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メルグウェン姫と騎士ガブリエルの物語  作者: 海乃野瑠
第12章 - ジェノヴェファ
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12-6

「それは無理だ。20年後に急に跡継ぎだなどと名乗り出られては困る」


「そのようなことは決してない。私は女の子を産むのだから」


「……それでもやっぱり、その話は受けられない」


ガブリエルがそう答えると、ジェノヴェファはせせら笑った。


「昔はもっと度胸があったのではないか?」


「度胸の問題ではない」


「ほほぉ、小姓殿も恋をする年頃になったか」


「俺はもう小姓ではないぞ」


「城主殿は大切な女がいるのだろう? 悲しませたくないのだろう?」


「大事にしている女はいるが、恋人ではない」


「自覚していないという訳か。では聞くが、城主殿はその女を他の男に与えられるか?」


「そのつもりだったのだが」


「そうか? 他の男がその女を抱き、口と口を合わせ、肌と肌を重ねても良いのか?」


ガタンと音をたててガブリエルは立ち上がった。


そして、平然と座っているジェノヴェファを上から睨みつけると言った。


「話を逸らすのは止めろ」


「報酬について話し合っていたのではないか」


ジェノヴェファはしゃあしゃあと答えた。


ガブリエルは苛立った声を上げた。


「時間がないのだ!! こうやって話している間にもあいつは」


「ガブリエル様」


ルモンが遮った。




ルモンはジェノヴェファの方に向き直って言った。


「私ではガブリエル様の代わりにはなれないか?」


「おい、ルモン!」


「子供だけが欲しいと言うならそれでも良いが、貴方が受け入れてくれるなら、私は貴方を妻に迎えたい」


ガブリエルは口をあんぐり開けてルモンを見ていた。


ジェノヴェファはルモンを観察するようにジロジロ見ている。


やっと話せるようになったガブリエルが慌てて言う。


「ルモン、俺の為に犠牲になる必要はないぞ」


ルモンはガブリエルの方は見ず、ジェノヴェファを見つめたまま言った。


「犠牲なんかじゃない。私は貴方を初めて見た瞬間、恋に落ちた」


ジェノヴェファはルモンを優しい目で見た。


「……良いだろう。城主殿の甥を診に行こう」


ルモンとガブリエルは目を輝かせた。


ジェノヴェファはそんな二人を見て言った。


「何故か、おまえたちは二人とも神秘な力に守られているように感じるのだ。こういう力に逆らってはならぬ」


「神秘な力だと?」


「ああ、霊の力か、妖精の力か」


「妖精の……」


ガブリエルは自分の首から月長石の首飾りを外した。


「もしかして、これのことか?」


その首飾りを手に取ったジェノヴェファは答えた。


「そうだ。城主殿はこの月長石に守られている。絶対外さない方が良いだろう。だが」


ルモンの方を向いてジェノヴェファは頷いた。


「騎士殿は生まれながらにして、この力に守られているようだ。しかし、結婚の申し込みについては考えさせて欲しい」


話が決まったのなら、すぐに出発したいと言ったガブリエルにジェノヴェファは答えた。


「準備をするので2時間程、時間が欲しい。準備ができたら城に行く」




ルモンと城に戻りながらガブリエルが聞いた。


「本当に妻にするつもりか? あの女は俺が10歳の頃、既に大人だった。いくら美人でも、俺達より10は年上だぞ」


「歳など関係ありません。彼女を見た瞬間、運命を感じたんですから」


ガブリエルは溜息をついた。


「あの女に魔法をかけられてしまったのかも知れんな」


とにかく、これでワルローズに戻れる。


一刻も早くパドリックの側に戻りたかった。


そしてパドリックを看病しているメルグウェンの許に。


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