきた謎の女の子はもしかすると予知夢のようなもので沙霧と同一人物とする確証は全くないが、彼女が僕の前に現れることを予期させるためのものであったのではないかと僕はその時ふと考えた。
だけど、あの子と沙霧は瓜二つであるが、夢の中のあの子が僕に向けてくる果てしなく続く暗闇のようなものを纏った黒い瞳とは異なり、沙霧の快活とした一点の濁りもない瞳というあの子との違いを明確に示すものがある。
今日という日に起こった現実と空想の世界での瓜二つの女の子という出来事は偶然にしては出来過ぎていて、何かの繋がりがあるのではないかと勘ぐりを入れてしまうが、考えれば考えるほどその答えは見えてはこない。
(沙霧も沙霧で素性のこと、答えてしれないしな.......。あの子とどういう関係かも全くわからないし。)
結局、今の段階では数あるパズルのピースが繋がることはなく、脳内で散らかり続けたままとなっているが、僕はそれをこれからゆっくり片付けていこうということで一旦自身の中で納得させ、そろそろ沙霧もお風呂から出る時間だろうと察し、服などを用意して、僕も入る準備を進める。
(ん?.......ちょっと待てよ。僕今何か大事なこと忘れてるような気がする。)
その準備を進めている最中、僕は沙霧とのことに気を取られていたことでもう一つ重要なことがあることがもやがかかりながらも頭の片隅から徐々に浮き彫りになっていく。
(えっと.......なんだろう。すごく大事なことだし、忘れてはいけないことな気がするけど.......)
その違和感の正体を探るため、それに引っかかりそうな事柄を一つ一つ紐解くが、中々拭えることはなかった。
「はぁー!!さっぱりしたぁー!!太一〜。私あがったから次太一、入っていいよ〜」
僕が必死に思い出す作業を繰り返しているときに、沙霧がお風呂から上がったことを僕に告げる声が聞こえた途端、僕はその違和感の霧が一挙に晴れる感じを覚え、その忘れていたことをハッと思い出す。
「そうだ!!父さん!沙霧のこと、父さんにどう説明するかを考えてなかったのか!!」
沙霧が少し引き気味でのいきなりどうしたの?と話しかけるほどの大声を発する。
しかし、僕はそんなことなどお構いなしに沙霧との怒涛の時間の波に押し流され、完全に忘れてしまっていた父さんへの説明を今必死に考え始めていた。
(ああ〜!!父さんに一体この状況をどうやって説明すればいいんだぁ〜!!!)




