この感情は.....
(ん〜......この前納得したはずなのに。まだ胸がモヤモヤするのはなんでなんだろ。)
沙霧がうちの学校に転校し、僕との一悶着があってから数日が経った。
どうやら、父さんは少し前から沙霧の僕のいる高校への編入の手続をやってたらしく、普通なら数ヶ月ほどかかりそうなものが意外と早くに入ることが決まったらしく、僕が知らなかったのは沙霧がサプライズ的な感じにして驚かせたいという何とも彼女らしい理由だった。
その経緯に関しては僕はある程度飲み込めることができた。いや、簡単に飲み込めてしまうほどに今の僕にとってはそれはあまり重要事項でないってことが言えるかもしれない。
そう。僕は今沙霧に関連した重大な問題に直面しているのだ。それは僕の沙霧に対するこの感情だ。
僕は前にこの感情の正体は沙霧へのいわば家族愛のようなものだと片付け、そう結論づけた瞬間はそれで納得し、その日を過ごしたが、いざそこから何日も経ってみるとあまり自分の中でしっくり来ていないじゃないかと気づいてしまった。
もう沙霧は家族も同然。姉とも妹とも言い難い存在ではあるが、ひとまずそれに近しいものがこの数週間の同居で成立しており、僕も沙霧は大切な家族だと思っている。
思っているんだけど.......
(なんか、この感じ。違う気がするんだよな.....)
どうも僕の心に常駐しているのはそういう類ではないらしい。どんなにそれで納得させようとしても心が異議を唱えるようにしてそれを受け入れてはくれないのだ。
(まさかとは思うけど、僕.....沙霧のこと.....)
「よっ!どうした?そんなボッーとして」
そうやって悶々としているといきなり背中に衝撃が走りながら、それを与えた主が僕に話しかけてくる。
「びっくりした〜!なんだ。彰人か」
「なんだよ。せっかく話しかけてやったのに残念そうな顔して。あ。もしかして小鳥遊さんの方が良かったとか??」
「はぁ!?!?」
いきなり沙霧の名前を出され、僕は咄嗟に大声を出してしまう。
「うお。どうした?急に大声出して。もしかして本当に小遊鳥さんのこと考えてたとか?」
「ち、違うってば」
「そうか?何度も一緒に帰ってるみたいだから、てっきり今日も一緒に帰ろうなんて考えてたのかと」
「そうそう。何回も一緒に帰......え?え?えー!?!?なんで知ってんの!?」
(嘘だろ!?なんで沙霧と一緒に帰ってることがバレてんだ?あんまりうちの高校の生徒がいない時に帰ってたような気がしてたのに。)
いつのまにか僕たちの放課後の光景が彰人に知れ渡っていることに僕は驚いてしまうが、少し冷静になって考えてみれば、いくら周りに気を遣っていても何度も一緒に帰っていてはいずれはバレてしまうのは時間の問題だったのかもしれない。
「たまたま別のクラスのやつがその場面を目撃したらしくてな。だけど、あんまり心配すんなよ。そんなに広まってはないみたいだし」
今や学校中で美人だ。可愛いだと話題になっている沙霧と何度も一緒に帰っていることが知れ渡ればどうなるかは想像に難くない。彰人はそういうがいつ全体にその情報が広まらないとも限らないからまた一つ悩みの種ができてしまったことにため息が出そうになる。
「そんなことより、太一には一つ聞きたいことがあってな」
「え?聞きたいこと?」
彰人は先ほどとは打って変わって、真剣な面持ちで僕に視線を向け、一体何を聞いてくるのかと僕も反射的に構えてしまう。
「お前、小鳥遊さんのことはどう思ってるんだ?」
「え?沙.....小鳥遊さんのことを?」
「ああ。知らぬ間に仲良くなってるし、一緒に帰ってるって耳にした時はまさか付き合ってるのかと思ったが、別にそういう雰囲気でもなさそうだったからちょっと気になってな」
その内容はというとまたしても沙霧関連についてであり、それも今僕がぶち当たっている沙霧への僕の気持ちについてだった。
「べ、別に付き合ってないかないから!そりゃ.....彼女とは同.....じゃなくてたまたま近くに住んでて、それで仲良くなって、どう思ってるかって言われると.....いい友達?みたいな......」
いい友達。なんとも自分の中で煮え切らない答えを出してしまったが、家族と彰人にいうわけにもいかないし、嘘をついてるみたいになってしまったが、ひとまずこれを彰人への質問の回答としてぶつけてみる。
「ふ〜ん。なるほどな......そういうことか」
「な、何?」
「いや。別に。多分今の太一には言ってもわからないだろうから言わないでおく」
彰人はそんな含みのある表情と発言を残しながら、もう少しで予鈴がなるから教室に戻ろうと催促し、自身は先へと進んでいってしまう。
(今言ってもわからないって......一体どういうこと?)
彰人が何を思ったのかわからないままながらも、僕は彰人の後を追い、予鈴の前に教室に戻ることにした。




