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メルグウェン姫と騎士ガブリエルの物語  作者: 海乃野瑠
第11章 - ダレルカ
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ダレルカは焦っていた。


ワルローズに着いたらすぐガブリエルから正式に結婚の申し込みをされると思っていたのだが、今日で既に3日目になるのにまだその気配がない。


そしてあのメルグウェンという姫の存在が目障りだった。


城の騎士達やガブリエルの甥に大層慕われ、ガブリエルには妹のように可愛がられている姫。


メルグウェンには烏などと言ったが、ダレルカはメルグウェンのことを決して醜いとは思っていなかった。


反対にその珍しい容姿を美しいと思ったからこそ危険だと感じたのだった。


そして若い女性特有の勘で、メルグウェンが密かにガブリエルに恋をしていることに気付いたのだ。


丁度庭で会った時ダレルカは、ガブリエルと婚約したらメルグウェンを遠ざけるように、ガブリエルを説得してもらうことをルモンに頼もうとしていたのであった。


また、この城でガブリエルに一番近いルモンを味方につけることは有利と思われたので、ダレルカは魅力的な微笑と愛想を惜しまなかった。


しかしルモンは煽てに乗らず、メルグウェンのことに関しては聞く耳を持たなかった。


ダレルカはイライラしていた。


騎士の癖に城主の奥方になる自分の言うことを聞かないあの男をどうするかは、結婚してから考えようと思った。


ダレルカはメルグウェンにあのような態度を取ってしまったことを悔やんでいた。


メルグウェンに全てを聞かれたと思って、あんな詰め寄るような態度を取ってしまったのだ。


あれではまるで私の方が嫉妬しているみたいじゃないの。


だがダレルカは、出会ったばかりの自分にはどうにもならぬ強い絆が彼らの間にあることに気付き、自分だけがのけ者にされたように感じていたのだ。


あの二人はガブリエル様に告げ口をしたりするのかしら?


私がガブリエル様の側にずっといればそんなことはできない筈だ。


そう思ったダレルカは急いで城の方に向った。


どうしても今日中にガブリエルに結婚を申し込ませる必要があった。




メルグウェンは怒っていた。


あんな失礼な姫を好きになるなんて、あの男も大したことないのね。


うわべだけの美しさに惑わされているのだわ。


部屋に戻ったメルグウェンは、礼拝に行く準備をしながら考えた。


ダレルカが奥方となったら、この城に自分の居場所がなくなるのは目に見えていた。


ガブリエルは今は自分のことを妹のように守ってくれているが、自分は本当の妹ではない。


妹のような女と奥方ではわざわざ天秤にかける必要もないだろう。


そのようなことになる前に何とかしなくては。


張り合おうなどと思っていないと言ってしまったが、このままでは治まらない。


正々堂々と勝負してやろう。


もし私が負けたら父上の城に帰るわ。


でも勝負って何をしたらいいのだろう?


まさか決闘を申し込む訳にはいかないし。


何か良い考えはないのか?


礼拝の後、メルグウェンはパドリックを連れて庭に出て行った。


暫く二人でごそごそやっていたが、やがてメルグウェンは木の箱を重そうに抱えて主塔に向った。


メルグウェンは誰もいない広間に入りダレルカの席にその箱を置くと、部屋で書いてきた皮羊紙を巻いて箱の上に乗せた。




階段を下りかけていたメルグウェンは、下から聞こえてきた女の悲鳴に密かに微笑んだ。


階段の手すりから覗くと、広間の扉が威勢良く開き、ダレルカが口元を押さえて中庭に飛び出して行くのが見えた。


その後をルモンとパバーンが追いかけて行く。


ダレルカの母親も青い顔をして広間を出て行った。


それらを見届けたメルグウェンは涼しい顔をして広間に入った。


「パドリック!!!」


ガブリエルが怒鳴った。


その凄まじい形相に騎士達も恐れをなしている。


この男が本気で怒っているのを見るのは初めてだとメルグウェンは思った。


そんなにあの方が大切なの?


パドリックは顔を強張らせて、ベンチから立ち上がると、ゆっくりとガブリエルの前に行った。


「これはおまえがやったことか?」


パドリックはガブリエルを見上げた。


「はい、僕がやりました」


ガブリエルがパドリックを殴ろうと手を振り上げるのを見て、メルグウェンは叫び声を上げた。


「待って!!!パドリックじゃなくて私がやったの」


ガブリエルはメルグウェンの方を振り向いた。


「下手に庇う必要はない」


「庇ってなんかいないわ、本当よ。パドリック殿が私を庇ってくれているの」


ガブリエルの前に駆け寄ったメルグウェンは、パドリックを背に隠すようにして立った。


冷たい灰色の瞳がメルグウェンを見下ろした。


「何故このようなことをした?」


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