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メルグウェン姫と騎士ガブリエルの物語  作者: 海乃野瑠
第11章 - ダレルカ
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11-9

夕食の席で皆はメルグウェンがいないことに気付いたが、昼間のこともあり遠慮して下りてこないのではないかと思っていた。


結局ガブリエルはダレルカの望む体罰をメルグウェンに与えようとしなかったため、客達は大層立腹してワルローズを後にしたのだった。


別れ際にダレルカの母親はガブリエルに言った。


「あのような悪質な悪戯が許されるような城には、私どもの娘を嫁がすことはできません。キリル殿にはこちらからご報告をします」


ダレルカもガブリエルを詰った。


「貴方は私よりもあの無礼な姫を選ぶのですね?あの娘がこの城にいる限り、二度とお会いしません」


食事中は皆気まずそうに殆ど口をきかなかった。


ガブリエルはうわの空で何かをじっと考え込んでいる様子だ。


その沈黙が広間に駆け込んで来たアナの泣き声で破られた。


アナは昼食も取らなかったメルグウェンの様子を見に先程広間を出て行ったのだった。


驚いて立ち上がったガブリエルは、アナが手に持っている物を見て顔色を変えた。


それは長い髪の毛だったのだ。


聞かなくても誰の物だかすぐに分かる黒く艶やかな髪の束だった。


何故か最後に見た棺に入った妹の顔が頭に浮かんだ。


愛らしかった顔は青白く浮腫んでしまっていたが、周りに広がる長い髪だけは生前と変わらず美しかったのだ。


ガブリエルはアナの肩を掴むと揺さぶった。


「あいつはどこだ?」


泣いているアナから話を聞きだすのは骨が折れた。


結局分かったのは、部屋が暗いのでアナは初めメルグウェンが眠っていると思ったこと。


しかしよく見てみるとベッドには誰もおらず、部屋の片隅に髪の毛の束が落ちていたということだけだった。


ガブリエルは直ちに騎士達に指示を出した。


次々と戻って来た騎士達から情報が集まった。


メルグウェンはいつも乗っている青毛の馬に乗って出て行ったようだった。


城の門番は、頭巾を目深に被ったその若い男がメルグウェンだと気付かず、午前中に帰った客の家来だと思って通したとのことだった。


町の門番によると、メルグウェンは9時課頃に城壁を越えたようだった。


向った方向ははっきりしていない。


メルグウェンが町を出てから既に3時間以上経っており、どちらに向ったのか分からなくては探すことは無理だった。




ガブリエルはメルグウェンに対して腹を立てていた。


バザーンで出会ってからずっと妹のように思っていた。


スクラエラにしてやれなかった分、ずっと守ってやるつもりでいた。


幸せにしてやりたかった。


ダレルカとメルグウェンのどちらを取るかという事態になった時、ガブリエルが信じたのはメルグウェンだった。


それなのに。


あの馬鹿はいったいどこに行っちまったんだ?


既に日は暮れている。


女が一人で旅をするなど気違い沙汰だ。


男でも危険なのに。


ガブリエルは両手で髪を掻き毟った。


待てよ。


あいつは行く所があるのか?


行き先は父親の城しかないだろう。


とすると国道に向ったのか。


ガブリエルは皆に言った。


「松明を持って来い。あいつを探しに行くぞ」




可能性は低いが、メルグウェンはメリアデックの許に行ったかも知れないと数人がクエノン城に向った。


残りの者は松明を手にワルローズの南東にあるコアドモールの森に向った。


ブレシリアンの森ほどではないが、この鬱そうとした森には大きな岩がゴロゴロと転がっている。


つい最近、盗賊が出るとの通報があったばかりだった。


ガブリエルは感謝祭の後に山狩りを計画していたのである。


すぐさまそうしなかったことを後悔してももう遅い。


暗い道を馬で進みながらガブリエルは唇を噛んだ。


どうか無事でいてくれ。


月のない夜で松明の明かりでは殆ど何も見えなかった。


メルグウェンの匂いを嗅がせた猟犬を頼りにして一行は進んでいた。


しかし猟犬達は森に入った途端、混乱しているように暗闇の中をうろうろと歩き回った。


「二手に分かれる。かたっぱしから目に付いた岩の間を探れ」


ガブリエル達はメルグウェンの名を呼びながら森の中を進んだ。


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